実店舗内の音声も広告に! 物販外収入を増やす米ホームセンター大手ロウズの新たなリテールメディアとは?
米ホームセンター大手のLowe's(ロウズ)は、リテールメディアネットワークの1つとして、店舗内向けの音声広告の活用に力を入れています。Lowe'sは今後、全店舗で音声広告を使用できるようにする予定です。Lowe'sのリテールメディアネットワークに出稿する広告主が、顧客の購買行動のあらゆる段階で訴求できるように取り組みを強化しています。
米ホームセンター大手が取り組むリテールメディア広告の強化
店舗内音声広告を全店舗に展開予定
Lowe'sは、店舗内デジタル広告の大手プロバイダーであるVibenomicsと提携し、展開するリテールメディアに新たな広告サービスを追加しました。
リテールメディア広告を提供する事業者は昨今、店舗内で商品をPRできる広告にフォーカスしています。Lowe'sはVibenomicsとの提携により、自社が所有・運営する全ての店舗で、音声広告を使用できるようにする計画です。
Lowe'sのゼネラルマネージャー兼リテールメディア責任者であるジョン・ストームズ氏は、は、米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』に、「店舗内の音声広告に出稿したブランドのテスト運用では、ブランドの売り上げと広告の費用対効果が徐々に増加していることが示された」と説明しました。
「Lowe'sは、ホームセンターでショッピングする顧客に買い物のあらゆる段階でリーチできるよう、オムニチャネルで広告を打つポートフォリオを設計しました」とストームズ氏は解説。続けてこう説明します。
Lowe'sの広告は、PinterestやMetaのようなSNSへの出稿を通じた“商品を知るきっかけ作り”から始まり、ECサイト「Lowe's.com」や、Vibenomicsとの連携による新たな店内音声広告を通じたコンバージョンまで設計しています。(ストームズ氏)
また、マーケティング担当副社長のビル・ボルツ氏は、Lowe'sのマーケティングチームはリテールメディアネットワークの「リブランディング」を進めていると、決算発表の際に説明しました。
Lowe’sが提供するリテールメディアネットワークをよりシンプルなプラットフォームに再構築し、実店舗の棚の効率アップ、新製品の発表、シーズンごとのプロモーション、複数製品のクロスセルまで、広告出稿するブランドパートナーがマーケティング上のさまざまな目標を達成できるようサポートします。(ボルツ氏)
Googleとの提携でサイト外の顧客にもリーチ
Lowe'sは2021年にリテールメディアネットワークを立ち上げました。今では、300以上のホームセンター用品ブランドが広告出稿するまでに成長しています。「Lowe'sのリテールメディアネットワーク広告は、Lowe'sの販売パートナー企業が利用しています」(ストームズ氏)
Googleは3月、Lowe'sと提携したリテールメディアソリューションを発表。このベータ版では、Googleのリスティング広告運用最適化ツール「Search Ads 360」(検索広告360)を使用して、リテールメディアキャンペーンを促進します。これにより広告主は、リテールメディアネットワークだけでなく、新たなサードパーティチャネルにもリーチが広がります。
Googleの「Search Ads 360」との提携は、Lowe'sのリテールメディアネットワークのオフサイト機能の拡張に向けた重要なステップです。現在、広告運用は広告主が直接行うのではなく、専門業者が引き受けるマネージドサービスモデルを使用していますが、今後は広告主のブランドがキャンペーンを簡単に実施できるように、セルフサービスオプションの導入を進めています。(ストームズ氏)
広告のオムニチャネル展開を加速
一方、VibenomicsがLowe'sに提供する店舗内での音声広告は、小売事業者の店舗とメディアネットワークに重点を置いています。ストームズ氏は『Digital Commerce 360』に対し「Lowe'sは音声広告によって、店舗内の顧客により効果的にアプローチできるようになる」と説明しています。
「DIYを楽しむ一般の消費者と、仕事で住宅リフォームなどを手がけるプロの顧客が混在して店舗を訪れているため、店舗内に音声広告を流すことは、オムニチャネル広告ソリューションの展開において重要な拡張になりました」とストームズ氏は成果を語りました。
Vibenomicsがテクノロジーを提供する店舗内の音声広告を利用することで、顧客の購買体験における重要なタイミングで関連性の高い音声広告を配信し、店舗内の顧客により効果的にアプローチできるようになります。(ストームズ氏)
音声広告の効果測定
インプレッションが最も高い時間に展開
Vibenomicsのテクノロジーが提供する音声広告は、インプレッション(表示回数)ベースの購入実績と、設計したプログラムによるアクティベーションに重点を置いています。「これはラジオ広告に似ている」とVibenomicsのリテールメディアおよびパートナーシップ担当上級副社長であるポール・ブレナー氏は指摘します。
店舗内の音声広告は、1つの広告が、店舗を訪れている多数のオーディエンスに呼びかけるという図式になります。売り上げに結びつく唯一の方法は、コントロール型のテストマーケティングを行うことだと言えます。(ブレナー氏)
たとえば、音声広告の対象となる店舗グループを選択し、同じような来店者数の傾向と販促スケジュールを持つ比較可能な場所でのテストが実現可能かどうかを検証します。また、Vibenomicsは通常、広告のインプレッションが最も高くなる時間帯をターゲットにすることができます。
Vibenomicsが店舗内音声広告のターゲティングにおいて重視するのは、曜日、時間帯、特にインプレッションの多い時間帯です。(ブレナー氏)
計画的なターゲティングが可能
ほかにも、プランニングに基づいたターゲティングをすることもあります。たとえば、ガーデニング用品を販売する小売事業者は、春シーズン向けの販促を行う際、まず2月に米国南東部の店舗を音声広告のターゲットにし、その後、本格化な春が来るにつれて、音声広告を展開する店舗を中西部などの地域へ北上するといったケースです。
ブレナー氏は「目標は、インプレッションをベースにした広告プログラムを、音声広告を実施する店舗ごとに導入することです」と指摘します。Vibenomicsの音声広告による店内インプレッションを、Lowe'sのリテールメディアネットワークに情報として提供します。これにより、Lowe'sとVibenomicsは、店舗内音声広告の費用対効果を、オンライン上の広告出稿の費用対効果と同じように測定できるようになるのです。
店舗内広告の活用はまだ基礎段階です。Lowe'sは店舗内音声広告を取り入れて、リテールメディアネットワークの拡張を図りました。今では、より自動化された広告テクノロジーや、コンバージョンに至った間接的な貢献度を測定するアトリビューションを構築できるようになったことを喜ばしく思っています。(ブレナー氏)
顧客データの収集・活用はプライバシー基準に対応
Lowe'sは音声広告に関して、位置情報データや歩行者数などを測定するデータ会社Placer.aiとも連携しています。Placer.aiはVibenomicsにデータインサイトを提供し、店舗ごと、時間ごとのインプレッションの追跡に貢献しています。
ブレナー氏によると、データの収集や活用方法において、各社はインターネット広告協会(IAB)が定めた基準に従っています。
Vibenomicsはビジュアルディスプレイ広告でも、個人や集団の年齢、性別、所得、教育水準、職業などの情報を活用するデモグラフィックデータは収集しません。Placer.aiは、ユーザーの位置情報やトラフィックを追跡するために、デバイスの識別情報を追跡することはありません。Placer.aiは機械学習と画像を使用して、小売店舗にどれだけの人が入店し、どれだけの時間滞在するかを判断しています。
IABは、店舗内で展開するリテールメディアネットワークの定義と測定基準を作成しました。急速に拡大している店舗内リテールメディアに対応し、広告フォーマットや展開する店舗の定義統一、測定基準、ガイドラインを設ける目的です。定義と測定基準について、IABは2024年11月1日までパブリックコメントを受け付けています。