「逆境を進化に変える」。アスクル「復活特別企画」の狙いと中長期的な展望

ランサムウェア障害からの復旧を進めるアスクルが、BtoB向けにオリジナル商品500点以上を20%以上値下げする「復活特別企画」を実施。粗利率悪化を織り込みつつ業績回復を狙う

鳥栖 剛[執筆]

7:30

ランサムウェア攻撃によるシステム障害からの復旧を進めているアスクルが、BtoB向け通販で大規模な値下げ施策に踏み切る。事業所向け通販サービス「ASKUL」「ソロエルアリーナ」で、1月23日からアウトレット企画を皮切りに「復活特別企画」をスタート、1月30日からはオリジナル商品500点以上を20%以上値下げする。

「逆境を進化に変える」。アスクル「復活特別企画」の狙いと中長期的な展望
1月30日からはオリジナル商品500点以上を20%以上値下げする

アスクルは本施策を、システム障害によって迷惑をかけたことへのお詫びと、サービス再開を待っていた顧客への感謝を込めた取り組みと位置付けている。また、「逆境を進化に変える」(吉岡晃社長)としており、「今期中(2026年5月期)に顧客と売り上げを回復させ、来期に正常化を果たす」ための中核施策でもある。

BtoBは約7割、LOHACOは約9割まで回復

アスクルは、2025年6-11月期(中間期)決算説明会で、システム障害後の回復状況を明らかにしている。BtoB事業「ASKUL」の1月の月次売上は前年同月比69.6%と約7割まで回復。BtoC事業「LOHACO」は1月20日にサービスを再開し、再開直後の1月21〜27日の売り上げは前年同期比88.2%となった。

物流拠点は「横浜DC」を除き正常化しており、夜勤対応などによる体制補完も含め、全体の出荷キャパシティは従来比100%水準まで回復。「明日お届け」サービスも、足元ではほぼ平常化している。

在庫商品34万4000アイテムはすべて販売再開済みで、メーカー直送などのロングテール商品も含め、ほぼフルラインナップに近い状態まで戻している。

顧客別では、中堅・大企業向けの「ソロエルアリーナ」や、医療・介護、教育、官公庁など従来からの強み領域で回復が先行。商品別では、コピー用紙や文房具、日用品などの高頻度商材、アスクルオリジナル商品が回復を牽引している。

アスクルは、インフラや品ぞろえの「復旧フェーズ」から、売上・顧客数の「回復フェーズ」へと移行した段階だ。

「復活特別企画」、オリジナル商品500点以上を20%以上オフ

回復フェーズの中核施策となるのが今回の「復活特別企画」だ。

1月30日からはオリジナル商品500点以上を20%以上割引し、対象は需要の高いコピー用紙(数量限定)、ティッシュ、ペーパータオル、クリアホルダー、ミネラルウォーター、プラスチックグローブなど。年度末・新年度需要を見据え、オフィスや現場で日常的に使用される主力消耗品を中心に構成している。

このほか、賞味期限が迫った飲料・食品などを対象としたアウトレット企画も展開中だ。1月23日から約4000点を対象に、30%以上割引で提供している。

また2月下旬に「メーカー商品セール」、4月上旬に「まとめ割」を展開する予定としている。

単発ではなく「年度末ピーク」を見据えた継続販促

「復活特別企画」は、1月末の単発キャンペーンにとどまらない。アスクルでは、2〜4月の年度末需要期を見据えた継続的な販促戦略を描いている。

対象アイテムを段階的に拡充し認知施策も強化。3〜4月の需要ピーク期に売上獲得を重点的に狙う。

システム停止中に顧客が他社で代替購入し、在庫を抱えている可能性もある。そのため、2月のみの短期施策ではなく、2〜4月にかけた継続展開によって、在庫消化サイクルに合わせた需要回復を図る。

対象商品は、購買頻度が高く商品力のある主力商品を中心とし、コピー用紙や文具、生活用品などのオリジナル商品を軸に「アスクルで買う理由」を打ち出す。

粗利率への影響を織り込んだ「顧客・売上最優先」戦略

オリジナル商品を20%以上値下げすることで、短期的な利益率への影響は避けられない。アスクルは、粗利率へのマイナス影響は織り込み済みで、2026年5月期の最終利益にも影響が出る見通しとしている。ただ、「今期の最終利益よりも、顧客と売り上げの回復を優先する」との姿勢を明確にした。

中間期時点でも、「本気プライス」施策や低粗利商品の販売増によるプロダクトミックス変化で、粗利率への影響はすでに表れている。今回の施策は、その延長線上にある「攻めの値下げ」と位置付ける。アスクルは、今回の障害対応を「逆境を進化に変える機会」と捉えている。

アスクルによると、売り上げがほぼゼロとなった状態からの回復過程で、「どの顧客が、どの商品を、どのタイミングで求めて戻ってきたのか」が、データや顧客対応を通じて明確になったという。特に、オリジナル商品への強いニーズや、中堅・大企業顧客におけるエージェントの関与の重要性といった同社の強みが、改めて可視化されたとしている。

新規顧客獲得も視野に

今回の販促施策は、既存顧客の呼び戻しにとどまらない。購入実績のなかった顧客に対しても、価格訴求力のある商品を入り口に新規獲得を狙う。

今期末までに売上・顧客数の回復を図り、2027年5月期以降は「本気プライス」などを軸に持続的成長を目指す。中期経営計画(2029年5月期目標)も維持し、回復状況を見極めながら達成をめざす姿勢だ。

また、オリジナル商品の強化とサプライチェーン安定化の一環として、中国拠点の立ち上げも進めている。

なお、BtoC向けの「LOHACO」についても、1月20日のサービス復旧時に、3月上旬から大型セールを実施すると告知している。決算説明においても賞味期限が近い飲料・食品などを対象としたアウトレットセールや、「まとめ割」の対象拡大・割引率強化を手がけるほか「LINE」「Yahoo!」「PayPay」との連携を強化し、大規模な集客施策を展開すると明らかにしている。

「逆境を進化に変える」。アスクル「復活特別企画」の狙いと中長期的な展望
決算説明の中で過去最大規模の販促を実施すると説明していた(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

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