中国EC大手のスゴイ物流・配送計画、ロボットや地下を走る専用リニアが荷物を運ぶ未来
中国最大手の小売企業で直販ECトップの京東集団(JD.com)が、壮大な無人物流・配送サービスの実現へ向けて動き出している。入庫からロケーション管理、出荷、配送などをすべて無人で実現。センター間の配送は車ではなく地下を走るリニアモーターを導入し、ライスとワンマイルは無人カート、ドローンなどを活用する――。こんな計画を進めているJD.comの無人物流・配送計画を取材した。
地下にも物流センターを作り、リニアモーターが荷物を運ぶ
JD.comは中国全土にわたって物流ネットワークを自前で構築している。「フルフィルメントの自前化・網羅性がネット通販の成長には重要」(JD担当者)と考えているためだ。子会社の「京東物流」が手がけるフルフィルメントサービスには、7万人以上の社員が携わる。
メーカーなどから商品を入庫し、保管、各拠点への商品配送やネット通販顧客の荷物を各拠点に送るメインの大型物流倉庫は中国全土で16か所に設置。配送拠点は中国全土に6905か所(2017年6月末時点)あり、そこに荷物を送る役割を担う物流倉庫は550か所(2018年11月末時点)も展開する。
こうした物流体制のゴールとして描いているのがテクノロジーを駆使した無人化体制。その中核を担うのが「地下物流パイプ輸送」「スマート地下物流センター」構想だ。
この2つの構想は、地下にも物流センターを作り、地上の物流倉庫、受け取り拠点となる配送拠点などを地下に作ったパイプでつなぐというもの。従来のトラック配送といった拠点間配送ではなく、リニアモーター式パイプ輸送で実現するという計画を掲げる。
このリニアモーター式パイプ輸送に関し京東集団は2018年6月、磁気浮上システム技術の米国マグプレーン・テクノロジー社(Magplane Technology, Inc.)と業務提携を締結。磁気浮上によるリニアモーター動力技術の研究を開始している。
ちなみに、配送拠点は配送センターのほか、JD.comが積極展開を進めている無人コンビニ、生鮮スーパー、提携している実店舗なども利用する方針。JD.comはオンラインとオフラインの融合を推進する「ボーダレスリテール」を推進しており、その融合を物流・配送面でも活用する。
自動化が進むJDの物流、ラストワンマイル
JD.ocmの物流、ラストワンマイルではすさまじいスピードでロボット活用、無人化が進んでいる。「地下物流パイプ輸送」「スマート地下物流センター」構想以外の業務では、ほぼ自動化、ロボット活用が浸透しているのだ。
たとえばラストワンマイルを担うロボットが「無人カート」。現在、大学構内や特区内で活用が進んでおり、ネット通販の荷物をロボットが配送している。
消費者が商品を購入すると、商品が入った「無人カート」が指定場所に自動で移動する仕組み。自宅やマンションの前に到着すると、購入者に「商品を取りに来てください」といったショートメッセージが届く。そのショートメッセージにはパスワードが記載されており、「無人カート」にパスワードを入力すると商品を取り出すことができる。
顔認証システムの導入も検討されており、顔を一度登録すれば、パスワードを入力せずに商品を受け取ることができるようになるという。
商品のピックアップからトラックへの積み込みといったネット通販向けの物流業務を、ロボットが処理する取り組みは2017年に始まった。ロボットがほぼすべての業務を担う専用物流センターを江蘇省昆山(Kunshan)に構えた。
商品のピッキングから梱包、トラックへの積み込みといった物流倉庫内の作業をロボットがすべて行う専用センターで、倉庫内にはロボットをコントロールしたり、運用・保守を行うスタッフが駐在している。
また、ドローン配送にも積極的だ。車などが通れない僻地に住む購入者などへの直接配送に加え、自社配送ステーションまで生鮮品をドローンで輸送する取り組みもスタート。京東は2015年12月にドローン開発に着手し、2017年からドローンによる物流を始めている。