ECの舞台はPCからスマホへ。SNS、フリマ、決済などさまざまなアプリが登場【通販の歴史 2010年代】
2010年代の変化と言えば筆頭にあげられるのはスマートフォンの普及だ。便利なアプリが次々と登場するなか、EC事業者にとっては顧客の接点が増えることとなり、「オムニチャネル」という言葉が一般化した時代でもあった。
スマートフォンが一気に普及
モバイル社会研究所の調査によると、2010年時点、携帯電話やスマートフォンを所有している人のうち、スマホを所有しているのはたったの4.4%だったが、ユーキャンの新語・流行語大賞に「スマホ」がトップテン入りした2011年以降、それまで一部のガジェット好きのものだったスマホが広く一般にも普及し始め、2020年には88.9%まで増加した。
コミュニケーションはmixiからLINEへ
2010年代初頭、隆盛を誇っていたSNSはmixiだった。当時のユーザー数はおよそ2000万人。
しかし2012年にはFacebookがMAUでmixiを抜く。同じ頃、米FacebookはInstagramを10億ドルで買収した。Instagramによって「映える(ばえる)」という言葉が生まれ、2017年には「インスタ映え」が新語・流行語大賞を受賞した。2010年代も後半になるとTikTokが登場し、徐々に利用者を増やしていく。
2010年代にもっともユーザー数を伸ばしたのはLINEだ。LINEは2011年6月、「グループ会話サービス」としてネイバージャパンから誕生(LINEの社名は2013年から)。同年10月に無料音声通話機能とスタンプ機能を追加した。
いずれのアプリもコミュニケーションや情報発信のツールとして誕生したが、それぞれのユーザー特性に合わせて徐々に機能を追加し姿を変えていく。LINEは企業のマーケティングにも活用され、2017年6月には経由して買い物することでLINEポイントがもらえるLINEショッピングを開始した。2018年6月、Instagramは米国で同年3月から開始していたショッピング機能を日本でも開始した。
○○Pay戦国時代
2010年以前にサービスを開始していたドコモケータイ払いサービス(現、d払い)、ソフトバンクまとめて支払い、auかんたん決済などのキャリア決済に加え、2014年から2019年にかけては多くのID決済/コード決済サービスが誕生した。
- 2014年……リクルートかんたん支払い(4月)、Apple Pay(10月)、LINE Pay(12月)
- 2015年……Amazon Pay(5月)、Android Pay(9月)
- 2016年……楽天ペイ(10月) ※ID決済としての「楽天あんしん支払いサービス」は2008年10月〜
- 2018年……PayPay(10月)
- 2019年……メルペイ(2月)
2018年、ソフトバンクとヤフーの共同出資会社でPayPay株式会社が設立され、PayPayの提供を開始。12月に「100億円あげちゃうキャンペーン」を開始した。当初のキャンペーン期間は2019年3月末までだったが、10日間で終了するほどの盛り上がりを見せた。
PayPayは2019年2月からはYahoo!ショッピングとヤフオク!を皮切りにオンライン決済に対応した。同じ2019年2月にはメルカリがメルペイを開始。5月にはオンライン決済に対応している。
2019年10月、消費税が10%に引き上げられ、経済産業省による需要平準化対策として「キャッシュレス・ポイント還元事業」が始まった。キャッシュレス・ポイント還元事業は、消費税率引き上げ後の9か月間、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する事業。
同事業の結果について、一般社団法人キャッシュレス推進協議会は、「20代から60代の5割前後、10代と70代以上の3割程度が還元事業をきっかけにキャッシュレスを始めた」「還元事業参加店の46%は売上に効果があった」と発表した。
CtoC-EC市場の誕生
2013年にメルカリがサービスを開始。2018年までの5年間で日本国内で7100万ダウンロード、世界合計で1億800万ダウンロードと急成長した。
メルカリ以外のCtoC-EC動きとしては、2012年に誕生したフリルと楽天のラクマが2018年に統合された。ヤフーには1999年から続くYahoo!オークション(現、ヤフオク!)があるが、2019年10月にPayPayフリマを開始した。
2010年代のEC市場の動き
公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)の調査によると、2010年度の通販市場売上高は4兆4600億円、2019年度は8兆8500億円と、およそ倍に成長した。
通販新聞社がEC・通販売上上位300社の合計売上高を調査したでも、2011年12月時点では4兆57947億円で、8年後の調査では8兆5927億円だった。市場の成長はAmazonの成長によるところが大きい。
宅配クライシス
EC市場の拡大に伴い、宅配便の取扱い個数は2010年の32億個から2019年の43億個に急増した。物流業界ではドライバー不足が深刻化し、国土交通省では2015年から再配達の削減に動いた。
国と業界をあげて宅配ロッカーの設置や受け取り方法の多様化などを模索してきたが、2017年にヤマト運輸が労働環境の改善を理由に荷受量を抑制。後のいわゆる「宅配クライシス」に発展した。
この問題を受け、国土交通省では2017年10月時点で16%だった再配達率を2020年度までに13%程度までに削減する目標を立てた。2019年の再配達率は15%だったが、2020年は新型コロナウィルスの影響で8.5%に激減することとなった。
法改正と新制度のスタート
2014年6月、医薬品のECに関するルールを盛り込んだ改正薬事法が施行され、一般医薬品のネット販売が解禁された。これに伴いアスクルが第1類医薬品の販売を開始した。同年11月には薬事法の名称が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に変更され、「薬機法」と呼ばれるようになった。
2015年4月には機能性表示食品制度がスタート。事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性をパッケージに表示できるようになった。
2017年9月、医薬品等適正広告基準が改定され、不適正な広告表現が規定された。同年12月には平成28年改正特定商取引法が施行され、定期購入契約について、支払総額や契約期間などの販売条件を明記することが義務化された。これは顧客の意に反して売買契約の申し込みをさせようとする行為を禁止するものであり、背景には消費者庁に寄せられた相談件数の急増があった。
2010年代 そのほかのできごと
- 2010年(平成22年)ジェイド(現ロコンド)トゥ・ディファクトらが創業。「茶のしずく石鹸」問題発生
- 2011年(平成23年)イーベスト、プロビジョン、ファッション・コ・ラボなどがオープン。佐川急便が通販事業者向け商品引取サービスを開始。
- 2012年(平成24年) 資生堂、武田薬品工業、第一三共ヘルスケア、江崎グリコなどが通販参入。トランスコスモスが日本直販を完全子会社化。ヤフーがアスクルに出資(2015年に連結子会社化)。楽天がケンコーコムを子会社化、スタイライフに出資。日本アフィリエイト協議会発足。「BASE」「stores.jp」など無料のECサイト構築システムが登場
- 2013年(平成25年)リクルートライフスタイルが「ポンパレモール」開始。ヤフーが「Yahoo!ショッピング」の出店料を無料化。NTTドコモがマガシークを買収。ディノス・セシールがイマージュのファッション通販事業を取得。千趣会が主婦の友ダイレクト(現、ベルネージュダイレクト)を子会社化。ジャパンEコマースコンサルタント協会が発足
- 2014年(平成26年)セブン&アイホールディングスがニッセンホールディングスを連結子会社化。アイスタイルがビューティー・トレンド・ジャパンを完全子会社化。クックパッドがセレクチュアーを子会社化。ベネッセコーポレーションで大規模な個人情報流出が発生
- 2015年(平成27年)トランスコスモスがザッパラスのネット通販事業を買収。健康コーポレーションが夢展望を買収。第一三共ヘルスケアがアイムを買収。HNHPlayArtがSAVAWAY(現、NHNテコラス)を買収。スタートトゥデイがアラタナを買収。ベネッセコーポレーションによる大規模な個人情報流出が発生。日本通販CRM協会が発足。Amazon Payがサービス開始。LINE@オープン化
- 2016年(平成28年)オフィス用品のプラスがニッセンの家具通販事業とオフィス向け家具通のオフィスコムを買収。楽天がケンコーコムを完全子会社化。DeNAが運営する医療健康情報サイト「WELQ(ウェルク)」の記事を巡り、いわゆる「WELQ騒動」が発生
- 2017年(平成29年) Shopifyが日本法人Shopify Japanを設立。ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)発売。Amazonプレッシュスタート。Wowma!(現au PAY マーケット開始)。アスクルの物流倉庫で火災発生
- 2018年(平成30年)PayPayがサービス開始、ワークマンが「WORKMAN Plus」を開始
- 2019年(平成31年/令和元年)ヤフーを傘下に持つZホールディングスとLINEが経営統合を発表。キャッシュレス・消費者還元事業
INDEX
黎明期 1800年代後半 | 開花期(1)1890年代〜1910年代前半 | 開花期(2)〜終息期 1900年代〜1940年代 | 復興期〜始動期 1950年代〜1960年代 | 興盛期 1970年代 | 特化型通販期 1980年代 | カタログ通販全盛期 1990年代前半 | ネット通販勃興期 1990年代後半 | EC興盛期 2000年代前半 | 競争激化期 2000年代後半 | スマホEC勃興期 2010年代