アフターコロナを見据えて――キャッシュフロー経営、PLを意識した新規獲得、既存客とのコミュニケーションの継続を
金融危機が起きた時に最後まで生き残るのは、戦略的に考え、長期的な計画を立て、優先順位を変えていくことができる小売事業者です。
今は変化が激しく、多くの人にとって恐ろしい時代です。経営者、特に急成長を期待していた新興D2C(Direct to Consumer)企業は、麻痺状態に陥ることも多くなるかもしれません。しかし今は、穴に潜り込んで事態が収まるのを待っている場合ではありません。
金融危機下で、企業が力強く生き残るために
金融危機が起こっても、戦略的に考え、長期的な計画を立て、それに応じて予算や活動をシフトさせていくことができる企業こそが、力強く生き残っていけます。
この前例のない時代に、戦略的・財務的な計画を立て、ベストプラクティスを実践することで、ビジネスを守り、最適化することができます。以下でもう少し深く掘り下げてみましょう。
チェーンソーではなくメスで切る
間違いなく企業は今、マーケティング活動自粛の圧力を感じています。しかし、大規模な広告出稿を凍結するのではなく、採算の合わないマーケティングキャンペーンやチャネルだけを削減すべきです。コロナウイルスの危機に際し、過去の傾向と比較してパフォーマンスを再評価する必要があります。広告出稿を中止するかどうかの決定を行う前に、最新のデータを参考にしましょう。
損益分岐点を上回る(編注:損益のボトムライン「0円」以上を意味する)マーケティングチャネルには投資し続けましょう。損益分岐点を下回らずに獲得できた新規顧客は、下半期の需要と利益を牽引することになるため、今すぐに取り込むことが重要です。
景気後退や金融危機では、キャッシュフローはこれまで以上に重要であり、キャッシュフロー経営を促進するためにはトップラインの需要が必要です。マーケティング費用の削減は、トップラインの需要に影響を与え、その結果、ボトムラインにも影響を与えます。そのため、支出を抑制する場合は慎重になる必要があります。荒波を乗り切るには、収益を上げるためのお金を使い続ける必要があるのです。
メッセージ内容とトーンを調整する
世界的な危機の時、顧客にメッセージを伝え続けることは容易でないでしょう。ですが、人道的な危機の中では、顧客に配慮と敬意を持って接することが第一であり、何よりも大切なことです。これまで以上に顧客第一主義を貫いて、顧客が今現在、どんな状況にいるかを理解しましょう。そして今こそ、適切なメッセージでコミュニティと信頼を構築することに集中しましょう。
今、人々が必要としているものを理解しましょう。多くの人は子どもたちが楽しく、充実した時間を過ごせるように配慮しながら、在宅で仕事をしようとしています。
彼らは仕事のためにオシャレはしていないまでも、快適かつ魅力的でありたいと思っています。彼らは自分のワークスペースと自宅に関心があるのです。
ブランドは見出しの文言を意識し、現在のニーズやマインドセットに合わせて、購入を優しく後押しするような重要なメッセージを発信しなければなりません。
食品宅配サービス、シーツや寝具、住宅関連サービス、子どもの教育用品、ホームオフィス用品やアクセサリーなど、売れ筋の関連商品を宣伝しましょう。
また、フルフィルメントセンターが影響を受けている場合は、在庫と出荷のスケジュールについても透明性を保ちましょう。
荷物を受け取ること自体が、日々の中で明るい話題になり得ることを認識し、可能であれば、2日以内配送への無料アップグレードを検討してみてはいかがでしょうか(アマゾンは重要度の低い商品のフルフィルメントを遅らせています)。
前を向いて、今まで同様、ピーク時に集中する
ブランドは今、2020年の秋冬に向けてマーケティングを行うべきです。広告活動が売り上げや顧客数の増加に与える効果をおろそかにしてはいけません。たとえ広告費の還元率が例年ほど高くなくても、この春に少しでも多くの売り上げを伸ばし顧客を開拓できれば、下半期にはより多くの売り上げを生み出すことができるでしょう。
また、ブランドはピーク時に手を抜いてはいけません。まだ販売できる商品はあるはずです。母の日、父の日、卒業シーズンは必ずやってきます。
人々は愛する人たちとのつながりを減らすのではなく、離れていても想っていることを伝えるため、より多くのつながりを持つ必要性を感じています。マーケティングを停止する必要がある場合は、ピーク時以外の時期に行うようにしましょう。販売する商品が少なく、売り上げにつながりにくい時期こそ、マーケティング費用を削減する必要があります。
関わりを保ち、再始動に備える
ロイヤルティの高い顧客に関しては特に、マーケティング活動を完全に止めてはいけません。上顧客や見込み客とのコミュニケーションを止めないでください。彼らは、危機の時にあなたのブランドをサポートしたいと考えている人たちであり、今後数ヶ月の間に企業の回復と成長をけん引する人たちなのです。
危機が去った後は、店舗への来店を促す計画を立てましょう。物事がようやく通常の状態に戻ったとき、あるいはその一部が回復したときには、潜在的な需要がたくさんあるはずです。既存顧客も見込み客も、営業が再開され、かつ自身のニーズを満たしてくれる店舗で買い物をしたいと思うようになるでしょう。
困難で不確実な時期に楽観的に計画を立てることは難しいかもしれませんが、あなたの顧客も同じようにこの危機を乗り越えたいと思っていることを忘れてはいけません。今現在も、そして暗い日々が終わって再び太陽が昇る時も、彼らに寄り添っていることが大切なのです。