Amazonが通販業界トップに躍り出た2000年代後半。ECの台頭で老舗カタログ通販は苦境の時代へ
2000年代後半になると、Amazonを筆頭に新興EC事業者が台頭した。異業種のネット通販参入も増加。EC市場が急速に拡大する中、事業者間の競争も激化し、紙媒体を中心とした老舗通販は苦戦を強いられた。
2005年(平成17年) EC市場規模3.5兆円、その後4年で約2倍に拡大
経済産業省がまとめた統計によると、2005年の企業消費者間(BtoC)のEC市場規模は約3兆5000億円だった。2009年には市場規模が約6兆7000億円へと成長。2000年代後半の4年でEC市場は2倍近くに拡大した。
ユナイテッドアローズなどアパレルメーカーがECを本格化
ECに新規参入する企業が増える中、アパレル大手の参入が目立った。2005年にはユナイテッドアローズやベイクルーズがECを開始。翌年以降も東京スタイル(現、TISホールディンス)、ポイント(現、アダストリア)、DoCLASSE(ドゥクラッセ)、オンワードなどがネット通販を開始している。
2003年にファッション専門モールのMAGASEEK(マガシーク)が、2004年にZOZOTOWNが登場したことも追い風となり、アパレルEC市場は急速に拡大していった。
かつての覇者・セシールをライブドアが買収
EC市場の拡大と新興企業の台頭に伴い、老舗カタログ通販は苦戦を強いられた。
1980~90年代の通販業界で長らく売上高トップに君臨したセシール(現、ディノス・セシール)は、1997年の年商2,084億円をピークに売上高が頭打ちに。2005年には年商が約850億円に減少し、当時IT業界の新興企業として注目を集めていたライブドア(現、LINE)によって買収された(セシールはその後、ディノス・セシールとなり、2017年8月現在はフジ・メディア・ホールディングスの100%子会社)。
この時期、ニッセンや千趣会、ムトウ(現、スクロール)といった他の大手通販の成長率も、1990年代と比べて鈍化している。
スカルプD、ヒルズダイエット、ラフィネパーフェクトワン、ビリーズブートキャンプなどが誕生
2000年代後半も通販業界では多くのヒット商品が誕生した。2005年にアンファーが頭皮ケアシャンプー「スカルプD」を発売。2006年にはオークローンマーケティングの「ヒルズダイエット」や新日本製薬の「ラフィネパーフェクトワン」が発売された。
米軍の訓練をベースにしたエクササイズDVD「ビリーズブートキャンプ」(2007年)もテレビショッピングを中心に一世を風靡した。
2009年(平成21年) Amazonが初めて国内通販売上高で首位。通販業界の勢力図は一変
EC市場が拡大する中、通販業界で台頭したのがAmazonだった。通販新聞が集計した通販売上高ランキングによると、Amazonは2009年の通販売上高が2510億円となり、初めて国内首位に立った。
同年の通販売上高ランキングの上位10社には、BtoB通販のアスクル、ミスミ、大塚商会、テレショッピングのジャパネットたかた、ジュピターショップチャンネルなどがランクイン。カタログ通販が席巻した1990年代と比べ、上位勢の顔ぶれは大きく変わっている。
サイバー攻撃による情報流出が問題化
2000年代後半になると、ECサイトへのサイバー攻撃による顧客情報の流出が深刻化した。2005年にはワコール、2008年にはミネルヴァ・ホールディングスのECサイトがサイバー攻撃を受けている。その後も通販業界では、ECサイトへの不正アクセスによる情報流出が頻発。セキュリティー対策が業界の課題となっている。
INDEX
黎明期 1800年代後半 | 開花期(1)1890年代〜1910年代前半 | 開花期(2)〜終息期 1900年代〜1940年代 | 復興期〜始動期 1950年代〜1960年代 | 興盛期 1970年代 | 特化型通販期 1980年代 | カタログ通販全盛期 1990年代前半 | ネット通販勃興期 1990年代後半 | EC興盛期 2000年代前半 | 競争激化期 2000年代後半 | スマホEC勃興期 2010年代