「楽天市場」の基本出店料を約3割値上げへ(6/1から)。楽天グループが初めて月額固定費の引き上げに踏み切る理由とは?
楽天グループは6月1日、「楽天市場」の出店プランの一部を改定、基本出店料を約3割引き上げる。値上げは、近年の物価や人件費、電気代、システム管理費などの高騰を含む外部環境への変化対応に加え、AIなどイノベーションへの適応、さらなる店舗運営の支援やユーザビリティを強化するため。
楽天グループはこれまで、月額固定費の基本出店料はプラン設定時から価格を維持してきた。たとえば、「楽天市場」スタート時(1997年)の月額5万円プラン(当時は掲載アイテム数25アイテムまで)は、現在の「スタンダードプラン」(月額5万円)として価格を据え置いている。
2001年に一律月額5万円の料金体系を見直し、月額3万8000円の「楽天ライト」を導入。その後、固定料金制に加えて売上高に対する重量課金制度をスタート、2003年には月額3万9800円の「楽天プレミアムライト」を始めた。現在の出店プラン体系になったのは2008年。その後16年間、基本出店料を据え置いてきた。
こうした状況を踏まえ、長期にわたって出店している複数のEC事業者からは「長期間にわたって基本出店料を維持しているが、現在の経済状況からして値上げは致し方ない」「AIの台頭、競争環境を踏まえた投資は『楽天市場』の成長には必要不可欠」といった声があがっている。
料金プランの変更は次の通り(すべて月額の基本出店料で税別)。なお、売上課金などのシステム利用料は変更しない。
- メガショッププラン:10万円 → 13万円
- スタンダードプラン:5万円→ 6万5000円
- プレミアムライトプラン:3万9800円 → 5万2000円
- ライトプラン:3万9800円 → 5万2000円
- がんばれ!プラン:1万9500円 → 2万5000円
- Ichiba Basic Shop Open Plan:5万円 → 6万5000円
基本出店料の改定に伴い3月以降、出店規約・ガイドラインを変更。また、4月上旬から5月末までを申請期間として特別解約措置、特別プラン変更措置を実施する。通常、契約期間途中での解約・プラン変更は受け付けていないが、特別措置申込店舗に限り受け付ける。申し込みフォームは4月上旬をめどに案内する。
AI、店舗運営支援、ユーザビリティの強化に向けた取り組み
店舗の運営効率化、店舗ページの品質向上を目的として、登録商品数や画像登録可能容量の大幅なアップグレードを実施する。詳細は3月上旬のサポートニュースで案内する予定。
AIに関しては1月、ユーザーの検索意図や意味を理解し関連性の高い商品を表示するセマンティック検索を「楽天市場」に導入。これまでの単純なキーワードの一致検索だけではなく、これまで以上にユーザーが探している商品を見つけやすくした。
各商品のレビューに共通して記載されている要素をAIが要約し、多くのユーザーがコメントしている内容を一目でわかるようにするレビュー要約表示機能を導入。また、ファッションのレビューにおけるサイズ感や素材感など、共通してレビューに記載される要素をAIが自動的に分類し、各要素が書かれているレビューを見つけやすくする機能も搭載している。
また、店舗の運営効率化に向けては次のようなAIの取り組みを進めている。
- 「データ分析 R-Karte」における分析サマリ表示……「データ分析 R-Karte」の「売上の公式」データをAIが分析し、データから読み取れる売り上げの傾向や店舗ごとの特徴を要約
- 商品説明文の自動生成と商品画像の複数パターン生成 ……商品名・商品画像などの情報からAIが商品説明文を自動生成する機能、商品画像の背景やテイストをAIが複数パターン作成する機能
- 「R-Messe 問い合わせ管理」での回答自動生成……ユーザーからの問い合わせに対して、店舗が回答方針をAIに指示すると、その方針に従った回答案を自動生成
- RMS Al Chat機能……「楽天市場」出店者の管理システム「RMS」における従来のAIチャットサポート(店舗向けチャットボット「相楽しんく」)をアップグレード。従来の選択肢を絞り込んでいく形式、フリーテキストでの回答に加え、AIが最適な「店舗運営Navi」のマニュアルを提示できるようになる。生成AI機能も搭載し、メルマガやユーザーへの案内など、EC業務に必要な文章の要約や分類、校正といった作業をAIが手がけられるようにする
- 品質改善審査業務への活用……日々のモニタリング業務や審査業務においてのAI活用