楽天の国内EC流通総額は約4.5兆円で、伸び率は約20%増【2020年度の実績まとめ】
楽天の2020年度(2020年1~12月期)国内EC流通総額は前期比19.9%増の4兆4510億円だった。「楽天市場」を中心に2020年度における国内ECの状況をまとめた。
国内EC流通総額は4.5兆円、「楽天市場」単体で3兆円突破
国内EC流通総額は「楽天市場」の流通総額に加え、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ゴルフ、ファッション、ドリームビジネス、ビューティ、デリバリー、楽天24(ダイレクト)、オートビジネス、ラクマ、Rebates、楽天西友ネットスーパーなどの流通額を合算した数値。
チケット事業はモバイルセグメントへ移管したため、2019年度の数値を遡及修正している。
2020年度の国内EC流通総額の四半期ベースの推移
- 2020年10~12月期(第4四半期) 前年同期比38.5%増の1兆4099億円
- 2020年7~9月期(第3四半期) 前年同期比13.0%増の1兆950億円
- 2020年4~6月期(第2四半期) 前年同期比15.9%増の1兆298億円
- 2020年1~3月期(第1四半期) 前年同期比9.3%増の9163億円
なお、1月28日にオンライン配信で行われた「新春カンファレンス」で楽天の三木谷浩史会長兼社長は、2020年12月期に「楽天市場」単体で流通総額が3兆円を突破したことを表明している。
成長要因として、新規購入者、1年以上「楽天市場」を使っていなかったユーザーの復活購入、加えて、1人あたりの月間購入額の増加、ユーザーの定着率(リピート購入)などをあげている。
2020年度の新規購入者数は前年同期比27.6%増、復活購入者数(1年以上購入がなかったサービス利用の再開者数)は同27.1%増だった。
購入者の送料負担を0円とするラインを3980円以上に設定した「送料無料ライン」について、約9割の出店者が導入。「送料無料ライン」「置き配」などロイヤリティ向上施策を進めた結果、2020年10-12月期のユーザー1人あたりの購入金額は前年同期比15.1%増。2020年7-9月期に購入したユーザーが2020年10-12月期に購入した割合は約78%となり、ユーザーの定着率が浸透したとしている。
楽天エコシステム(経済圏)のメンバーシップバリューは8.9兆円
楽天エコシステム内において会員の価値を示す「メンバーシップバリュー」は2020年10-12月期(第4四半期)で8.9兆円。前年同期比で66.3%増と大幅に増えた。
過去12か月間で2サービス以上利用者数を同期間の全サービス利用者数(2020年12月末時点)で割って算出したクロスユース率は、2020年12月末時点で73.0%となった。前年同期比で1.1ポイント増。
楽天カード会員数は2020年12月時点で2155万人、前年同期比で13.5%増。「楽天市場」流通総額における楽天カード決済比率は継続的に拡大しており、2020年12月時点で66.9%まで伸びた。
2020年10-12月期における「楽天市場」のモバイル流通総額の比率は76.5%に。前年同期比で3.1ポイント上昇した。
新型コロナウイルス感染症拡大によって出店者数は拡大。2020年6月までに5万店を突破。2020年12月時点で5万3794店舗が出店している。
Rakuten Fashionの成長
2020年12月末時点でファッション通販サイト「Rakuten Fashion」に出店するショップ数は1307店と前年比で156店増えた。
2020年は専用スマートフォンアプリの提供、「Rakuten Fashion」内にラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドの商品、その魅力を発信するコンテンツを扱う専門サイト「Rakuten Fashion Luxury」を開設するなど、ファッション分野の強化を進めている。
なお、楽天は「Rakuten Fashion」参加ファッションブランドを対象に、複数販路の各種データを一元管理するデジタルソリューション「Rakuten Fashion Omni-channel Platform」を2021年夏頃から提供を開始する。
ブランドショップが展開する実店舗や自社ECサイト、「Rakuten Fashion」などのECプラットフォームなど、複数販路の商品販売履歴をシステム上の在庫情報に反映、一元管理できる機能を提供。各販路の商品在庫最適化を実現できるようにする。
物流面では日本郵便と協業、西友への出資で小売業のDX推進をサポート
物流拠点とラストワンマイルを拡大することで、独自の配送ネットワークを構築する「ワンデリバリー」構想では2000億円超の投資を計画する進める楽天。
楽天グループで生活用品や日用品を取り扱う「Rakuten24」などの直販店舗、「楽天ブックス」、ファッション通販サイト「Rakuten Fashion」、家電ECサイト「楽天ビック」の商品、「楽天市場」出店店舗を対象とする物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」で受託する一部の荷物を自社配送している「Rakuten EXPRESS」の人口カバー率は2020年12月時点で63.5%まで拡大。
2020年の「楽天スーパーロジスティクス」について、利用店舗数は前年比87.4%増、出荷量は同140.7%増えたという。
「ワンデリバリー」構想を一気に進めるための協業先の1つが日本郵便。楽天と日本郵便は2020年12月、持続可能な物流環境の実現を目的とした戦略的提携に向け、基本合意書を締結した。
日本郵便の物流網やデータ、楽天が保有する「楽天市場」での需要予測や受注データの運用ノウハウなどを活用し、合弁会社の設立などを含めた新たなオープンプラットフォームの構築で協業する。
楽天のテクノロジーと日本郵便の配送網・アセットを組み合わせて、物流分野にデジタルトランスフォーメーション(DX)を起こす狙いがある今回の協業。次世代物流プラットフォームを構築し、新たな物流プラットフォームをオープン化していくとしている。
物流面に加えて、小売業のDX推進も進める。
ウォルマートが保有する西友の株式について、米国の資産運用会社であるKKRが65%、楽天が新たに設立する子会社「楽天DXソリューション(仮)」を通じて20%を取得することで合意、契約を提携。実店舗のDXを推進していくという。
「楽天DXソリューション」は、楽天の事業で培ったOMO施策やデータマーケティングなどさまざまなノウハウを生かし、全国の食品や日用品等の小売り事業者におけるDXの推進支援を手がける。