中川 昌俊 2015/4/22 9:00

「セールスフォース」「コンカー」などのサービスを日本に招き、サービス展開を支援しているベンチャー投資会社、サンブリッジコーポレーションは、各分野でベストなサービス提供会社を探し、日本市場でのバックアップを行っている。そのサンブリッジコーポレーションがECサイト構築サービスでベストパートナーとして選んだのが、2015年4月から本格的にサービス展開するデマンドウェアだ。サービスの強みや今後の展開について、米デマンドウェア・インクのトム・エブリングCEOに聞いた。

レベニューシェア型のサービス体系、導入EC企業が平均して30%の成長

米デマンドウェア・インクのトム・エブリングCEO

――御社のサービスの特徴について教えてください。

「デマンドウェアコマース」の特徴は、多言語や数多くの通貨に対応するなどグローバル化を前提に設計している点。もともと、ドイツで設計したサービスで、アメリカで成長してきた。グローバルでeコマースを展開したい企業にとっては最適なシステムになっています。

オンラインからオムニチャネルまで、クラウド環境でサービスを提供している点も大きな特徴。2004年にサービスを提供し始めたときはオンプレミス型で提供してきましたが、流れの早いコマースの動きに対応しにくいという問題がありました。また、1年や1年半ごとに最新のシステムに切り替えて対応しようとすると、導入しているEC企業に大きなコスト負担を強いるため、クラウド型に切り替えることにしました。クラウドで提供することで、定期的に実施している自動アップグレードで、コマースビジネスに必要な最新機能を常に提供できるという強みがあります。

ビジネスモデルも特徴的です。多くのECサイト構築サービスでは月額固定費やトラフィック数に応じたコストが必要となるケースが多いですが、当社の場合、売り上げの1~3%を徴収するモデルで提供しています。顧客であるEC企業の成長が当社の成長にもつながるため、EC事業者の成長のための提案、システム開発などを行うようにしています。当社のサービスを導入しているEC企業が平均して30%の成長ができているのもこうした料金体系を採用していることも理由としてあげられると思います。

安定性が高く、10年間にわたり99.99%の可用性という点も「デマンドウェアコマース」の特徴の1つでしょう。米国のクリスマス商戦でも売り逃すことがないことから、利用しているEC事業者からも信頼され、他のシステムに乗り換える企業が極端に少ないことが誇りでもあります。

――現在のデマンドウェアの実績は。

事業を開始して10年間、毎年平均して50%以上の成長を果たしており、上場してからも50%以上の成長を維持しています。2014年時点で250社、1100以上のサイトが当社のサービスを利用し、年間取扱高は合計で1兆円以上になります。日本向けサイトでは現在クロックスやランズエンドなど14社が利用して、日本での取扱高は約85億円となっています。また、パナソニックや資生堂などの日本の企業が海外で販売する際には、当社のサービスを利用しています。

有力メーカー、小売企業などが利用している(同社サイトから)

2015年中に大規模な企業数社へ導入し、成長実績作る

――4月から日本での展開を本格的にスタートするということですが、なぜこの時期に展開を始めたのでしょうか。

当社のビジネスは、導入企業とともに成長することを目的としているので、システムを提供するだけではありません。そのためのノウハウも必要で、顧客となるEC企業をサポートするための質の高い人員を確保する必要があります。そのため、数年前から慎重に準備を進めてきました。十分満足していただけるサービスを提供できる段階になったため、日本でも本格的にサービス提供を始めることにしました。日本の企業はオムニチャネル展開を進めたり、海外での販売を本格化するタイミングなので、当社がサポートできる部分は大きいのではないかと思っています。

――EC企業の場合、その企業独自の機能であったり、システムの開発が必要な場合が多々あります。そういったニーズにはどのように対応するのですか。

ベースとなるシステムはクラウドで提供していますが、このシステムとAPIをつなぐ形でカスタマイズできるようになっています。当社指定のSIがこうしたカスタマイズを実施し、サービスを提供します。EC事業者のあらゆる要望に応えられるようになっています。例えば、ニューバランスは個人にフィットするようなランニングシューズが作れるサービスを、カスタマイズしたシステムで提供しています。SIについては、これからさらに日本企業との連携も進めていく予定なので、全く知らないSI会社を使うということはありません。

――ターゲットとなる事業者の規模は。

現在、サービスを提供しているEC企業の規模は年商5億円から500億円規模。とはいえ、これ以下の売り上げでも当社の場合、ともに成長することを想定していますので、現状では小さくても成長すると見込まれる企業の場合はターゲットとしています。また、当社指定のSIがサイト制作や基幹システムとのつなぎこみなどをフェーズに分けて行うため、構築総費用として3000万円から5000万円ほど投資できる企業がターゲットとなります。

――今後の日本展開の計画は。

2015年中に中核となる数社に導入していただくことを考えています。こうした会社が、米国での成功と同じように成長していけば、来年、再来年は自然と利用していただける会社が増えるのではないか。アメリカでは10年間サービスを提供していますが、まだ当社のシェアは5%にとどまっています。ただ、当社のシステムを使っているEC企業は成長しているので、シェアも今後さらに高まっていくでしょう。日本でも、最初はシェアはそれほど取れないと思いますが、成功を積み重ねることで、選ばれるシステムになっていければと考えています。

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