ZOZOはこのほど、2030年3月期までを対象とする4か年の中期経営計画を公表した。収益目標の軸として据えたのは「調整後EBITA」。営業利益にのれん償却額(PPAによる取得原価配分後の各種償却費を含む)とM&A関連費用(仲介費用、DD費用など)を加えて算出する指標で、2030年3月期には2026年3月期比23.8%増となる900億円をチャレンジ目標に掲げた。

この成長シナリオを端的に表すのが、「ZOZOTOWNをさらに強くしながら、その外側に新たな収益柱を育てる」という方針。主力のZOZOTOWNを引き続き成長の中核に据えつつ、周辺領域や海外事業にも投資を広げ、利益の柱を複線化していく考えを示した。
3つの事業領域で“利益の柱”を増やす
中計では、国内外の事業をまたいでファッション領域を3つの事業ドメインに整理した。ZOZOTOWNを中心とする既存領域を伸ばしながら、周辺領域や海外にも成長機会を広げる設計だ。
- MORE FASHION領域:既存成長の中核(ZOZOTOWNの強化)
- NEAR FASHION領域:国内の新たな柱(ファッション周辺領域)
- GLOBAL領域:海外での成長(LYST、ZOZOFITなど)
利益配分のイメージは、「MORE FASHION」領域が800億円、「NEAR FASHION」領域が50億円、「GLOBAL」領域が50億円。全体として、ZOZOTOWNの収益力を高めながら、その外側に新たな利益の柱を育てる構造をめざす。なお、2026年3月期実績では、「GLOBAL」領域は赤字、「NEAR FASHION」領域はほぼ収支均衡の状況という。

MORE FASHION
「MORE FASHION」は、既存成長の中核として「稼ぐ力」を磨き、その原資をもとに規律ある投資を進める領域と位置付ける。
重点施策の1つが、新規ユーザーとの接点拡大だ。オンラインだけでなく、これまで接点を持てていなかった層にリーチするため、リアル施策にも踏み込む。具体例として、ファッションと音楽を掛け合わせたイベント「ZOZOFES」や、実店舗派との接点づくりを狙うポップアップストア「ZOZOTOWN NAGOYA」をあげている。
品ぞろえの強化も進める。たとえばK-FASHIONの取り扱い拡大などを通じて、取扱ブランド数の増加を図る方針だ。
さらに、購買導線の変化を踏まえた「AIエージェント時代への対応」も重要テーマに据えた。検索行動が変わる可能性を前提に、独自データを生かしたファッション特化AIを磨き、ユーザーのニーズが生まれる段階から関与することで、「提案の場」になるチャンスをつかみにいく考えだ。
なお、「MORE FASHION」領域にはZOZOTOWN事業とLINEヤフーコマースが含まれる。この商品取扱高を毎年200億円超のペースで安定的に積み上げ、着実な成長を見込むとしている。
NEAR FASHION
「NEAR FASHION」は、国内における新たな収益柱として、「ZOZOTOWN」ユーザーが関心を持ちやすい“ファッション周辺領域”へ進出する戦略だ。

対象領域としては、スキンケア・コスメ、ヘアサロン・理容室、フィットネス・ジム、エステ、脱毛、香水・フレグランス、ネイル、メンズ美容、ホワイトニングなどを挙げる。拡大手段については、協業、資本提携、自社立ち上げを状況に応じて使い分け、「AIネイティブ時代の爆速事業開発モデル」も模索するとしている。

具体的な取り組みの1つが、香りの総合プラットフォーム「カラリア」を運営するHigh Linkの完全子会社化だ。ファッションとの親和性が高いフレグランス領域を足がかりに、周辺領域での事業展開を加速させる狙いがある。
ZOZOは、この領域での最大の強みを1300万人の「ZOZOTOWN」ユーザー基盤にあると見る。新規事業は立ち上げよりも集客が難しいなか、既存ユーザーを新領域へ送客できる点が差別化につながるという。一方で、「ZOZOTOWN」とのカニバリゼーションを避けるため、これまで取り扱ってこなかった商材やサービスを中心に広げていく方針だ。
GLOBAL
「GLOBAL」は、海外における新たな収益柱として、北米・欧州市場を中心に、テクノロジーを軸に中期的に育成していく領域と位置付ける。

この領域では、欧米中心のファッションショッピングプラットフォーム「LYST」の構造転換を重要テーマとしている。2027年3月期はそのための投資フェーズと位置付けており、将来的には「LYST」の成長に加え、「ZOZOFIT」や周辺サービスへの送客など新たな取り組みも積み上げながら、50億円規模の利益創出をめざす考え。なお現時点では、「ZOZOFIT」の寄与はまだ大きくない想定としている。
「LYST」については、主戦場がAIエージェント時代へ移るとの認識も示した。ZOZOは、自社が持つデータ知見やノウハウが「LYST」の成長にも生きるとみており、今後の強化を進める方針だ。
一方、「ZOZOFIT」は100万ダウンロードを突破した。2022年のZOZOSUIT販売や米国展開開始、ボディスキャン技術の提供を経て、2026年にはサブスクリプションモデルへの転換、食事ログ機能の拡張、初心者支援の強化、多国展開の加速によって成長をめざしている。

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