Amazon販売事業者が押さえておきたい「原価率」「返金率」「CVR」「フルフィルメント手数料」「利益の伸長率」など指標まとめ
Amazon出品サービスを利用する多くの販売事業者は、コンバージョン率、商品の星評価、広告費に対する利益率などの重要な指標について、どのように判断すれば良いのかを疑問に思っています。Amazon特化型のブランドやその他EC企業との取引を専門とする投資銀行が主要な18指標を詳しく調べたレポートを発表。3回にわたってレポートを解説します。初回はAmazonでの売り上げと財務指標などです。
Amazonでの事業パフォーマンスで指標にすべき数値とは?
「Amazonにおける良好なコンバージョン率はどれくらいか」「売上高のうち何%を広告に費やすべきか」「Amazonの広告出稿で期待できるクリック率はどの程度か」――。Amazonで商品を販売する、世界中の約200万ブランドの多くが、販売のパフォーマンスについてこのような疑問を抱いていることは間違いありません。
そんななか、18の主要なパフォーマンス指標に関するベンチマークを提供するレポートが発表されました。レポートを発表したのは、「Amazonマーケットプレイス」を利用する事業者、その他EC企業との取引を専門とする投資銀行「Fortunet Partners」です。
そのレポート「Benchmark Guide for Amazon Private Label」には、米国、英国、欧州の150社以上のAmazon販売業者との取引を通じて得たデータを反映しています。「広告」「市場・業績」「販売・財務」「運営の複雑さ」の4カテゴリーに分類。18の指標それぞれについて、「高得点」「適正」「低得点」の数値を示し、指標を改善するためのFortunet Partnersからのアドバイスも記載しています。
「返金率」「売上原価率」など財務指標を解説
返金率
返金に至った注文の割合。顧客満足度と商品の品質の指標であるため、数値は低い方が好ましい。高ければ高いほど収益性が低いと見られます。
- 返金率の指標:13%よりも大きければ「高い」、5~8%は「適正」、3%よりも小さければ「低い」
- 指標改善に向けたアドバイス:返品頻度が特に高い商品の品質管理と検品に力を入れるべきでしょう。商品が品質の高い状態で届くよう、梱包を継続的に見直し、改善する必要があります。
売上原価率
売上高に対して売上原価が占める割合。Amazonに出品している販売事業者の場合、通常、商品がAmazon倉庫に到着するまでの調達工程、製造、出荷、保管、その他の直接コストを含む。売上原価率が低いほど、ブランド力の高さ、収益性、効率性が高い。
- 売上原価率の指標:40%よりも大きければ「高い」、25~30%なら「適正」、20%よりも小さければ「低い」
- 指標改善に向けたアドバイス:サプライヤーや配送業者と、定期的なコスト分析と交渉を行いましょう。コスト削減のために、外部の3PL配送業者ではなく、Amazonが提供するクラウドサービス「Amazon Warehousing & Distribution(AWD)」、Amazonの倉庫から商品を海外に発送するサービス「Amazon Global Logistics(AGL)」の利用を検討することも良いでしょう。
SDEマージン
SDE(Seller Discretionary Earnings)は「売り手裁量利益」と訳され、企業の収益性を示す主な指標。販売事業者が事業からどれだけの利益を得たかを示します。税引前利益に利益、利息、減価償却費、オーナー報酬を加えて算出する利益(編注:似た指標のEBITDAはオーナー報酬を加えずに算出した利益指標)です。SDEが高く安定していれば、購入の潜在層に対するアプローチ(広告投資など)がしやすいことを示唆します。
- SDEの指標:25%よりも大きければ「高い」、15~17%なら「適正」、10%よりも小さければ「低い」
- 指標改善に向けたアドバイス:収益を増やす方法を検討する際、利益への影響を考慮すること。定期的に経費を見直し、交渉するのが効果的です。Amazonの全ての手数料と個々の商品レベルの売上原価を考慮した利益分析ツールを使用すると良いでしょう。
商品ごとのROI
ROIは、投資利益率のこと。総売上高から返金やプロモーションといったコストを差し引いた収益を、商品に関連するすべての費用で割ったもの。ROIの数値が高ければ高いほど、うまく投資ができているといえるため、バイヤーは一般的にROIの高い商品を探しています。
- ROIの指標:100%よりも大きければ「高い」、45~70%なら「適正」、25%よりも小さければ「低い」
- 指標改善に向けたアドバイス:プレミアム価格の平準化、商品の差別化、ブランド力など強力な価値の提案に焦点を当てることです。ROIを高めるには、新商品を導入するよりも、既存のレビューを利用して、Amazonでの販売量を増やすことを検討しましょう。新商品を発売する前に、新商品に関連するすべてのコストをチェックすることも大切です。ROIアップのため、複数の商品を組み合わせた販売を検討するのも良いでしょう。
前期比伸長率
ある年から次の年への利益の成長率。購入者は、一貫してプラス成長を続けている企業を好みます。ビジネス拡大の実績と、さらなる成長の可能性が高いと考えるためです。
- 前期比伸長率の指標:20%以上なら「高い」、5%程度なら「適正」、20%以上下回る場合は「低い」
- 指標改善に向けたアドバイス:優れたカスタマーサービス、購入後のエンゲージメント向上、定期購入の提案を通じて、リピーター率を高めることに注力しましょう。在庫切れは成長を妨げるため、在庫は効果的に管理しましょう。注文数が低い商品の販売取りやめを検討するのも良いでしょう。
フルフィルメント手数料
各商品の売り上げに対してフルフィルメント費用が占める割合。保管、ピッキング、梱包、配送など、Amazonのフルフィルメント費用を全て含みます。フルフィルメント手数料のパーセンテージが低いほど、利益率が高いと言えます。
- フルフィルメント手数料の指標:35%よりも大きければ「高い」、20~27%なら「適正」、10%よりも小さければ「低い」
- 指標改善に向けたアドバイス:商品の寸法や重量にかかる手数料を最小限に抑えるため、商品の包装に焦点を当てましょう。輸送コストがかかりやすい大型商品は、自社でのフルフィルメントを検討してみては。複数の商品を組み合わせて販売することで、1個あたりのフルフィルメント費用を削減し、売り上げを伸ばすことができます。
次回の記事では、広告、市場、業績指標に関する指標を解説します。