Digital Commerce 360[転載元] 5/16 8:00

オムニチャネル戦略を成功に導くには、何が重要になるのでしょうか。米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』が発行したオムニチャネルに関するレポートでは、昨今のトレンド、チャートによる分析から、オムニチャネル戦略の重要ポイントをまとめています。

市場環境の変化とオムニチャネル化の変遷

2020年代はまだ半分も経過していませんが、小売企業はすでに、歴史的な消費行動の変化に直面し、オムニチャネル戦略の在り方を再考しなくてはならない状況になっています。

小売企業はこの10年間、大規模な環境の変化の対応に迫られてきましたが、昨今の消費者の新たなニーズや経済状況に適応する必要に迫られています。

『Digital Commerce 360』発行の2024年版オムニチャネルレポートでは、過去数年間で小売業がどのように変化してきたかを調査。変化を見るなかで、小売業におけるオムニチャネル化の進行が安定化し始めている兆候もあります。これは、オムニチャネルでのサービスを提供する小売企業の割合が頭打ちになったことが理由だと考えられます。また、オムニチャネルのうち、いくつかのサービスは減少傾向が見られます。

小売事業者によるオムニチャネル化戦略の解説

昨今の人気サービスは「BOPIS」「店舗在庫の確認」

2024年版のレポートによると、北米の売上上位1000社上位に入っている小売企業の多くでは、オンラインで購入して店舗で受け取るオプション(BOPIS、2023年は採用率78.3%)と、店舗在庫の確認(同65.4%)が、消費者にとって重要なサービスになっています。

一方、カーブサイドピックアップ(店舗外での車中受け取り)を提供している上位1000社のシェア(同25.3%)は、大幅に減少しています。

北米上位1000社の小売企業が提供するオムニチャネルのうち「BOPIS」「カーブサイドピックアップ」「店舗在庫の確認」の提供状況(出典:『Digital Commerce 360』)
北米上位1000社の小売企業が提供するオムニチャネルのうち「BOPIS」「カーブサイドピックアップ」「店舗在庫の確認」の提供状況(出典:『Digital Commerce 360』)

昨今の傾向+2024年に成功するポイント

今回の調査でわかったオムニチャネル化における主な3つの成功要素を紹介します。

  1. 店舗受取、店舗在庫の表示サービス
    オンラインでの購入・店舗での受け取り(BOPIS)、店舗在庫の表示サービスは、いずれも2020年より高い水準で提供されています。
  2. カーブサイドピックアップ
    他のオムニチャネルの項目と比べると利用が減少しているとはいえ、食料品分野の大手小売チェーンや事務用品販売事業者にとっては、依然として大きな優先項目になっています。
  3. 視聴者が商品を直接購入できる、ショッピング機能付きの動画(ショッパブル動画)
    ソーシャルメディアやストリーミングプラットフォーム上での利用はさらに一般的になってきています。このことは、最大手のオンライン小売事業者と、その小売りメディアネットワークに影響を与えています。

レポートからは、過去5年間で市場の“地殻変動”が起こったことがわかります。

小売事業者は市場環境の変化に適応することを余儀なくされ続けてきました。コロナ禍で学んだ教訓は、今もなおオムニチャネルの選択肢に影響を与えています。その結果、新たな時代が生まれつつあると言えます。

レポートの主なトピックスは次の通りです。

  • 上位1000社の小売チェーンの78.3%が2023年にBOPISを提供。2022年の80.0%と比べると減少している
  • 上位1000社の店舗型小売業者の65.4%が「店舗在庫の確認」を提供。その割合は前年とほぼ同じ
  • 上位1000社のうち、カーブサイドピックアップを実施している割合は2023年で25.3%。2021年の55.1%から、実施率は3年連続で減少
    • カテゴリー別では、オフィス用品の販売店が50.0%と最も高い割合でカーブサイドピックアップを提供。オフィス用品においてはこれが最もオムニチャネルで人気のあるサービスとなっている
  • 調査対象の消費者の66%は、過去6か月以内にWalmartの店頭またはカーブサイドピックアップで注文したことがあると回答

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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