瀧川 正実 2015/3/3 8:00

2011年に靴のECからスタートしたロコンドは現在、ファッションや化粧品など、さまざまな商材を扱うECサイトに成長。これまで累計34億円を調達し、規模拡大を続けている。めざすはEC売上高1兆円企業。そのための経営方針として、2015年は「新カテゴリ」「物流改革」「海外」といった新たな取り組みに着手する。

“ECは結局のところ「小売」”キーワードは「消費者目線での原点回帰」

ロコンドの田中裕輔氏
田中裕輔氏

――2015年のEC市場は前年(2014年)と比べてどのような環境になると考えていますか?

EC市場は今後も成長し続ける。これについては議論の余地はないところでしょう。特にここ2~3年で言えば、「スマホの台頭によるインターネットのポータブル化」によって、ECの存在感はますます強くなってきました。

そのなかで今年のキーワードを1つあげるとすれば、「消費者目線での原点回帰」と考えます。新たな技術が生まれると、EC市場においてもさまざまな流行語が生まれました。たとえばオムニチャネルやビッグデータ、もしくはセレンディピティやサブスクリプション。

そのような流行語に「とりあえず乗っかった」ECサイトも多かったですね。しかし、そのなかで、売り上げや利益という「実」につなげた企業は少なかったのではないでしょうか

インターネットの世界ではどうしても新たな技術や流行に目を奪われがちですが、ECは結局のところ「小売」なのです。その意味ではリアル店舗でもECでも「消費者が欲しい商品」が揃っているのは大原則です。たとえ、華やかな内装の店舗を一等地に出店し、膨大なデータに基づく科学的な接客をしたとしても「消費者が欲しい商品」がなければ売れるはずもありません。

さまざまな流行も一巡し、2015年からは真剣に「消費者目線」で商売のできる企業と、そうでない企業の差が一層顕著になるのではないでしょうか。消費者目線で“欲しい商品”があれば売れるし、その商品がなければ売れません。

今年はその大原則への「原点回帰」の1年となる、と考えています。

――今後、成長を持続していくためにはどんなことが必要だと考えますか?

成長に欠かせない1つ目の要素は「お客さまが欲しい商品」です。2011年、靴の通販サイトとしてローンチしたロコンドは、「靴」カテゴリにおいては700ブランドを取り扱い、国内最大級の品揃えを提供できる体制です。

しかし、お客さまが欲している靴が100%販売しているかと言えば、そうではない。アパレル(洋服)カテゴリに関しては、「まだまだこれから」というのが率直な評価です。ブランドさまやメーカーさまの意見に耳を傾けながら「品揃え」強化はこれからも注力していいきます。

2つ目は「試着の磨き込み」です。これまで、国内のEC化率を伸ばすために最大のボトルネックとなっていたオンライン上では、消費者が「本当に欲しい商品」なのかどうか判断できないことにありました。写真で見る限りは欲しいものの、実際に実物を「目で見て触ってみないとわからない」「ファッションは試着しないとわからない」というのがECにとって大きな課題でしょう。

1つ目の「品揃え強化」と並行し、当社の最大の差別化要素でもある「試着の磨き込み」も成長のためには欠かせない。現状、すべての商品が「送料無料、30日間返品(返送料)無料」で購入できるファッション通販サイトは、大手のなかでは“ウチ”だけですから。

国内EC化率を向上させ、市場を活性化していくためにも「通販サイトでの試着」をもっと便利に、もっと気軽にできるよう、日々、改善を積み上げていきたい。

――2015年、貴社ではどのようなことに取り組みますか?

上記の2つの「大原則」とは別に、今年は3つの大戦略に着手します。これらはロコンドが掲げる、2015年から2017年の中期戦略における「3本の矢」と位置付けています。

1つ目は「新規カテゴリ強化」。2011年に始めた靴やバッグは、売り上げ、品ぞろえという側面でも「太い幹」になってきました。しかし、2013年に始めたアパレルや2014年スタートのアウトレット(LOCOLET)は、まだまだ「育成中」フェーズです。

2015年はこれらに加えて、ホームファッション、化粧品、そして、スポーツ用品という3つのカテゴリの「種まき」にも着手しますロコンドが創りたい世界はただ1つ、「何でも送料無料・30日間返品無料で気軽にお試しできる通販サイト」です。そのためには、これらの新規カテゴリに関しても果敢に攻めていきたい。

2つ目は「物流改革」。2015年中に当社の倉庫は4400坪に増床することが決まっています。そんななか、次に着手しなければならないのが倉庫業務の改革です

当社の同業他社である米国Zapposは約5年前、倉庫内業務のオートメーションを開始したのに比べると、国内EC倉庫は大手を含め、まだまだ人海戦術に頼っている面が大きいです。この領域においても国内リーディングカンパニーとなるべく、今年から具体的な検討に着手する。

3つ目は「海外販売」。円安の影響もあって日本のファッション商品の海外需要は上昇トレンドです。しかしながら、単にサイトを英語ないしは中国語化して海外に商品を配送するだけでは面白くない。また、それが大きな需要喚起にはならないでしょう。

靴の通販事業において、「試着」という概念を持ち込んだロコンドならではの海外サイトを、今年中にはお披露目するつもりです。

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