Amazonが「Prime Video」に販売事業者向けのショッパブル広告。動画配信+買い物広告の新たな3サービスとは
動画ストリーミングサービスにおけるショッパブル広告(画像、動画、広告などを見ている消費者がそのコンテンツから直接商品を購入できるようにする仕組み)の利活用が広まりつつあります。Amazonは自社の動画ストリーミングサービスに広告を掲出できる新たなショッパブル広告を提供する予定です。Amazonのほかにも、この広告サービスを提供する事業者は米国で増えています。
Amazonが「Prime Video」に導入する3つの新広告フォーマット
Amazonは5月7日、販売事業者向けの広告ソリューション「Amazon Ads」において、テレビなどで視聴できる会員向け動画ストリーミングサービス向けの3つの新しい広告フォーマットを発表しました。
ショッピング機能付きのカルーセル広告である「ショッパブルカルーセル広告」、視聴者が一時停止できる「インタラクティブな一時停止広告」、広告主のブランドについての豆知識や雑学を掲載する「ブランドトリビア広告」です。
いずれも将来的にAmazonが配信する動画ストリーミングサービスに導入する予定ですが、具体的な導入時期は明らかにしていません。
3つの広告フォーマットの特徴は次の通りです。
- ショッパブルカルーセル広告
視聴者が商品紹介のCMを閲覧しながら、リモコンを使ってカートに追加できる広告をラインアップします。消費者がリモコンを操作すると広告は自動的に一時停止し、操作が終わると再開します。 - インタラクティブな一時停止広告
視聴者が番組や映画を一時停止すると、半透明の広告を画面に表示します。画像には「カートに入れる」や「詳細を見る」ボタンも掲出します。これらの広告は、動画が一時停止している間、画面に表示し続け。「従来の広告の合間よりもエンゲージメントを広げることができる」とAmazonは説明します。 - ブランドトリビア広告
消費者がブランドに関するトリビア(雑学や豆知識)を楽しみながら買い物をする機会を提供する広告です。また、商品やサービスについて認知を広めたり、「対象商品を購入するとAmazonクレジットカードのポイントを付与する」といった特典を与えたりこともできるようになっています。
Amazonは、広告主がこうしたインタラクティブ広告と非インタラクティブ広告の両方を掲載し、その効果を測る調査を実施しました。「自社の調査によると、インタラクティブ広告は広告主にとって、より有用性が高い」とAmazonは説明。インタラクティブ広告の方がコンバージョン率が高く、商品ページビューも10倍高かったということです。
Amazonは5月14日に行うプレゼンテーションで、新たなインタラクティブ広告を正式に発表します(※編注:この記事は『Digital Commerce360』による5月9日時点の配信記事を転載・編集しています)。
Amazonが自負する自社動画広告の有用性
Amazonは2024年の1月末から、動画ストリーミングサービスの1つである「Prime Video」に広告を導入しました。Amazonの有料会員「プライム会員」は月額2.99ドルの追加料金を支払うことで、広告を見ないようにすることが可能です。Amazonによると、広告付きの「Prime Video」は月間で平均2億人の消費者に視聴されているということです。Amazonの広告事業は、これまでに蓄積された豊富な顧客データに基づき、ターゲティングした特定の広告を消費者に表示しています。
「Amazon Ads」のグローバル広告セールス担当バイスプレジデントであるアラン・モス氏はこう言います。
「Amazon Ads」は、広告の視聴者はシームレスに買い物でき、広告主は潜在顧客と効率的につながることができる、インタラクティブな広告フォーマットです。「Amazon Ads」はAmazonが配信する動画ストリーミングサービスの視聴体験をブラッシュアップし続けています。
広告を視聴する顧客へのリーチ、Amazonが顧客データを保有するファーストパーティ企業であることの強み、広告のターゲティング性を通じて、動画配信サービスにおける広告の改善に取り組みながら、広告主のブランドが将来的な顧客とより良く関わることができるよう、イノベーティブな顧客体験の開発に乗り出しています。(アラン氏)
ショッパブル広告の広まり
他の動画ストリーミング配信事業者も近年、ショッパブル広告を導入し始めています。これを受けて、Amazonは声明で「新しい広告フォーマットは他社と競合するなかで優位性があります。『Amazon Ads』の広告フォーマットは、たとえばQRコードを掲出する広告をはるかに凌駕(りょうが)するものです。視聴者は好みのストリーミング動画を楽しみつつ、広告主のブランドとつながることが容易になります」と言います。
ショッパブル広告は、一部の大手オンライン小売事業者(ECプラットフォーマー)にとって、プラットフォームのオプションサービスとして成長しています。Amazonがこの分野に進出したのも、これが初めてではありません。Amazonは2023年、初めてブラックフライデーにNFL(アメリカンフットボールリーグ)の試合をストリーミング配信した際、ショッパブル広告をテストしました。
Disneyは「Hulu」でテスト開始
競合する動画ストリーミングサービス配信事業者も、広告オプションを取り入れつつあります。2024年1月、Disneyは「Hulu」でのベータプログラムを発表しました。Disneyはベータプログラムの発表当時、「消費者は動画ストリーミングの視聴を楽しみながら、『Hulu』内の新しいゲートウェイショップを通じて商品を購入することができる」と説明します。
視聴者には、プッシュ通知やEメールを通じて携帯電話に送信される、パーソナライズされた広告を表示。Disneyは動画ストリーミング事業に参入して以来、動画ストリーミングにおけるインタラクティブなショッピング機能を推進させてきました。
Disney Advertisingのアドレスエイブル セールス担当上級副社長であるジェイミー・パワー氏は1月、次のようにコメントしています。
動画ストリーミング事業の広告における目標は、視聴者がストリーミング中の動画コンテンツを中断することなく、最小限の手間で、好きなブランドとつながることができるようにすることです。(パワー氏)
米大手チェーンが次々と市場参入
米スーパーマーケット大手のWalmartと、米ホームセンター大手のHome Depotも、ショッパブルTVを試みています。
Walmartは2023年11月、情報通信業を営むNBC Universalと契約を結び、NBC Universalが運営する動画配信サービス「Peacock TV(ピーコックティービー)」にショッパブル広告を掲載しました。この広告で、消費者は米国でケーブルネットワーク事業を展開するBravo TVの、一部の番組で紹介されたWalmartの商品を購入することができます。
Home Depotは2023年、自社で生産設備を持たない液晶テレビメーカーVizioとのブランドコンテンツシリーズを発表しています。
最近では、米国でスペイン語のテレビネットワーク事業を手がけるUnivisionとメキシコのメディア大手Televisaのテレビ・コンテンツ部門の経営統合によって発足したTelevisaUnivision(テレビサユニビジョン)が、配信するストリーミング番組全体でショッピングを統合するために、米Sugarが提供する、AIを活用したショッパブルなメディアソリューション「Shopsense AI」との提携を発表しました。
Telemundoが主催する音楽賞「ラテン・アメリカン・ミュージック・アワード」に合わせて、ショッピング可能な4つのコレクションを発表しています。