『売れる! EC事業の経営・運営 ネットショップ担当者、チームのための成功法則。』ダイジェスト

2026年のEC事業で「最も優先すべきこと」は、力配分の見直し+捨てる・削るモノの見極め+攻めるための余力作り

『売れる! EC事業の経営・運営 ネットショップ担当者、チームのための成功法則。』著者の坂本悟史が、EC業界の現状と今後最も大切になることを解説

坂本 悟史[執筆]

1月13日 8:00

全21回にわたってお届けしてきた本連載も、最終回となりました。連載では、ECの経営について解説した書籍『売れる!EC事業の経営・運営 ネットショップ担当者、チームのための成功法則。』(以下「黄色本」)のダイジェストを通して、EC販促の土台となる考え方から具体策まで紹介してきました。

振り返ると、この本も今回のシリーズ記事も、いわば「ECの健康診断」でしたね。自分のお店を点検しながら、できている箇所、できていない箇所をチェックしていくという趣旨です。 丁寧に読んだ人は、売り上げの伸び悩みや非効率など「体調不良」の原因がいくつか見つかったはずです。最終回では、EC業界の現状と、「これから最も大切になること」を紹介していきます。

EC業界の現状(おさらい)

景気の悪い話ですみませんが、Eコマースの市場規模は、ここのところ成長していません。次の画像は、第1回でも紹介した「BtoC-EC業界」の市場規模と成長率です。「年々鈍化しています」という話でしたよね。

その後、最新の情報として2024年のデータが経済産業省から発表されました。ご覧の通り、さらに低下しています。昨今の物価上昇率を考えるとほぼ横ばいに近い数字になってきています

EC市場規模や前年対比成長率のグラフ
EC市場規模や前年対比成長率のグラフ

ECは、放っておいても誰でもやれば成長する業界ではなくなり、「普通の業界」になったということです。つまり、普通の業界らしく、伸びている領域に投資をして、厳しい箇所は削って、非効率な箇所は効率化していく必要がある。

物価高や人件費・配送費などのコスト増も続いており、いまやEC業界は「成長鈍化」と「コスト増」により、放っておくと収益性が下がる構造にあります。倒産も増えていますね。

しかし、今でも「とにかく手を広げて伸ばす」という習慣が抜けてない人が多いように思います。でもそうではなく、事業全体をチェックして、伸ばすべきところを伸ばす、捨てるべきものを捨てる、そういったメリハリをつけていただきたいです。

成長し続けるネットショップは「力配分」を見直している

一方で、着実に成長し続けているネットショップもありますよね。

  • 対個人ではなく、対法人で売り上げが伸びた
  • 本店が売上貢献するようになった
  • 新しいカテゴリーの商品を開発したら、それがよく売れた

など、私の周りでも、いくつかの成功事例を見かけています。

多くの場合、何をやって売れたのか(たとえば新しい販路を開拓した)という伸びた領域に着目するのですが、私は削った領域にこそ着目してほしいです。

私の見立てではありますが、成長しているネットショップのみなさんは、共通して力配分の見直しをうまく実践しているようです。つまり、2026年のEC事業に向けて、今「最も優先すべきこと」は何か。それは、力配分を見直し、捨てる・削るものを見極めて「攻めるための余力」を作ることです。

手持ちのリソースを適切に使えるように無駄を削減し、浮いた時間や利益を新しい分野に投資。反転攻勢のために、力を貯める。社長さんは、いろいろ手を広げた挙げ句に「全部最優先!」と言いがちですが、「限られたお金と時間と人員」のなかで状況を打開していくためには、やっぱり選択と集中が重要ポイントになります。

「何によって業績が伸びたか」は事業者ごとに結構違います。 ただ、リソースを捻出して何かに集中したというのは、どの事業者も同じなんです。 何でもかんでも手を広げているわけではなく、削る箇所を削っているからこそ伸ばすべき箇所が伸びているわけですね。

できるお店が行っている「力配分」の見直し例

では、どのような「力配分の見直し」をすべきなのか。我々のECコンサルティングの現場で成果が出ている典型例をあげてみます。

まず1つ目は「無駄な広告費を削って投資に回すこと」です。広告費の削減は売り上げに響きそうで腰が重くなりがちですが、いざデータを見つつ不要な広告費を削ってみると、意外と大丈夫だったというケースがよくあります。目先の売り上げは落ちても、トータルの利益は増えて、減収増益になるパターンですね。

こうして捻出した経費を、新商品開発や別の販促に回して、増収増益に転じさせていくわけです。

EC業界では、売上規模が重視される傾向がありますが、商売でより重要なのは実質的な利益です(場合によってはキャッシュが重要な場合もありますが)。こうして視点をちょっと変えてみると、広告投資の見え方も変わってくるかもしれません。

そして2つ目は、「業務のプロセスを簡略化して、新しい事業や企画にリソースを割くこと」です。先ほどの広告費の時間バージョンですね。具体的には「実は必要なかった仕事」や「無駄にやりすぎていた業務」を止めたりテンプレ化したりして、浮いた時間を新しい事業・企画に回しています

最近は業務改善というと「AIで自動化しよう」という話から入りがちですが、彼らはAI活用の手前、そもそも「意味のないことを止める」ところからスタートしています。

フリーダイヤルを止める、過剰なラッピングを止めるとか、逆に「商品を絞ってラッピングや名入れで勝負する」とか、止めるべきことは会社によってさまざまですが、とにかく「何か削るところがないかチェックする」のが重要です。

「黄色本」で自身のEC事業を「健康診断」してみよう

以上はあくまで一例で、他にも削れる箇所はいろいろとあります。逆に伸びしろもあるはずです。 では何からしたら良いのか――先程もお伝えした「『黄色本』による健康診断」です。

「黄色本」は、EC事業の構造と施策を、組織・戦略・販売・業務の4領域に大別し、64項目でEC事業全体を網羅的に点検できるようになっています。

“伸びしろ”を探すヒントになる「マンダラ図」
“伸びしろ”を探すヒントになる「マンダラ図」

各項目を1つひとつチェックしていくと、EC事業の力配分の見直しポイントが10個も20個も出てきます。洗い出したら優先度が高いものから順に対処していく。

特に「できていない・要改善」だと感じられた箇所は、「実行したい施策のリスト」を作って、そこに追加しておきましょう。いつかやりたい施策は、リスト形式で記録しておくと、いざ閑散期で時間が空いたときにスムーズに実行することができるからです。

これらは地道に改善していく漢方的な取り組みですが、1つクリアするごとに、着実に進化していけるはずです。ぜひ、「黄色本」でEC事業全体を点検してみてください。悩んだときには、書籍に添付された「書籍を解説するAIコンサルタント(コマのすけ)」に聞いてみてください。コンサルタントのように、詳しく提案してくれます。

「健康診断」を実践されたネットショップの人からは、「便利だった」「成果が出た」との声をたくさんいただいています!

おわりに:「勝てる場所」を探して力を注ごう

ECの誕生からだいぶ時間が経ち、もはや若い業界ではなくなりました。かつてのような「誰もが一発当てて急成長」のケースは少なくなり、成熟産業らしい「地道な領域勝負」が増えてきたように思います。

しかし「もう厳しい一方なのか」というと、そんなことはありません。EC業界は動きが激しい世界です。通用しなくなった手法や、利益が出しにくくなった商材が増える一方で、ひっそりと新しい需要が芽生え、まだ供給が追いついていないお宝ジャンルもまだまだ眠っているように思います。

我々のような中小規模のEC事業者にとっては、そうした新しい市場こそがチャンスになります。かつてのような特大ホームランは打てなくても、それなりに「勝てる場所」を見つけてヒットを打つことはできるはずです。

くなった箇所を整理して、力配分を見直し、空いた手で新しい「勝てる場所」に力を注ぐ。「黄色本」を片手に、このサイクルを繰り返していけば、どんな時代になっても必ず勝てるチャンスが巡ってくると信じています。

この連載が、何かの参考になったなら幸いです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

◇◇◇

なお、ECにまつわる最新情報や、今後の業界展望、具体的なAI活用手法などについては、コマースデザインのブログやセミナー、メルマガなどで随時発信しています。もっと坂本の話を聞いてみたいという方は、ぜひそちらでもつながっていただいて、ご縁が続けばうれしいです。

それでは、またお会いしましょう。

売れる! EC事業の経営・運営 ネットショップ担当者、チームのための成功法則。

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坂本悟史 /コマースデザイン 著
インプレス 刊
価格 2,400円+税

ECの仕事を「販売・業務・組織・戦略」の 4分類に整理。現代のEC販売はもちろんのこと、仕入れ・製造から受注・出荷までのEC業務、AIやリモートを活用したEC組織運営、商品開発やブランディング、会計や経営計画などのEC戦略までをカバー。経営者の学び直し、担当者の育成、組織の共通言語におすすめです。

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