ついにロコンドが単月黒字を達成。黒字転換を遂げた5つのポイント
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靴などのECを手がけるロコンドは2015年10月度、月次ベースの収益が黒字転換した。田中裕輔社長がキーポイントにあげていたのが「年間売上高100億円が損益分岐点」。10月度は月商9億円を突破し、月次ベースで営業利益、経常利益、純利益ともに黒字化を達成。2015年12月~2016年2月期(第4四半期)は最終黒字を見込む。
単月黒字化に要した年月は創業から約5年間。日本版ザッポスとして注目を集めたロコンドは、黒字転換を機にさらなる規模拡大のフェーズに移る。来期(2017年2月期)は通期での最終黒字を予想。めざすはこの先5年後、2020年に売上高1000億円、営業利益率10%だ。
「黒字化なんてできない」と揶揄されたロコンドのビジネスモデル
業界では「そんなサービスで黒字化なんてできるはずがない」と、噂されることも少なくありませんでした。
ついに単月黒字化を達成したロコンド。田中裕輔社長は月次ベースでの黒字転換のリリースに際し、このように過去を振り返る。
「全品送料無料、99日間返品OK(現在は30日間)」(※)などのサービス提供で本格的にサービスをローンチしたのは2011年2月のこと。返品コストがかさむビジネスモデルのため、ロコンドの企業存続に懐疑的な業界関係者は少なくなかった。
※2015年12月1日から返品期間は21日間に変更
ロコンドのビジネスモデルは米国ザッポスを意識したもの。端的に表すと「顧客サービス至上主義型のECサイト」だ。ロコンドはザッポスが展開している「送料無料」「返品無料」などを取り入れた。田中社長はロコンドのビジネスモデルを次のように説明する。
商品価格を他社と同等、または、それ以下に抑えながら、「試着できる通販サイト」として送料無料・交換無料・返品無料という3つの無料サービスをすべてのお客さまに提供してきた。
ちなみに、ザッポスは2006年まで赤字経営が5年間も続いた。創業者のトニー・シェイ氏の著書「ザッポス伝説」によると、自身が自宅以外の資産を売却するなどして、幾度の経営危機を乗り越えた。赤字の主な要因は返品コストにあった。
通販業界では、企業側の販売しにく商材の1つとして「靴」をあげることが多い。それは、メーカーによって微妙に幅が異なるなど、サイズ合わせが難しいためだ。そのため、返品リスクが高くなり、収益を圧迫する要因となる。
ロコンドもザッポス同様、返品コストや送料を自社で負担した。「買ってから選ぶ」という日本では新しい「靴」の購入スタイルを提唱したが、2012年2月期はテレビCMへの投資などもかさみ、約15億円の純損失を計上。その後も3期連続で5億円以上の最終赤字が続いた。
だが、田中社長は従前から、損益分岐点は「年商100億円前後」と想定していた。規模拡大による黒字化達成を実現しようと、さまざまな試みに着手する。バッグ、雑貨、スポーツ用品、アパレルなど、数年で「靴」の通販・EC会社から総合ECサイトに変遷を遂げた。
EC事業のほか、自社ECサイトの支援事業、店舗運営企業のオムニチャネル支援などにも着手した。事業基盤は現在ECサイト事業のほか、EC支援などのプラットフォーム事業、商品同梱チラシ広告などのメディア事業といった3本柱で構成している。
こうしたことを含め、ロコンドが単月黒字化を達成した主な要因として次の5点をあげた。
- UI/UX、梱包、問い合わせ対応に至る全プロセスを「お客さま目線」で改善。リピート率が80%を突破
- 靴以外の商品(バッグ、洋服、アクセサリー、スポーツ)の売り上げが増加し、年間購入額が20%増加
- ファッション誌STORYとのコラボ企画を通じ、プライベートブランド「Plus BY Coco Cicci」の売上高が増加
- 全部門でBPR(Business Process Reengineering、ビジネス・プロセスを見直し抜本的に設計しなおすこと)プロジェクトを実施し、社内生産性が20~30%改善
- 外部広告費用を徹底的に効率化し、その削減効果を消費者に対してクーポンやポイント、割引として還元
次の目標は年商1000億円、営業利益率10%の達成
2015年2月期に約75億円だった売上高(出荷高ベース)は今期(2016年2月期)、100億円を突破する見通し。来期(2017年2月期)には通期での黒字転換を見込んでいる。
会社としてはあくまでスタート地点に立ったに過ぎません。今年度は1つのマイルストーンでもあった「年商100億円(出荷高ベース)」も達成する見込ですが、これも通販サイトとしてはまだまだスタート地点。
次の目標は年商1000億円、そして営業利益率10%の実現です。創業5年で100億円を実現できたロコンドなら、次の5年で年商1000億円を実現することは決して不可能ではないと強く信じています。「2020年度、1000億円」の大きなインパクトをめざし、既に、チーム・ロコンドは走り始めています。(田中社長)