上場したHameeの成長要因、ECのプラットフォーム化を進める理由を樋口社長に聞いてみた
スマートフォングッズのECなどを手がけるHamee(ハミィ)は4月20日、東証マザーズに上場した。外部の資本を入れずに、独自資本で上場にこぎ着けたハミィの成長要因は、携帯ストラップからスマホグッズへの商品転換、EC支援事業、海外ECなど、先を見据えた事業推進にある。上場で調達した資金で今後どのような成長を描くのか。樋口敦士社長にインタビューした。
ニッチな分野を攻めて、業界トップクラスのサービスに
EC専業で、スマホグッズを扱っている企業ではトップクラス。ネットショップ向け受注管理システムの利用者数でも業界大手。つまり、ハミィはコア事業であるEC事業とEC支援事業の2つの領域でトップクラスの企業だ。
EC事業では自社で商品を作り、大手量販店に卸販売したり、ネット通販をしている。量販店の流通網を活用しながら、リアルと卸、ネットのトレンドを把握して商品を展開するといったオムニチャネル的なことをやっている。
EC向けのシステム提供は、いまは大きく儲かるビジネスではないので大企業は進出してこない。先行して独自のビジネスモデルを築くことができているので、ニッチではあるがそれは海外でも応用できる。ECが盛り上がっているいま、アメリカや韓国、東南アジアでの事業展開という可能性も広がっている。
こうハミィのビジネスモデルの優位性を話す樋口社長が、モバイル周辺アクセサリーの企画・販売・ECを目的にマクロウィル有限会社(2006年に商号をStrapyaNextに、2013年現在のハミィに変更)を設立したのは1998年。1999年にECを開始し、設立から現在まで神奈川県小田原市に置いている。
2014年4月期の連結業績は、売上高が46億8100万円(前期比12.3%増)、営業利益は2億2600万円(同23.8%増)、経常利益は2億2200万円(同5.3%増)、当期純利益は1億2100万円(同14.0%減)。創業から黒字経営を続けている安定経営だ。
事業の屋台骨を担うコマース事業の売上高は41億9100万円(同比9.5%増)。かつては携帯電話用ストラップが主力商材だったが、スマホの台頭とともに取り扱う商品も転換。現在は自社で企画したスマホケースなどのグッズが主力商材だ。
自社企画商品の販売を早くから始めているのも強み。価格競争の回避に加え、メーカーという立場から、量販店への商品卸も手がけている。
海外ECへの取り組みも早い。2001年にグローバル対応ECサイトの運営を開始。海外向けECの事業規模は現在数億円となっている。韓国、米国にも拠点を構え、近く他の国に子会社を設立。長年積み重ねてきた海外ECのノウハウを、グローバルで展開する。
そして、成長エンジンとして掲げているプラットフォーム事業の売上高は4億8900万円(同43.8%増)、営業利益は7300万円(同20.8%増)。2008年5月に自社のECの業務を一元管理するシステムを外部販売する形で、「ネクストエンジン」をリリース。現在は数十人を抱える部署となり、大きな成長を続けている事業だ。
調達資金は「ネクストエンジン」の成長に投資、3年で約3億円
受注に関する業務一元管理システムの「ネクストエンジン」は2013年にAPIを公開し、プラットフォーム化へとかじを切った。「ネクストエンジン」に足りない機能はユーザー自身でアプリとして開発。EC支援会社は「ネクストエンジン」向けに連携サービスなどのアプリを開発できるようにしている。
従来は中小規模のECサイトがメインターゲットだったが、プラットフォーム化で大規模ECサイトにも対応。EC事業者の個別ニーズにあわせて「ネクストエンジン」をカスタマイズできる「ネクストエンジンオーダーメイド」で基幹システムとのつなぎ込みを実現するなど、対象企業の拡大も図っている。
受注管理という業務を効率化するシステムから、「ネクストエンジン」を使えば、自社・モール関係なく手間を軽減しながら売り上げも伸ばすことができる。それに海外にも展開できるようになる。
「ネクストエンジン」のプラットフォーム化戦略の意図を樋口社長はこう説明する。
日本企業の海外EC展開をサポートする仕組みの提供もその一環。米国アマゾンなど海外のECマーケットで販売に関する受注情報などを、システム上で自動連携できる機能を開発。日本で運営しているECサイトと海外向けECサイトの情報を一元管理できるようにした。
「ネクストエンジン」のアプリとして機能を提供。米国アマゾンが公開しているAPIとつなぎ込み、受注情報の管理のほか、将来的には簡単に売り上げを伸ばせる仕組みも構築するという。米国eBayにも対応する予定だ。
先を見ているユーザーは進化している。システムもそれに対応しなければならない。ECのプラットフォームはEC事業者の一歩先を行ったサービスを提供するフェーズに入っている。
ハミィは2017年までに、上場によって調達した資金から約3億円を「ネクストエンジン」に投じる。その1つが開発者の募集だ。海外対応など、「ネクストエンジン」のプラットフォーム化に合わせた新規開発案件は増加している。樋口社長は「進化のスピードを上げていかなければ競争に勝てなくなる。当社が勝てないということは、ユーザーも勝てなくなってしまう恐れがある。進化することは義務でもあるので、開発スピードを上げていきたい」。
本社を小田原市に置くハミィにとって、優秀な開発者集めは都心の企業に比べて、厳しい環境にあるのかもしれない。今回の上場は、知名度を広げ、採用ペースを上げていくという狙いもある。
樋口社長はインタビューの最後をこう締めた。
小田原はいいところ。下り電車は座れるし、魚はうまい。