Digital Commerce 360[転載元] 2023/12/7 8:00

この記事ではAmazonマーケットプレイスに出店している事業者に向けて、広告費などの指標を評価する基準について解説します。Amazonでの売り上げと財務指標などについて解説した前回に続き、今回もEC向け投資会社Fortunet Partnersが公表したレポートから、広告にフォーカスして評価基準などをお伝えします。

記事のポイント
  • 近年、Amazonブランドを買収する企業が急増しているが、こうした企業の資金は急激に減少している
  • 投資家はAmazonで販売するブランドを評価するための特定の指標を持っている
  • これらの指標で高いスコアを獲得した販売者は、低いスコアを獲得した販売者よりも高い倍率の収益や利益でブランドを売却できる

Amazonで販売する際の評価基準とは?

「Amazonにおける優秀なコンバージョン率とは?」「売り上げの何%を広告に費やすべき?」「広告で期待できるクリック率は?」――。Amazonで商品を販売する約200万ブランドの多くが、事業の指標についてこのような疑問を抱いていることは間違いありません。そんななか、Fortunet Partnersが発表したのが、18の主要なパフォーマンス指標に関するベンチマークを示すレポート「Benchmark Guide for Amazon Private Label」です。

たとえば、販売事業者の商品の平均星評価は、投資家にとって「極めて重要な指標」であると説明。レポートでは「優れた評価は、顧客満足度の高さ、商品の品質の高さ、ブランドイメージの良さを裏付けていると言えます。その結果、高いレビュー評価をされている企業は、買収しようとする投資家にとってより魅力的であることが多い」と評価しています。

商品レビューの平均評価は4.6以上が「高い」

星1つから5つまであるAmazonの商品レビューの平均評価は、どれくらいであれば「高い」と言えるのでしょうか? Fortunet Partnersによると、平均4.6以上は「高い」、4.4〜4.6は「少し高い」、4.1〜4.3は「平均」、3.8~4.0は「少し低い」、3.8以下は「低い」としています。

Amazonアグリゲーターの動向

世界最大級のベンチャー企業の情報データベースCrunchbaseによると、いわゆるAmazonアグリゲーター(Amazonブランドを買収するために資金を調達する企業)と呼ばれる事業者は約70億ドルを調達し、Amazonに特化したブランドを多数買収しました。

しかし、2022年に急速にアグリゲーターの資金が枯渇したため、急激に冷めつつあります。アグリゲーターのなかには「ベンチャー企業は、単一の小さなブランドを運営するよりも、親会社のスケールメリットを生かしてAmazonでの販売ビジネスをより効率的に運営できる」という契約内容を実行するために、苦戦した企業もありました。

また、金利の上昇も資金枯渇の一因でした。買収先をロールアップした企業の多くは、買収のために借り入れた資金を返済するためのコスト増加に直面しています。

2021年をピークとして急激に減少している「Amazonアグリゲーター」の資金調達額(2019年~2023年)(出典: CB Insights(2023年5月時点で公表されている取引に基づく))
2021年をピークとして急激に減少している「Amazonアグリゲーター」の資金調達額(2019年~2023年)(出典: CB Insights(2023年5月時点で公表されている取引に基づく))

投資家の資金は減少しているものの、Amazonの販売事業者は投資家がどのように自社の広告、運営、および競合他社との業績の比較を分析するかを理解することで、より多くの利益を得ることができるはずです。

指標は4つのカテゴリーに分類

Fortunet Partnersのレポートでは、指標を「広告」「市場・業績」「販売・財務」「運営の複雑さ」の4つのカテゴリーに分類しています。18のデータポイントそれぞれについて、高得点から低得点までを示しており、販売事業者がパフォーマンスを改善する方法についてのアドバイスも提供しています。

売り上げと財務指標、市場と業績に関する指標のまとめは、前回記事で紹介しています。

海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

Amazon販売事業者が押さえておきたい「原価率」「返金率」「CVR」「フルフィルメント手数料」「利益の伸長率」など指標まとめ

Amazon販売事業者が意識するべき指標を米投資銀国のレポートから全3回にわたって解説します【第1回】
Digital Commerce 360[転載元]2023/11/30 8:00310

Amazonの広告で押さえておくべき5つのベンチマーク

売上高広告費比率(ACoS)

ACoSは、広告費を広告関連の売り上げで割ったもので、広告効率を図る指標です。投資家は一般的にACoSが低~中程度の売り手を好みますが、スコアが高いブランドには成果を改善する機会があると考える人もいるでしょう。

ACosの指標:60%よりも大きければ「高い」、33~45%なら「適正」、25%よりも小さければ「低い」

指標改善に向けたアドバイス:さまざまなタイプのAmazon広告を試し、商品の季節性に合わせて入札と広告費を調整しましょう。

総広告費売上比率(TaCoS)

TaCoSは、広告費を総売上高で割ったものです。たとえば消費者がAmazonの検索結果でリストをクリックした場合など、広告主導の売り上げが後にオーガニックな売り上げにつながる割合を評価する方法です。投資家は、TaCoSを広告効率の重要な指標と見なしています。このスコアが低いほど、最終的な利益率のアップにつながりやすいことを示します。

TaCosの指標:35%よりも大きければ「高い」、20~25%なら「適正」、15%よりも小さければ「低い」

指標改善に向けたアドバイス:TaCoSが高すぎる場合は、SEOを改善し、ブランド認知度を高めることで、オーガニックな売り上げを増やすようにしましょう。

広告販売比率

総売上高に占める広告売上の割合。比率が高ければ利益率が低くなる可能性があります。しかし、数値が低ければ、広告を増やすことで売り上げを伸ばせる可能性もあります。

広告売上の指標:60%よりも大きければ「高い」、35~45%なら「適正」、25%よりも小さければ「低い」

指標を改善するためのアドバイス:特に人気のある商品については、安定した「適正」のパーセンテージをめざす。パーセンテージが高すぎる場合は、パフォーマンスの低い広告タイプの入札と予算を下げることを検討しましょう。

クリック率(CTR)

広告を見てクリックした消費者の割合。効果的な広告キャンペーンが消費者を引き付けていることを示唆するため、バイヤーはCTRの高い企業を好みます。

CTRの指標:0.6%よりも大きければ「高い」、0.25~0.4%なら「適正」、0.15%よりも小さければ「低い」

指標を改善するためのアドバイス:消費者の関心を引くためにクオリティの高い商品画像を使用しましょう。AmazonのA/Bテスト機能「Manage Your Experiment」機能を使って、画像とタイトルのA/Bテストをし、最も最適な組み合わせを見つけましょう

クリック単価(CPC)

広告費をクリック数で割ったもの。バイヤーは一般的に、効率的な広告費と高い利益率を示すため、低いCPCを好みます。しかし、たとえクリック単価が高いキーワードでも、許容範囲内のコストで売り上げを促進できるなら、必ずしも悪くはないでしょう。

クリック単価の指標:2ドルよりも大きければ「高い」、0.9~1.4ドルなら「適正」、0.6ドルよりも小さければ「低い」

指標を改善するためのアドバイス:関連性のあるロングテールキーワード(複数語の組み合わせからなるキーワード)をリサーチしましょう。また、関連性のない検索キーワードからのクリックを防ぐために、ネガティブキーワードを使用してみましょう。ネガティブキーワードを除外登録することで、指定したキーワードがユーザーの検索クエリで使用された際に広告が表示されなくなり、コストダウンを図ることができます。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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