LINEのEC活用法を教えます! ネット通販4社が効果、コスト、手間など運用面を大公開
LINEはネット通販にどう活用すればいいの? LINE@の友だちはどうやって増やすの? こんなEC事業者の悩みを解決するため、LINEを積極的に活用している4社が集結。「古着屋JAM」「SPINNS」「伊藤久右衛門」「ETVOS」の経営者および担当者がLINEの重要性、活用方法、その効果などを語り合った。
LINEの「Official Web App」との連携をリリース(8月)したECプラットフォーム提供のフューチャーショップが主催したセミナーで行われた「LINE@のEC活用」に関するパネルディスカッションの模様をレポートする。
LINE@を使って売り上げを伸ばしている登壇者
- 「古着屋JAM」(運営はJAM TRADING)の福嶋政憲社長
- 「SPINNS」(運営はヒューマンフォーラム)の井垣敦資・スピンズ事業部 WEBSTORE統括マネージャー
- 「伊藤久右衛門」(運営は伊藤久右衛門)の足立容子・WEB営業部マネージャー
- 「ETVOS」(運営はエトヴォス)の井前弘人・BtoC セールス部 クリエイティブGリーダー
LINEをはじめたきっかけ
足立容子・伊藤久右衛門 WEB営業部マネージャー(以下足立) LINEでの販促を始めたのは1年前。きっかけは、メルマガ配信の効果が落ちたためです。転換率が悪くなったわけではありません。そもそも開封されていないのですから。パソコンでメールを確認する人が減っていましたし、友達間のやり取りはLINEが中心になっているのも実感していました。
新しい商品をリリースして、メルマガで告知しても見てもらえない――こうした状況を打開するためにLINE@を始めました。あと即時性はすごい。メルマガだと届いてから1~2時間後の開封が多いのですが、LINEではすぐに開封されます。即時性が高いため、購買効果はとても大きいですね。
福嶋政憲・JAM TRADING社長(以下福嶋) JAMは1年半前に開始しました。店舗スタッフの提案でしたね。店舗とお客さまのコミュニケーションツールとして活用しようという目的でした。JAMではオムニチャネル構築プラットフォームを導入しているので、ECサイトと実店舗と連動し、売り上げに結びつくようになった。
運用してわかったのはLINE@の開封率と即時性。コミュニケーションツールとしてLINEを普段使いしているユーザーは多いので、そもそも開封率が高い。かつ、クーポンなどを配信すると開封のスピードがとても早い。開封率とレスポンス率には大きな可能性を感じています。
井垣敦資・ヒューマンフォーラム WEBSTORE統括マネージャー(以下井垣) LINE@を始めたのは2013年4月。当時はまだECサイトへの誘導は禁止(2015年に解禁された)の時期。ツイッターやFacebook、mixiなどさまざまなSNSを駆使し、何が売り上げに結びつくのかなどを検証していました。いまはツイッターとLINE@がお客さまからの反応が高いですね。いまは専属のSNSスタッフを用意し、ツイッターとLINEを中心にお客さまとのコミュニケーションを行っています。
井前弘人・エトヴォスBtoC セールス部 クリエイティブGリーダー(以下井前) LINE@がECサイトへの誘導を解放したときから始めています。友人や家族間のコミュニケーションツールとしてLINEが普及していったのに、なぜEC事業者は活用しないのか? 大きな疑問を抱いていました。その疑問点を解決するため、解放されたタイミングでLINE@をECの販促で利用するようになりました。
足立 LINE@は最近、(LINEの「Official Web App」によって、フューチャーショップで構築した)自社ECサイトのお客さま情報と紐付けることができるようになりました。たとえばバレンタインデー。男性に「彼氏をメロメロにするチョコレートはこれ!」といった内容を何度も送ったら、「俺は関係ない」などと思ってしまいます。
お客さま情報と紐付けることによって、男性の方には「奥さまへのお礼にバレンタインチョコは如何ですか?」といった提案ができるようになる。こうしたOne to Oneマーケティングがショップのブランディングにもつながりますから。
LINE@の友だちはどう増やす?
井垣 店頭レジ前でのPOPによるPR、店舗店員による呼び掛けが最も効果がありました。店頭スタッフに対して「何でこのようなことをするのか?」という教育はしっかりと行った。ただ「やってください」だけでは、スタッフの呼び掛けは業務的になってしまう。「LINE@お友だち獲得競争」のような社内イベントを作り、各店舗で獲得した友だちの数を競い合うこともやりましたね。
福嶋 うちも店舗主導で、ここ2~3か月で力を入れ始めました。4店舗を運用していますが1か月1000人単位で増えています。
井前 「ETVOS」はECサイトが中心です。ECでは、LINE限定のキャンペーン、LINEだけで取得できる情報といったお得感を訴求して、友だちを増やしていきました。
足立 「伊藤久右衛門」も特殊なことはしていません。重要だと思っているのは、リピーターのお客さまに対して、いかに友だちになってもらえるか。LINEで友だちになるメリットを訴求する専用コンテンツを作りました。そのコンテンツを載せたのはリピーターのお客さまがよく訪問するページです。「友だちになったら300円のクーポンプレゼント」などわかりやすい案内を記載し、登録してもらうスキームを作りました。
LINE@の運用はどうしている?コストは?
足立 管理画面は簡単。自身の友だちにメッセージを送るような感覚で操作できるので、他の業務をしながら私1人でLINE@も運用しています。テレビで「伊藤久右衛門」の商品が紹介されたときなどにメッセージを打つようにしているのですが、とても簡単に配信することができる。メッセージ作成の時間を入れても10分くらい。リソースはほぼかからないと言ってもいいのではないでしょうか。
井前 うちもリソースはほぼかかってないですね。足立さんに伺いたいのですが、メッセージのクリエイティブは、リピーターに向けた内容になっているということでしょうか。
足立 はい、そうです。メッセージの配信業務には時間はかかりません。ただ、クリエイティブ作りには時間が必要。「伊藤久右衛門」はリピーター向けにクリエイティブを作っていますので、お客さまに楽しんでいただけるような、メッセージのアイデア出しに時間をかけています。
福嶋 経営者の立場からですが、JAMは店頭業務と兼務してもらいながらLINEを運用しています。配信は週に1度。時間はそれほど割いていない印象です。
井垣 「SPINNS」は数字の検証に時間をかけています。1週間ごとに検証作業を行っていて、配信時間、メッセージ内容などを週ごとに変えて分析。ブロック数などの反応を見ながら、次の配信に生かせるようにしています。
井前 友だち登録したときのコメントについて、「SPINNS」さんのクリエイティブが秀逸だと思う。LINE@の登録終了後に送るメッセージで、他にもFacebook、ツイッターなども運用しています、といった内容を盛り込んでいます。私はLINEのお客さまとは、LINEでコミュニケーションを取ろうと思っていましたが、「SPINNS」のSNSを案内するところが他にはない取り組みだなと感じました。
あと、タイムラインはあまり「いいね!」が付かないと思うのですが、「SPINNS」さんのタイムラインは多くの「いいね!」が付いている。なぜですか?
井垣 正直なところとても大変なんです。選任の担当者が、お客さま1人ひとりにきちんとコメントを返すようにしています。時間と手間はかかりますが、コミュニケーションが密になってきているというのが大きなポイントです。とても労力が必要となるので、ここに足を踏み込むのは……。
福嶋 うちもタイムラインを活用しています。LINE@のメッセージは週に1回の配信。そのため、アカウント事態が動いていない印象を持たれてしまうケースがある。タイムラインは毎日更新して、ツイッターで発信をして拡散させる――といった取り組みをしています。
LINE@の運用でこんな点に気を付けています!
井前 「ETVOS」はあまり割引をしません。ですが、LINE@限定の割引キャンペーンを行ったところアクセスが殺到。瞬間的なアクセスも凄く、購入にも大きく寄与しました。やはり、利用者にメリットのあるメッセージは効果が大きいですね。
足立 配信時間帯についてですが、正午あたりに効果が最大になる印象です。働いている方がお昼休みに見ているのか、主婦の方が食事時に閲覧しているのか……こんな印象を持っています。
井垣 ベンチマークしている競合店が配信している時間とは、ずらしてLINE@のメッセージを送った方が、効果が高いと思います。実際に当社はその取り組みをして、効果が高かったケースが多かった。
足立 LINE@のブロックについてお話します。当社はあまり気にしないようにしています。それはなぜか? ブロックする人は、いずれブロックする。ブロックの数よりも、新規をどれだけ増やせていけるか、その数字を追っています。
井垣 配信したメッセージの内容についての善しあしの基準として、ブロック数を見ています。見えてきたのは、やはり売り込みばかりのクリエイティブはあまり良くない。YouTube連動の動画、How to関連の記事をLINEで配信していますが、こうした内容はブロック数が劇的に減ります。売り込み以外のコンテンツを盛り込んでいった方がいいですね。ただ、ブロック数が多いから担当者をつめたりはしていません。1つの指標ですね。
井前 指標というところでは、当社は売上金額ですね。LINE@からのコンバージョン数を見て判断します。LINE@の友だちの数は、メルマガ配信数の1/4程度ですが、売り上げ貢献比率は半々。それほど大きな効果がありますね。
足立 「伊藤久右衛門」も売り上げを指標にしています。月次予算の1割をLINE@経由で作ることを目標にしています。かなり大きいですね。
福嶋 「JAM」ではまだ売り上げにつながっていないのですが、自社ECサイトへの流入数はじっくり見ています。
井垣 自社ECサイトへの流入数を重要視しています。なぜなら、担当者の判断基準としてわかりやすい指標を採用するようにしていますね。
LINEを活用するなら自社ECサイトに力を入れよう
足立 モールは爆発的な集客力が見込める反面、自分たちでコントロールできないことも多いです。料率変更、保有する球団の優勝に関するイベントの有無……などなど、私たちの努力ではどうにもできないところがあります。そういった意味で、自社ECのシェアを高めることは、安定した経営につながります。
福嶋 自社ECサイトはファン作りに有効。当社は昔、モール比率が高かったのですが、いまは大逆転。大手モールにはすべて出店していますが、自社ECサイトが売り上げの多くを占めています。やっぱり自社ECサイトの魅力は、「JAMで購入したというお客さまの醸成」「顧客リストの自由度」などですよね。
井垣 当社のEC売上比率は、自社ECサイトが85%、残りはアマゾン・楽天市場などです。自社ECサイトで重要視しているのは「世界観を伝えること」。モールは制限があるので、自社ECサイトはリピート施策の効果などでリピート購入が増えています。
井前 自社ECサイトを重要視するのは当たり前の話。消費者とのコミュニケーションを自社ECサイトで行えば、ブランドの世界観を伝えることができます。
福嶋 JAMが運営するモールのお客さまはセール効果で集まりますが、客単価は低い。一方の自社ECサイトの回遊率は大きく、メルマガ開封率も高い。最近はモールでの広告は費用対効果が乏しい印象がありますが、自社ECサイトはメルマガなどを打てば響く関係性ができています。
足立 「伊藤久右衛門」のモールサイトは商品のファンが多いですね。一方、自社ECサイトはお店のファンが多いように感じています。自社ECサイトは、圧倒的に客単価、年間購入回数が多いのが特徴です。
井垣 「SPINNS」が扱う商品はファストファッション的なもの。付加価値を提供するために、Webでのコーディネート提案、動画による訴求など、購入するための理由作りに力を入れています。そうしたことが自社ECサイトではやりやすいですね。
自社ECサイトでユーザーと良好な関係性を作るコツ
福嶋 継続的に積極的な情報発信に力を入れています。毎日、ブログに記事を投稿し、SNSで情報を発信するようにしています。たとえばブログ。商品の宣伝だけではなく、スタッフの顔写真入り情報などを盛り込み、ブランドや店舗理解を推進するような情報発信を心がけています。反応が高いのは、インスタグラムとツイッター。リアルイベントなどを行っていますが、動員数をけん引するのがツイッターなんです。
井垣 アパレルという商材が共通しているのかもしれないですが、当社もツイッターがとても大きな効果を出しています。次はインスタグラム。でも、情報発信を行って最もECサイトへの流入数が高いのはLINE。店舗とECの情報を各ソーシャルメディアに投稿していますが、月を追うごとにLINEの反応率が上がっています。
足立 皆さんがお話しているように、自社ECサイトにとって情報発信はすごく重要ですよね。私たちが重要視しているのは「お客さまの立場からの情報発信」。メルマガやFacebookは一斉配信をしていますが、いまの時代、お客さまごとに配信する情報を変えることができますよね。これからの時代、お客さまの立場に沿ったメッセージ配信を心がける必要があると思っています。
井前 私も情報発信をする上で、「お客さま側に立つ」というのを重要視しています。コミュニケーションをする際、「買ってね」というアクションではお客さまは引いてします。お客さまは「いま何を求めているのか」「どういう情報を欲しているのか」ということに気を付けなければなりません。
良い商品でも、情報発信の内容ややり方次第で、マイナスの印象を与えてしまう可能性があります。私は福嶋さんに聞きたいのですが、インスタグラムのアカウントを見ましたが、店舗ごとにアカウントをわけていますよね。その理由を教えてください。
福嶋 実店舗を運営していますが、店舗ごとの“顔”が違うんですよね。たとえば、「今日、店長はお店にいるのか?」といったことをチェックするお客さまもいる。アカウントを増やすことで手間は増えますが、タッチポイントは拡大し、小さなコミュニティですがお客さまとの関係性は広げることができる。1つにまとめるよりも4つ(4店舗運営しているため)の方が現在のところ最適な形だと思っています。
スマホ時代の到来で何が変わった?
井前 お客さまの商品購入に向かう姿勢が大きく変わりましたよね。スマホは何かをしながら利用する傾向が多い。たとえば、通勤しながら、飲みながら……など。それを踏まえると、パソコン向けサイトと一緒の情報を発信・提供するだけでは商品購入やファン作りは難しい。戦略は大きく変えないといけない時代ですよね。
足立 デバイスが違うだけではなく、お客さまの情報取得に関する感度が変わってきたと思う。これまで、パソコン向けではさまざまな伝えたいメッセージを書いても読んでくれました。しかし、スマホでは大きく変わります。スマホで商品購入するお客さまには、きちんと情報を読んでもらえるようなコンテンツ作りが必要だと思います。スマホ用の写真、クリエイティブ、キャッチコピーを作るなど、手間とリソースはかかりますが、そうしなければお客さまは離れてしまうかもしれない。「伊藤久右衛門」はスマホ対策に1年くらいの期間を要しました。
福嶋 JAMは3年ほど前から「スマホファースト」を掲げていました。そのため売り上げ構成比率はスマホが8割を占めています。
井垣 2015年にECサイトをリニューアルしました。それまでは、店頭POPなどを意識してECサイトのクリエイティブを作るようにしていました。しかし、現在はスマホを意識したデザインを店頭に落と込むようにしています。たとえば店頭POP。LINE@への登録を促すPOPを作ったり……スマホと店頭のクリエイティブ統一に注力した1年でしたね。