Walmartがフルフィルメントに注力、ラストワンマイル戦略を担う3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT」を買収する理由
Walmartは、米国の物流ロボットメーカーのAlert Innovation(アラート・イノベーション)を買収する予定です。Alert Innovationを買収する正式契約を締結しました。
- Walmartは2016年からAlert Innovationと協業。ネットスーパー向けのフルフィルメントの自動化技術をカスタマイズし、2019年に3Dロボット倉庫システム「Alphabot System」の試験運用を開始
- Walmartの店舗はオンラインの食料品注文のためのフルフィルメントセンター「マーケットフルフィルメントセンター(MFC)」として展開する
- Walmartは、この技術を利用して販売員への依存度を下げる予定
WalmartはAlert Innovationの技術を使い、米国内の4700店舗をオンライン注文のためのマーケットフルフィルメントセンターとして活用する予定です。取引条件は明らかにしていません。
Walmartは2016年、Alert Innovationと取引を開始。2019年末には、ニューハンプシャー州セイラムにあるWalmart初のMFCで、Alert Innovationの「Alphabot System」を試験的に導入しました。このパイロットプログラムは、ロボット技術の可能性を探求するWalmartの幅広い取り組みの一環です。Walmartは2021年1月、他のフルフィルメントに関するベンダー企業であるDematicやFabricなどと、別のシステムも試験的に導入しています。
Walmartのロボットによるフルフィルメント戦略は軌道に乗りつつあります。2022年2月、店舗からピックアップしたオンライン注文が、過去12か月の間で170%増加したと発表しました。
この技術へさらに投資することで、Walmartの店舗(米国人口の90%から10マイル以内に位置する4700店舗)を保管とフルフィルメントに活用できるようになります。(Walmartのイノベーション&オートメーション担当上級副社長のデービッド・ギギーナ氏がWalmartのブログに投稿)
「Alphabot System」の仕組み
Alert Innovationは、小売業のサプライチェーンにおける注文処理を自動化するためのマテリアルハンドリング技術を開発しています。「Alphabot System」は、Walmartのために特別に開発。2万平方フィートの倉庫型スペースで稼働し、自律走行するカートを使って、オンライン食料品の注文に応じて棚に保管されている商品、冷蔵・冷凍商品を取り出します(Alert Innovation社によると、「Alphabot System」は完全な自律走行型ロボットです)。
完全自律型のロボットは、リフトやコンベアを使わずに、温度が異なる3つのエリアを、水平、横、縦に移動しながら、注文品の保管、取り出し、分配を行います。注文の品物を取り出すと、それをワークステーションに運びます。そこで、Walmartの社員が注文と商品が一致していることを確認。その後、商品を袋詰めして発送します。
また、リアルタイムでデータを共有。商品をストックしながら学習していきます。この技術は時間とともに、より高性能になっていくでしょう。
たとえば、消費者が受け取る品切れのお知らせの量を減らすために、どのように商品を代用するかを学習することが期待されています。ニューハンプシャー州セーラムの店舗に設置された試験的なシステムは、今後も試験的な場所として機能する予定です。
Walmartは、このシステムをラストワンマイル戦略の一環として全社的に導入する前に、引き続き改善と調整を行うそうです。
オムニチャネルのさらなる自動化
今回の発表は、31カ所のeコマース専用フルフィルメントセンターと店舗を拡大しようとしているWalmartの取り組みと関連しています。
Walmartは2022年6月、今後3年間で4つの次世代フルフィルメントセンター(FC)を建設する計画を発表しました。
その第1号が2022年9月、イリノイ州ジョリエットにオープンしました。Walmartのプレスリリースによると、この新しいフルフィルメントセンターは、人間の作業員、ロボット工学、機械学習の組み合わせによる、特許出願中の新しいプロセスを特徴とする4つセンターのうちの1つだそうです。
4つのフルフィルメントセンターが完成すれば、米国人口の75%に翌日または翌々日の配送を提供できるようになります。