日本に通信販売が誕生して今年で140年! 最初の通販商材は「トウモロコシの種」
日本の通販は「植物の種」から始まった。1800年代後半、郵便制度の開始をきっかけに、農業界が通販市場を切り開いていく。その後、老舗百貨店が遠方の顧客への販路として通販に乗り出した。
1876年(明治9年) 日本初の通販誕生
日本における通販の歴史をさかのぼると、1800年代後半の種苗販売に行きつく。
1876年に農学者の津田仙が、『農業雑誌』(学農社雑誌局発行)で植物の種を販売したことが国内初の通販とされている。
その後、種苗業者が遠方の農民に種苗を販売する手段として通販が広がっていった。
種苗業者の中には、海外から輸入した種苗をメールオーダーで販売するケースもあった。
当時の決済手段の大半は現金前払いだったため、一部の業者が広告とは別の商品を送りつけたり、粗悪品を販売したりして問題になることもあったとされる。
右側中央に「我が国のトウモロコシは、米国産に比べて甘さで大きく劣る。このたび弊社より米国産のトウモロコシの種を販売する。希望者は1袋10銭の郵便印紙を同封してご注文いただきたい」という意味のことが書いてある。この4行が日本初の通販広告。「農業雑誌」は日本の農業の近代化を推進し、44年に渡って刊行された長寿雑誌。
1882年には、高級貴金属店の天賞堂が懐中時計や調度品の通販を開始した。これが国内初の貴金属品の通販とされる。
1871年(明治4年) 郵便制度開始
通販が可能になった背景には、1871年に郵便制度が始まったことが挙げられる。約2年後には全国一律料金制度も導入され、1892年には小包郵便の取り扱いも始まった。
郵便広告や物流のインフラが生まれたことで、通販は新しい販路として成長していった。
農商務省博物局工芸課が柴田真哉(しんさい)という人物に依頼して制作した14枚の絵図のうちの1作。柴田は郵便局(当時は「郵便役所」)などで作業風景を写生して絵図を制作した。
1899年(明治32年) 三越と高島屋が通販事業を開始
1800年代の終盤になると、老舗百貨店が次々と通販を開始した。三井呉服店(現、三越伊勢丹ホールディングス)は1899年、通販事業を行う「外売係通信部」(翌年より「地方係」と改称)を設置し、高島屋も同年に通信販売部門の「地方係」を発足させている。
百貨店による通販は、地方や出張販売で獲得した顧客への販路として役立った。
「三井呉服店へ地方からお手紙でご注文を申し越されますときは、十分ご便利な方法ですぐにお届けをいたしまするゆえ、お好みのおもむきを詳しくお書き添えを願います」とある。手紙で希望する色柄やサイズを伝えると、商品が届けられていたと思われる。
地方からの注文が年々増加した背景には、地方の主要駅に貼り出した「美人画看板」が大きな役割を果たした。
1872年(明治5年) 米国で通販が誕生
海外における最初の通販は、米国のモンゴメリー・ワード社が1872年にメールオーダーで日用品を販売したこととされる。1886年には米国のシアーズ・ローバック社も通販を開始。
当時の米国におけるメールオーダーのビジネスモデルは、日本の通販にも大きな影響を与えた。
参考文献
『通販業界・セシールひとり勝ちの魔術』(著:鈴木麻由美 刊:エール出版、1993年)
『通信販売業界の軌跡』(編集・発行:日本通信販売協会、1990年)
INDEX
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