楽天が2400億円を調達しモバイルへ投資。日本郵政、テンセントグループ、ウォルマートが出資
楽天は日本郵政、中国のテンセントグループ、ウォルマートを引受先とした第三者割当増資を実施し、約2400億円を調達する。
調達資金は楽天モバイルへの投融資資金に充当。2021年12月までに、第4世代移動通信システム(4G)普及のための特定基地局の整備、第5世代移動通信システム(5G)拡大のための特定基地局整備への設備投資に充てる。物流やモバイル、DX分野を中心に協業
約1500億円を出資(出資比率は8.32%)する日本郵政とは3月12日、物流、モバイル、DXなどさまざまな領域において連携を強化することを目的として、業務提携合意書を締結。主に物流、モバイル、DX(デジタルトランスフォーメーション)の分野で業務提携する。
物流においては共同拠点やドローン・UGV(自動走行ロボット)など次世代技術の共同開発、データを活用したデジタルによるオペレーション開発などで協業する。
モバイルでは、日本郵便が持つ郵便局ネットワークを活用する。楽天では、人口カバー率96%を2021年夏に実現する目標を掲げる。すでに400局の郵便局に基地局を設置しており、今後500局以上の展開を予定しているという。
3月9日に楽天モバイルの申込者数が300万件を突破したものの、ほとんどの申し込みがオンラインからという。基地局の設置だけでなく楽天モバイルのプロモーションでも協業を検討。郵便局内のスペースを活用した申し込みカウンターの設置、配達ネットワークを活用した広告宣伝、オフラインでの顧客獲得の面で協業を進めるという。
日本郵政のDX推進については、楽天グループからデジタル人材を派遣、オペレーションの改善やデジタル面での改善を楽天がサポートする。
そのほか、金融におけるキャッシュレスペイメント分野、ECにおける物販分野での協業を検討しているという。
今回の提携について、楽天の三木谷浩史代表取締役会長兼社長、日本郵政の増田寛也取締役兼代表執行役社長は次のように述べた。
楽天のようなベンチャー企業が、歴史ある日本郵政さんと戦略的パートナーを結べることは、世界でも類を見ない新しい提携パターンだと思う。
コロナ禍で今まで以上にDXが加速し、ネットがなくてはやっていけない時代に突入した。一方、地方をいかにエンバーメントするかが極めて大切になる。創業精神に立ち戻り、地方の経済をエンバーメントすることを今後も続けていきたい。
リアルとバーチャルの2つの大きな力が合わさって新しい形を作ることにワクワクしている。(三木谷氏)
資本提携を進めることにより、提携のレベルがより深まると考えている。どういう出資をしていくのかは、我々としても慎重にリスク・リターンを検討した上で判断したもの。
物流面での業務提携については2020年12月に発表済みだが、物流の中身についても業務効率化を超え、積極的により多くの荷物の利用者を増やす。 可能な限り日本郵便を使ってもらい、我々がお客さまに荷物を届けることで地域貢献をするための提携を考えている。
それに留まらず、金融やEC市場についてもより積極的な提携をしていきたい。(増田氏)
楽天、テンセント、ウォルマートの小売・ECグループ
テンセントは完全子会社Image Frame Investment(HK)Limitedを通じて約657億円、米ウォルマートは約165億円を出資する。
テンセントは中国EC大手の京東集団(JD)をグループ企業として抱えており、楽天は協業関係にある。JDの越境ECモール「JD Worldwide」への出店、ドローンやUGVの導入などで協業している。
楽天はテンセントとの資本関係を通じて、デジタルエンターテインメント、Eコマースなどでの協業を検討しているという。
ウォルマートと楽天は西友を通じた協業関係を構築。また、ウォルマートはテンセントへも出資している。
楽天と米国の資産運用会社であるKKRはウォルマートが保有する西友の株式について、KKRが65%、楽天が新たに設立した子会社「楽天DXソリューション」を通じて20%を取得。ウォルマートは西友の株式15%を継続保有する資本関係で、協業を継続している。