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アマゾンの成長を支えるSaaS戦略とは? 「Supply Chain by Amazon」「生成AI」などが新たな成長ドライブに

Amazonの成長ドライブの鍵となるSaaS戦略の詳細と解説します

Digital Commerce 360[転載元]

2023年11月24日 8:00

オンラインマーケットとしてグローバルシェア1位の地位を確立しているAmazonは、いまだに成長し続けています。マーケットプレイスとしての存在価値に加え、SaaS(Software-as-a-Service)戦略が新たな成長の鍵になると見られています。Amazon Web Service(AWS)はSaaS戦略によって、サプライチェーンと生成AIサービスという新たな事業成長の機会を生み出しています。

記事のポイント
  • Amazonが最も急成長している分野は広告とセラーサービス
  • Amazonの最高経営責任者(CEO)アンディ・ジャシー氏は、「『Supply Chain by Amazon』に対する販売者からの反応は非常に良好」だと述べている

AWSがAmazonの成長機会に

Amazonの新たな成長につながっているSaaS戦略について、米国の調査会社であるフォレスターのブレンダン・ウィッチャー氏(バイスプレジデント兼主席アナリスト)は、「これはAWSの成功ストーリーだ」と話し、次のように続けます。

Amazonはこれまでに、SaaS戦略に関する投資や技術開発を推進してきました。これを事業拡大につながる新たなビジネスに展開することで、収益を増加させる――。これは、Amazonがかなり前から掲げている戦略の1つでした。

Amazonのアンディ・ジャシーCEOは、2023年度第3四半期(2023年1-9月期)の決算説明会で、さまざまなSaaSイニシアチブについて語りました。

『Digital Commerce 360』のジェームス・リスリー氏(リサーチデータマネージャー兼シニアアナリスト)は、Amazonが最も急成長している分野は広告とセラーサービスだと指摘します。

Amazonのオンラインストアは依然として順調に成長していますが、Amazonの真の成長ドライブはサードパーティーの販売事業者です。とはいえ、オンラインストアの成長率は上半期(2023年1-6月期)で前年同月比2.0%増、第3四半期(2023年7-9月期)は同7.0%増にとどまっています。

独禁法違反などに疑いをかけている政府の圧力、オンラインモールを介さずに販売事業者との直接的な関係を好む消費者が増えていることを踏まえ、Amazonは事業戦略をシフトしています。Amazonは自らが商品を仕入れて販売するファーストパーティーの販売にも注力しています。(リスリー氏)

「Supply Chain by Amazon」が事業者のフルフィルメントを大幅支援

ジャシー氏は成長しているAmazonのSaaSプログラムとして、販売事業者向けのサプライチェーン管理サービス「Supply Chain by Amazon」(編注:製造拠点からの在庫受け取り、国内外への輸送、通関手続き、Amazonやその他販売チャネルにおける在庫の一括保管、配送といったサプライチェーン全体をサポートするサービス)、生成AIの2つをあげます。

Amazonの成AIテクノロジーは、“ほぼ無限の柔軟性”でWebページや商品画像を作成する機能を販売事業者に提供しており、「Supply Chain by Amazon」やAWSとともに「テクノロジーの民主化」と呼ばれています。

「Supply Chain by Amazon」は、以下に掲げた販売事業者の業務を自動化するサービスです。ジャシー氏によると、Amazonの「Supply Chain by Amazon」は販売事業者からの反応が非常に良好だということです。

  • 在庫のピックアップ
  • 商品の発送
  • 通関
  • 陸上輸送
  • 在庫の保管
  • 在庫の補充

Amazonは10年以上にわたりサプライチェーンへ巨額の投資をしてきたとウィッチャー氏は指摘。「さらに規模を拡大すれば、サプライチェーンに対するAmazonのこうした投資が報われるようになるでしょう」(ウィッチャー氏)

Amazonが提供する自動化サービスのイメージ
Amazonが提供する自動化サービスのイメージ

サービスの一環で提供している配送を、外部の事業者にアウトソーシングし始めていることからも、Amazon経済圏の広がりを理解できるでしょう。(ウィッチャー氏)

ウィッチャー氏は「Amazonはこれまでにサプライチェーンのインフラを整えてきたので、すでに後戻りできないコストをかけている」と言います。

AmazonのSaaSが中小企業の販売をサポート

ウィッチャー氏は、Fulfilment by Amazon(FBA)は多くの販売者にとって有益なサービスだと説明。Amazonへ出品する中小事業者が抱える課題を解消することにつながっていると言います。。

「とにかくWebページを作成したり、商品の写真を撮影をしたい」から小売業を始める事業者はいません。商売を始める理由はあくまでも「商品を販売して収益をあげたいから」。これが重要なポイントで、Amazonはそうしたニーズを理解している。サードパーティーの販売者がAmazonのサービスを利用するメリットをより多く提供するために、FBAを展開しているのです。(ウィッチャー氏)

Amazonのエコシステムで業務効率+売上アップ

「Amazonは、個人運営や小規模の企業はWebページや商品画像を作成する時間や必要なテクノロジーを必ずしも持ち合わせていないことを理解している」(ウィッチャー氏)。そのため、生成AIサービスはこうした課題を解決する手段となり得ます。

生成AIはもっと注目されるべきです。革新的なテクノロジーを使うことにより、在庫計画やルート計画において、サプライチェーンへのROI(投資利益率)を最大化するために必要な業務を効率化できます(ウィッチャー氏)

生成AIの活用による業務効率アップのイメージ
生成AIの活用による業務効率アップのイメージ

Amazonで生成AIが使用できるようになったことで、販売事業者は作業時間の短縮化、最新テクノロジーの活用などのメリットを得ることができます。ウィッチャー氏は「これには複合的な効果がある」と指摘します。

すでにAmazonで販売しているのであれば、Amazonにサプライチェーンをアウトソーシングしたり、自社のECサイトにAmazonが提供する決済サービス「Amazon Pay」を導入した方が事業運営がより簡単になります。

このように、Amazonが提供するサービスに価値を見いだし始めると、そのエコシステムに深く入り込んでいくことになるのです。(ウィッチャー氏)

また、他のマーケットプレイスと比較して、Amazonの生成AIが「差別化要因になることは間違いない」とウィッチャー氏は言います。しかし、同時に「他の小売事業者たちもAmazonに追随してくるでしょう」(ウィッチャー氏)と補足しています。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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