渡部 和章 2017/6/27 8:00

1990年代前半はカタログを中心とした総合通販大手が成熟機を迎えた。当時の業界最大手、セシール(現ディノス・セシール)が通販会社として初めて年商2,000億円を突破したほか、千趣会、ニッセン(現ニッセンホールディングス)、ムトウ(現スクロール)など通販大手が躍進。ネット通販の本格的な普及を目前に控えたこの時期、カタログ通販は最盛期を迎える。

1992年(平成4年)セシールの売上高が2,009億円突破

1986年から業界首位に君臨していたセシール(現ディノス・セシール)は、1992年3月期の売上高が前期比7.4%増の2,009億円となり、通販業界で初めて年商2,000億円を突破した。売上高は直近6年で約2倍に拡大。業界2位の福武書店(現ベネッセコーポレーション)を700億円以上引き離し、圧倒的な存在感を見せつけた。

1	セシール	200,974	7.4 2	福武書店	129,090	6.0 3	千趣会	122,520	20.1 4	ニッセン	77,800	23.9 5	シャディ	76,642	5.4 6	高島屋	65,500	-4.0 7	ムトウ	62,603	─8	フジサンケイリビングサービス	57,750	※	5.0 9	三越	50,371	8.8 10	シムリー	45,818	27.2 11	フェリシモ	40,000	※	7.5 12	総通	34,000	※	6.2 13	大丸ホームショッピング	30,450	22.6 14	フレンドリー	28,884	42.0 15	CBS・ソニーファミリークラブ	29,200	6.5 16	ベルーナ	29,007	16.5 17	日本通信教育連盟	28,000	※	7.6 18	セゾンダイレクトマーケティング	25,000	4.2 19	日本文化センター	24,800	10.7 20	二光	24,280	10.8 21	上新電機	24,110	16.0 22	ミスミ	24,026	13.2 23	リッカー	22,100	-13.0 24	日経BP社	19,517	※	5.5 25	ファンケル化粧品	17,873	35.4 26	美光	17,500	2.9 27	住商オットー	17,100	33.6 28	ジャスミ	17,000	24.5 29	カタログハウス	15,938	21.7 30	ベスト電器	15,000	0.0

セシールは80年代中盤からメーンターゲットを職場単位から個人客へとシフト。個人客の増加に対応するため、受注や顧客管理のシステム化を進め、売上拡大の基盤を作った。80年代後半から全国紙や地方紙など新聞広告を大々的に展開し、売り上げを大きく伸ばした。

成長スピードの速さはカタログの発行部数の推移からも見て取れる。発行部数は87年に1,000万部を超え、1994年秋冬号は合計6,815万部に達している。

この時期、他の通販大手も軒並み売り上げを伸ばした。1994年度の売上高は千趣会が前期比16.0%増の1,575億円、ニッセンは同28.8%増の1,310億円、シャディは同3.7%増の842億円、ムトウ(現スクロール)は12.2%増の716億円となっている。

1	セシール	186,319	-10.0 2	千趣会	157,557	16.2 3	福武書店	149,222	12.0 4	ニッセン	131,000	28.8 5	シャディ	84,208	3.7 6	ムトウ	71,689	12.2 7	フジサンケイリビングサービス	53,253	6.1 8	高島屋	51,827	-12.6 9	三越	49,404	2.5 10	シムリー	47,129	-6.5 11	フェリシモ	46,000	※	2.2 12	日本通信教育連盟	43,000	14.4 13	総通	37,000	※	2.8 14	フレンドリー	36,905	30.7 15	ベルーナ	36,484	20.9 16	日本文化センター	31,767	10.5 17	大丸ホームショッピング	30,642	-1.6 18	ソニー・ファミリークラブ	28,400	-7.8 19	住商オットー	26,647	35.1 20	セゾンダイレクトマーケティング	25,000	0.0 21	ファンケル	24,044	20.5 22	上新電機	22,000	-5.2 23	カタログハウス	21,200	21.1 24	ミスミ	20,993	-3.5 25	二光	20,244	-14.8 26	日経BP社	19,330	-1.0 27	ジャスミ	19,250	10.0 28	ベスト電器	17,000	6.3 29	フォーベル	16,829	13.4 30	フレンズ・オブ・フリージア	16,400	0.6

1990年のバブル崩壊後、日本のGDP成長率が1%以下に低迷する中、通販の成長力は業界内外から注目を集めた。

1993年(平成5年)オークローンが創業、翌年にはジャパネットもテレビ通販を開始

テレビショッピングを主体とする企業も誕生した。オークローンマーケティングが1993年に創業したほか、翌94年にはラジオショッピングを手がけていたジャパネットたかたがテレビショッピング事業を開始。総合通販のメディア(現はぴねすくらぶ)も同時期にテレビショッピング事業に乗り出している。

「テレビで大変なのは、番組の枠を獲得することです。そう簡単には取れないんですよ。スタート当時はいまほどの知名度もありませんから、企業としての信用の面でハードルがありましたね」

しかし、高田社長は持ち前のバイタリティで60秒や90秒枠を手に入れ、テレビ番組制作に着手していった。

「60秒とか90秒の番組って、ものすごく高いスキルが要求されるんですよ。でも、それを一年続けたんですが、どうしてもうまくいきませんでした。ちょうどその頃、深夜番組で“テレコンワールド”という、のちに一世を風靡した通販番組がはじまりましてね。当時、深夜のテレビといえば砂嵐だけだったのが、そこに通販番組を入れるようになったら“テレコンワールド”みたいな成功事例が次々と出はじめたんです。それで、わたしも30分番組を作りたくなったんですよ」

テレビ番組には、さまざまなノウハウが必要である。高田社長は東京に足を運び、マンションの一室を借りてハウスエージェンシーを設立。当時は佐世保から東京や福岡へ頻繁に出張していたという。

(中略)

「ラジオの次はテレビと計画していたわけではありません。テレビをはじめて毎日発信する必要があったから、自分たちで自由に使える自前のスタジオをつくったわけです」

─『ジャパネットたかたのすべて』(発行:モーターマガジン社、2008年)「高田社長に訊く!」より

健康食品のヒット商品が続々誕生

健康食品ジャンルのヒット商品も目立つ。

1990年10月に放送が開始された「まず〜い、もう一杯!」のフレーズを使ったテレビCMが話題になり、キューサイの青汁が大ヒット

キューサイ 青汁のCM1キューサイ 青汁のCM2
キューサイの青汁を有名にした「まず〜い、もう一杯!」のCM。このセリフは、出演している俳優の八名信夫さんのアドリブだった。
写真提供:キューサイ株式会社

1993年には、やずやが初のオリジナル商品「養生青汁」を発売したほか、健康家族が「伝統にんにく卵黄」を発売するなど、現在も販売されているロングセラーシリーズが誕生した。

1994年(平成6年)通販市場が2兆円を突破

通販の国内売上高は1994年に2兆円を突破した(出典:JADMA「通信販売企業実態調査」)。市場規模は10年で3倍以上に拡大。1987年に1兆円を超えてから、わずか7年で2兆円に到達した。

◇◇◇

そして翌年の1995年、3月に米国でYahoo.comが誕生し、7月にはAmazon.comもオープンする。同年11月に日本でWindows95が発売されると、国内でインターネットが一気に普及し、通販は「ネット通販勃興期」へと突入する。


参考文献

『通販業界・セシールひとり勝ちの魔術』(著:鈴木麻由美 刊:エール出版、1993年)

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