酒匂 雄二[執筆] 8:00

2025年も球春到来の3月になりました。この季節になると思い出すのは、2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝前に大谷翔平選手が言った「憧れるのをやめましょう」という言葉。EC事業者さんに何度でもお伝えしたいのは、「SEOは検索1位を取ることが目的ではない」ということ。検索1位はかっこいいけれど、憧れるのをやめましょう。それよりもやるべきことがあるはずです。

「あのサイトが1位を獲れる理由がわかりません。なぜうちが1位じゃないんですか?」

セミナー登壇時の質疑応答やユウキノインへのお問い合わせで、毎月必ず何件かあるのがこの質問です。

それは漫画などでよくある、「なんであいつなんだよ! 俺のどこが駄目なんだよ! こんなにお前のことを思っているのに!」ということに似ていませんか? 確かに完全に公平とは思えない検索エンジンの実情ですが、それも「ほら、相性とかあるでしょう?」と思っています。

SEOやサイト支援の相談を受けた際、当然まずはサイトを見るのですが、店名や社名で検索すると、手つかずの企業サイトがECサイトよりも上位に表示される事業者さんも少なからずいます。

それなのに、企業サイトからECサイトへの導線が一目でわからず、更新頻度が低くフォロワーの少ないSNSのアイコンが特等席に鎮座している。また、ある程度シニア層向けのECサイトのはずなのに、メニューを英語で記載し、そこに何があるのかが不明瞭。なかには「ハンバーガーメニュー」が背景に溶け込みすぎていて、一瞥しただけでは気づかないというケースも。

そうしたサイトオーナーのなかには「制作会社におまかせした」と言うこともしばしば。でもこれは制作会社が悪いわけでもオーナーが悪いわけでもなく、「EC立ち上げ当初にお客さんのことがまだわかっていなかった」ことに起因していることも。

ECサイトを運営するなかで積み上げてきた経験値や、ユーザーの声を反映してお店を育てていくことが大切です。

今後、多くのECサイトの顧客になりうるデジタルネイティブの検索行動を知るだけでも、少し見えてくるものがあるかもしれません。

デジタルネイティブの行動で学ぶ、いまどきのSEO対策 | ForbesJAPAN
https://forbesjapan.com/articles/detail/77291

10代の若者たちは、検索エンジンをどのように使い熟しているのだろうか。彼らでさえ、目指す情報を一発で検索できているわけではない。だが、それでイライラすることもなく淡々と検索を行う。そこには、デジタルネイティブならではの理由があった。

物心ついたときからスマホが身近にあるであろう10代も、一発で目的を達成できているわけではないようです。

「10代は初期の単語検索から複数ワード検索へと展開しながら、自分に合う情報を見つけるべく粘り強く行動している」とし、SEO対策としては多面的なキーワード設計と検索意図の把握が重要になる

「タイパ」「コスパ」重視と言われる10代も、意外と粘り強くクエリを展開しながら検索していることが伺えます。

私がSEOをお手伝いするにあたり、直帰率はほぼ気にしません。

仮に直帰率100%でも、そのページのエンゲージメント率が高く、滞在時間が長ければ「読み入ったのではないか」と仮説を立てられます。しかし、検索上位にインデックスされ、流入を多く獲得できても、滞在時間が伴わない直帰の場合は、別の要因がありそうです。また、「思っていたのと違う」「長くて読む気がしない」「画像が大きくてまったく読み込まない」などは離脱と言えそうです。直帰と離脱は違いますね。

そこでの体験が満足するものであれば、ユーザーの検索語句は変わるはずです。たとえば「スニーカー 選び方」で検索してきて、「なるほど、10代の今のトレンドはこれか。Aというブランドは知らなかった」となれば、次は「A サイズ感」「ブランドAとB サイズ 違い」「A 幅広」などになり、それで購買意欲が高まれば「A 通販」「A 取扱店 渋谷」などを入力。お気に入りのシリーズがみつかれば、そのシリーズ名を入れるでしょう。そうして、ユーザーのクエリをピボットさせることができれば「ヘルプフルコンテンツ」と言えるのではないでしょうか。

「ブランドA」というクエリでメーカーに敵うはずもありません。だからこそ、Aを起点にコンテンツを作り、自社サイトというターミナル駅へのアクセスを強化できるバス停を立てて回り、ユーザーが「商品やサービスを購入しよう」と思ったときに、自社を想起してもらえるきっかけになる「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」を増やすというイメージが、私の考えるSEOのアプローチです。

あわせて読んでおきたい記事も紹介します。

数字に“とらわれる”マーケターの現代病 「普通のことを普通に考える」だけでいい | ITmedia ビジネスオンライン
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2502/03/news062.html

一番重要なのは「顧客の声を聞くという、そんな当たり前なことが、”なぜできないのか?”という構造的な理由を把握すること」と「常に業務の中で意識すること」

私も同意です。自分が使わない商材を扱っていればなおさら「わからなければお客さんに聞けばいい」と考えています。ただ、お客さんの声を聞くのは良いことですが、「言うことを聞きすぎる」ことのないように注意しましょう。豪華なリワードのあるアンケートでは、お客さんは時に「優しい嘘」をつくこともあるからです。

検索1位に固執するよりも、迷えるユーザーを導く回答をどれだけ持っているか、ユーザーの声をどれだけ多く聞き、安心感や信頼感を打ち出せているか。それこそが真に最適化できているサイトではないかと思います。

検索1位に憧れるのをやめましょう。まずはサイトでの体験と品質向上をめざして下さい。

要チェック記事

google検索品質評価ガイドライン【2025年1月23日 日本語訳】 | copyright-jp
https://copyright.ne.jp/general_guidelines.html

2025年1月23日づけで更新されたGoogleの「検索品質評価ガイドライン(General Guidelines)」では、AI生成コンテンツの評価に関する「労力」や「言い換え」について、詳細に言及されています。清く正しく美しくAIを活用していきたいですね。

イマドキのSEOに被リンクは不要? 100万件のSERP分析で判明した真実に刮目せよ【SEO情報まとめ】 | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/e/2025/02/07/48605

この手の話で必ずつきまとうのが「因果と相関」ですね。即効性がない・絶対ではないことが多いというのを承知した上で、SEOにも取り組みたいところです。

2025年のSEOトレンドを専門家23人が予測: AI、多角化、グーグル次の一手(前編) | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/e/2025/01/27/48473

ここでもAIの話題は不可避。今回更新されたGoogleのガイドラインを見ても、"人"にフォーカスされそう。前後編ありますのであわせてどうぞ。

AI Overview対策として、まことしやかに囁かれていること | note | 松下聡太郎
https://note.com/green_pepper/n/nfe45216acc63

「AIによる概要(AI Overview)をハックします」という営業も見聞きするようになりました。でも「現状、AI Overview対策には明確なハックはなさそうです」だと思います。この手の「消防署からきました商法」はいつまでもなくならないものですね。

Googleトレンドとは?ビジネスの意思決定に効果的に活用する方法 | Shopify Japan
https://www.shopify.com/jp/blog/trends-google

ShopifyによるGoogleトレンドの解説。非常にわかりやすく全EC・SEO従事者におすすめしたいです。 私は2020年1月に起業し、直後にコロナ禍に。不透明な状況が続くなか、今とこれからを考える上でGoogleトレンドには本当に助けられました。

今、みなさんにお伝えしたいこと

【投票結果 1~27位】スヌーピー名言ランキング!ピーナッツファンが好きなセリフは? | みんなのランキング
https://ranking.net/rankings/best-snoopy-meigen

僕のことを好きじゃない誰かさんのことでくよくよする必要はないのさ。僕は、僕を大好きでいてくれる人を大好きでいるのに忙しすぎるから。 / スヌーピー

「豆腐メンタル」を自負する私が落ち込んだ時に救われるのが、「スヌーピー」でおなじみ、チャールズ・モンロー・シュルツ氏の漫画『ピーナッツ』内の言葉です。対人関係を築くのが下手だと感じることが多く、くよくよすることが多いので、その度にこの言葉を思い出し、前に進む力になります。

「大好きでいてくれる人を大好きでいるのに忙しすぎる」は、EC運営にも通じることがあるなと感じています。

最近ではセミナー登壇時やECの交流会などでも「ネッ担見ています」「まとめ読んでいます」という感想をいただくことも増えてきて、本当にうれしい限りです。そうしたお声は「皆さんに役立つ情報をお届けしたい」という原動力になりますので、どこかで見かけたらぜひ声をかけて下さい。

それではまた次回! 酒匂(さこっち)の「ネッ担ニュースまとめ」をよろしくお願いいたします。

ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

UdemyでECマーケティング動画を配信中です。こちらもあわせてご覧下さい。

ユウキノインは寄り添い伴走しながら中小企業・ECサイトのSEOからコンテンツマーケティング、プレスリリースやクラウドファンディングなど集客・販促・広報をお手伝いする会社です。詳しくはユウキノインのホームページをご覧ください。

Designequationは何かに特化したサポートではなく、モール・ベンダー選定や広告・CSなど各企業に合わせたカスタマイズ型の運用サポートを行っています。

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