Digital Commerce 360 2022/2/14 9:00

Amazonはオンライン注文のスピード配送を実現するため、過去10年間で流通網を劇的に拡大し、人口が密集している地域の近くに多くの倉庫を設けました。Walmart、Home Depot、Wayfairなどの競合他社も、Amazonの迅速な配送に対抗するため、新しい配送センターを開設しています。

拡大するAmazonの大型FC、2023年までに355か所まで拡大

Amazonと、その競合企業であるWalmart、Home Depotは、米国の消費者、特に大都市圏の消費者にオンライン注文された商品を当日または翌日に配達できるように新しい倉庫を数多く建設しています

企業向けの設備レンタルサービスを展開しているBigRentzの分析によると、Amazonは現在、全米で305の大型フルフィルメントセンターを運営しており、平均80万平方フィートの保管スペースを保有しています。

BigRentzは、Amazonは2023年までに少なくとも米国内の大型フルフィルメントセンターを355か所まで拡大し、その総面積は3億1900万平方フィートまで広がると予測します。

Amazonの倉庫面積が最も多い州(今後建設予定の倉庫を含む)(出典:2020年 米国の国勢調査 注:2021年に収集されたデータを元に作成)
Amazonの倉庫面積が最も多い州(今後建設予定の倉庫を含む)(出典:2020年 米国の国勢調査 注:2021年に収集されたデータを元に作成)

Amazonの倉庫の場所は?

Amazonの物流センターは、カリフォルニア州が35か所で最多。次いでテキサス州の28か所、ニュージャージー州の17か所となっています。物流センターは人口密集地域の近くに集中しており、倉庫の面積が最も多い10州のうち8州が、人口数上位10州に含まれています。

また、Amazonの倉庫スペースのトップ10には、人口数11位のニュージャージー州がランクインしています。Amazon倉庫の主要州となっていないニューヨーク州の消費者に、ニュージャージー州の倉庫からサービスを提供しているのです。Amazonの倉庫数で9位、人口数順位ではトップ10に入らないテネシー州の配送センターは、隣接するジョージア州(人口数8位)への迅速な出荷を可能にしています。

BigRentzのデジタルオーディエンス担当ディレクターであるリオール・ジッツマン氏はこう言います。

Amazonは米国最大の人口密集地域の近くに配送センターを集中させているようです。私たちの分析によると、倉庫の面積が最も多い10州のうち8州が、最も人口の多い10州のなかに入っています。つまり、人口集中地域とAmazonの倉庫の場所には強い相関関係があるようです。

Amazonの物流センターは1137か所

BigRentzの調査結果でわかるように、Amazonは巨大な倉庫を大都市の近くに配置することに加え、消費者宅へのラストマイル配送のために荷物を分類する小規模施設も多数開設しています

物流コンサルティング会社のMWPVL Internationalによると、Amazonは米国内でさまざまな種類のフルフィルメントセンターを1137か所に設置、さらに331か所の開設を計画していると発表しています。MWPVLによれば、カナダでも47の倉庫が運営されており、さらに26の倉庫が建設中とのことです。

Walmartの配送センターは198か所

Amazonの倉庫の数は、最大のライバルであるWalmartやTargetを大きく引き離しています。

Walmartは、米国内で198のさまざまなタイプの配送センターを運営しており、そのうち29はオンライン注文専用です。Walmartはさらに10か所の新施設を計画しており、そのうち6か所はeコマース専用になる予定です。

また、Walmartは先日、ミシシッピ州に初のフルフィルメントセンターを開設する計画を発表。100万平方フィートの広さで、250人の常駐スタッフを雇用する予定です。

Targetの物流センターは49か所

Targetは米国で49の倉庫を運営しており、そのうち7つがeコマース用です。MWPVLによると、さらに6つの物流センターが計画されていますが、いずれもオンライン注文専用ではありません。

WalmartやTargetのように多くの実店舗を持つ小売事業者は、オンライン注文に対応するため、実店舗を利用することが増えていることも重要な点です。実店舗から消費者の自宅まで荷物を配送したり、店内や道端で注文を受け取れるようにしているのです。

Targetの発表によると、2021年度第1四半期にオンライン注文の75%以上が、Targetの実店舗で処理(店舗受け取り)されました。

競合他社を圧倒するAmazonのフルフィルメントセンター

他の大手小売事業者も、配送時間やカスタマーサービスを向上させるために配送センターを増設しています。その代表例がオンライン専用で家具を販売しているWayfairです。

2200万SKUを消費者へ直接出荷するために、一時は1万6000社のサプライヤーに配送面を依存していましたが、近年はCastleGate Logisticsと呼ぶネットワークを構築。自社で商品の保管と注文の発送を行うようになりました。現在、Wayfairは米国に52、ヨーロッパに4つの配送センターを運営しています。

Home Depotは店舗型小売業ですが、オンライン注文に対応するために、より大規模な倉庫のネットワークを構築しています。

2018年にサプライチェーンの改善へ5年間で10億ドルを投資する計画を発表。そのなかには、商品の流通にさまざまな役割を果たす150の施設を追加する計画も含まれており、2022年には30か所がオープンする予定だとHome Depotの広報担当者は話します。

Home Depotは現在、米国で130の配送センターを運営、そのうち10か所はeコマースに特化しています。2022年と2023年には、「複数の」eコマース向け施設を追加でオープンする予定だそうです。

新施設では、Home Depotの平均的な店舗にある3万5000点の商品よりもはるかに多い10万点もの商品をストックする予定です。それにより、実店舗よりも豊富な品ぞろえをオンラインで提供することができるようになるのです。

Home Depotはまた、Walmartの小売事業者向け配送サービス「GoLocal」を利用してオンライン注文に対応する契約を締結。DIY業者として消費者に迅速な配送を提供する方法を確保しました。

Amazonは、Digital Commerce発行「北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版」で1位にランクインしています。2位はWalmart、4位はHome Depot、6位はTarget、7位はWayfairです。

Amazon、Walmart、Targetなど米国大手小売企業の倉庫ネットワークについて
米国大手小売企業の倉庫ネットワークについて

物流センターを10年間拡張し続けるAmazon

Amazonの物流センターネットワークの大規模な拡大は、過去10年間に起こったもので、EC小売事業者が多くの州で売上税の徴収を開始した時期と重なります

2018年以前、オンライン小売事業者はオフィスや倉庫など物理的な拠点がある州でのみ売上税を納税していました。Amazonは長年、物理的な施設を設置する州を限定し、売上税を回避してきました。

Institute on Taxation and Economic Policyによると、2011年の時点でAmazonはワシントン、ニューヨーク、カンザス、ノースダコタ、ケンタッキーの5つの州に住む消費者からの購入に対してのみ売上税を徴収していました。

これは、Amazonがこれらの州でオフィスや倉庫を運営していたことを意味します。他の州で実店舗を運営すると、それらの州でも売上税を徴収し、納税しなければなりませんでした。

その後、2018年のWayfairをめぐる訴訟の連邦最高裁判決で、オンライン小売事業者が所定の州に物理的な拠点を持つかどうかにかかわらず、州が売上税の徴収を義務付ける権利を得たことで、状況が一変しました。

Amazonは現在、売上税がある米国45州すべてで、注文に対する売上税を徴収しています。この政策変更により、Amazonは全米各地に配送センターを設置することができるようになりました。

最後に、BigRentzの調査から、アマゾンの倉庫に関する注目すべき事実をいくつか紹介します。

  • Amazon最大の倉庫は、デラウェア州ウィルミントンにある5階建ての施設。面積は380万平方フィートで、フットボール場66.6面分に相当します。
  • 2021年4月現在、米国で建設中の最大級の倉庫10棟のうち9棟がAmazon用。380万平方フィート以上のものは、デトロイト、ニューヨーク州シラキュース、テキサス州オースティンの3カ所で建設中。
  • BigRentzのリストに載るほど大規模なAmazonの倉庫がない5つの州は、アラスカ州、ハワイ州、メイン州、ニューハンプシャー州、バーモント州です。
  • Amazon倉庫の面積では、サウスダコタ州が最下位、次に小さいのがアイダホ州とネブラスカ州です。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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