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米国EC市場で台頭するTikTok、フィットネス界のNetflix「ペロトン」との提携に見る躍進の理由

フィットネス業界で大きな存在感を持つペロトン。リブランディングにあたり、短尺動画を活用した顧客獲得施策に乗り出しています

Digital Commerce 360[転載元]

2024年1月11日 8:00

サブスクリプション型のオンラインフィットネスサービスやトレーニングマシンを販売する米Peloton(ペロトン)は、TikTokと連携しました。フィットネス企業としてのリブランディングをめざすなかで、TikTokでの動画配信に注力する予定です。

TikTokと提携する理由は新たな顧客に、新たな方法でアプローチできること

ペロトンはこのほど、TikTokとの提携を発表しました。これを契機に、TikTokで短尺のフィットネス動画を配信していく予定です。

ペロトンは有名人とのコラボレーションやインフルエンサーと連携し、短尺動画のコンテンツ制作を始めます。TikTokは2023年にECを開始しましたが、今回の提携はECを強化したいTikTokと、リブランディングを図りたいペロトンの思惑が一致したと見られます。

ペロトンの公式ECサイト(画像は同サイトから編集部がキャプチャ)
ペロトンの公式ECサイト(画像は同サイトから編集部がキャプチャ)

TikTokで配信する動画の制作に関し、ペロトンはフィットネスのライブレッスン、インフルエンサーとの提携、有名人とのコラボレーションなどを計画。動画コンテンツは、TikTokアプリのペロトンのアカウントで「#TikTokFitness powered by Peloton」というクレジットを付けて配信します。

ペロトンのコンシューマー・マーケティング担当副社長を務めるオリ・スノディ氏は、プレスリリースのなかで次のように述べています。

ペロトンとTikTokは、それぞれの顧客により良いサービスを提供するために、時流が変化するスピードに合わせて動いています。ペロトンは、人々のフィットネスへの関わり方は変化し続けていると考えており、急成長しているTikTokでのフィットネスコンテンツの活用に乗り出しました。魅力的なコンテンツを、新たな顧客に、動画という新たな方法でアプローチできることに期待感を持っています。(スノディ氏)

ペロトンが提携するTikTokの魅力とは?

ペロトンの動画は、米国、英国、カナダで公開予定です。米国のニュース専門放送局CNBCの報道によると、ペロトンが配信する予定の動画には、動画コンテンツ“get ready with me”(編注:「私と一緒にお出かけの準備をしよう」という意味で出かける前の準備の様子を配信する動画、Youtubeで一定の人気を集めている)のようなTikTokの人気フォーマットも含んでいます。

国際的なデータ分析会社である米モーニング・コンサルトの調査によると、このような動画は消費者の購買意欲をかきたてるのに最も成功しているということです。Z世代のTikTokユーザーの3分の1近くが、“get ready with me”や“routine”(編注:日常生活のいち部分を切り取った動画)の動画を見て購入したと答えています。

TikTokとの提携は、ペロトンが自社以外のチャネル向けにコンテンツを制作する初めてのケース。TikTokがECのプラットフォームとして著名になりつつあることを示しているとも言えるでしょう。

今回の提携により、インスピレーションを与えるフィットネスコンテンツが提供できるようになります。ペロトンのユーザーは、オンラインでインストラクターとつながり、フィットネスジャーニーを共有し、コミュニティーを見つけるためにTikTokを訪れるでしょう。(ソフィア氏)

ECブランドと顧客がつながる機会が拡大

TikTokは、中国のByteDance(バイトダンス)が展開するソーシャルメディア。1年近くのテスト期間を経て2023年9月、TikTokアプリ内で商品を販売できるEC機能「TikTok Shop」を米国で立ち上げました

TikTokによると、米国内に約1億5000万人のユーザーがおり、彼らは動画をスクロールしながらアプリ内で商品を購入することができます。TikTokビジネスマーケティング グローバル責任者のソフィア・ヘルナンデス氏は次のように説明します。

新たな文化、コミュニティーの形成、コミュニケーションがTikTok上で生じていて、ブランドが顧客と深くつながる機会にもなっています。フィットネスカテゴリーに関しては、「#TheFitnessJourney(健康のための体づくり)」から「#RunnersOfTikTok(TikTokのランナーズ)」としての絆まで、何千ものコミュニティーが集まっています。(ヘルナンデス氏)

TikTokは2024年、オンラインショッピングでAmazonと競合することをめざしています。Bloomberg(ブルームバーグ)が報じたところによると、TikTokは2024年の米国での流通総額を175億ドルに設定しました。2023年、「TikTok Shop」のグローバル売上高は約200億ドルに達し、流通総額の大半は東南アジアからのものでした。

ペロトンはリブランディングに注力

ペロトンはコロナ禍における成功の後に需要と株価が低下したことを受け、リブランディングに取り組むことを2023年5月に発表しました。ペロトンの最高マーケティング責任者であるレスリー・バーランド氏はその際、次のように話しています。

ペロトンは、家庭内だけでなくあらゆる場所、フィットネス愛好家だけでなくあらゆる人々を対象に、いままでと未来のすべての会員を視野とする事業者へとシフトしています。(バーランド氏)

ペロトンは、展開する商品のなかで最もよく知られているペロトンのエアロバイクを所有していなくても購入できる、段階的なメンバーシップ商品を発表しました。

ペロトンが取り扱うエアロバイクの一例(画像はペロトンの公式ECサイトから編集部がキャプチャ)
ペロトンが取り扱うエアロバイクの一例(画像はペロトンの公式ECサイトから編集部がキャプチャ)

ペロトンの2024年度第1四半期(2023年7-9月期)は売上高が5億9550万ドルで、コロナ禍の最高値だった7億5790万ドルから大きく減少しました。要因は会員の減少で、この四半期に3万人も減りました。また、売上高の約67%がサブスクリプションによるものでした。

ペロトンは2023年9月、スポーツアパレル小売のlululemon(ルルレモン)とのコラボレーションを開始。ルルレモンは現在、ペロトンが展開するブランドのフィットネスウエアを製造し、オンラインと店舗で販売しています。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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