Amazonの必勝パターンに学ぶ。購入前→購入中→購入後のタイミングでEC事業者が提供すべき各5つのアプローチ
購入サイクルにおける3つのステージ(購入前、購入中、購入後)は、EC事業者が消費者に特別なものを提供しているAmazonから学び、独自サービスを開発することができるアプローチです。
幅広い商品を「最安値で、最も速く、最も安価に届く」ことに価値を感じる消費者
ECサイトでは「買い物をする前」「買い物をしている間」「買い物をした後」という3つのステージすべてにおいて、消費者にメリットを提供する必要があります。Amazonは各ステージで市場をけん引するサービスを提供することで、とてつもない成功を収めています。しかし巨人Amazonを前に、他の小売事業者が絶望する必要はありません。
今回は、Amazonとは異なるサービスの選択肢を紹介します。小売事業者が購入サイクル全体を網羅すれば、成功できるでしょう。
購入意思がある消費者は買い物をする前、一般消費者向けの魅力的なサービスに反応するでしょう。
強力なサプライチェーンと物流を誇るAmazonの場合、幅広い商品を「最安値」「最も速く」「最も安価」に届けるというサービスを提供しています。これらの「最上級」サービスは、最も良い条件で商品を注文し、受け取りたいと考える消費者にとって魅力的であり、Amazonが市場をリードしている点でもあります。
【購入前】EC事業者が提供できる5種類のサービス案
EC事業者は、購入前の第1ステージにおいて、どのような代替案を消費者に提供できるでしょうか。
EC事業者が消費者に提供する基本的なサービスには5つの種類があります。他の大手事業者を例にあげて、そのポイントを説明します。
- 「Apple」が実践しているように、特定の消費者層はプレミアム商品に惹かれます。
- 「Costco」のプライベートブランドである「Kirkland Signature」のように、基本的な要素をきっちりと反映した商品は、消費者に安心感のある品質を提供します。
- 家具やアウトドア用品を販売する「Wayfair」で見られるようなバーゲン、特価品、一点ものの商品、魅力的でユニークな商品セットは、消費者の欲求を刺激します。
- 百貨店「Macy’s」 の強みである、ライフスタイルを豊かにする商品は、消費者の感情を刺激します。
- 環境に配慮した消費者でありたいという願望に応えます。ファッションのD2Cブランド「Everlane」のサスティナビリティへの取り組み、倫理的な生産体制、「The More-Sustainable Collection」が一例です。
小規模なEC事業者であっても、上記のポイントの1つ、または複数を取り入れることで、購入前の消費者に向けてアピールすることができるでしょう。
【購入中】「受け取りサービス」が第2ステージの一部になる
サプライチェーンと物流に話を戻すと、多くのAmazonの競合他社は、配送サービスの一環として、消費者が荷物を受け取れる物理的な場所(自社または提携先の場所)を設けています。もちろん、Amazonも特定の地域ではこのオプションを提供しています。
受け取り場所はほとんどの場合、店舗か商店街の近くに設けられており、消費者はしばしば買い物と受け取りの両方を行います。つまり「受け取りサービス」が、購入サイクルの第2ステージである購入中の一部になるのです。
利便性、効率性の追求で購入ステップを徹底的にサポートするAmazon
Amazonはオンライン上で新しい選択肢を提案することで、消費者に利便性と効率性、さらには新たな刺激を提供しています。消費者は、ナビゲーションや検索機能といったAmazonが最も得意とする機能を駆使して、幅広い商品群にアクセスすることができます。
また、パーソナライゼーション機能では、訪問者の履歴に合わせて、代替品、付属品、“あなたにぴったりの新商品""もっと検討すべき商品""あなたにおすすめの商品 "など、カスタマイズした体験を提供しています。
「Kindle」や、スマートスピーカー「Echo」に搭載されている「Electraソフトウェア」など、スマートデバイス上での注文機能は、Amazonでの買い物をオフラインの世界に拡張。慈善団体への寄付も含めて、支払いにも多くの選択肢を用意しています。
Amazonが前例を作った買い物機能は他にも数多くありますが、「購入してもらう」ことに特化していると言えるでしょう。つまり、消費者の購入ステップを徹底的にサポートしているのです。
購入中における一般的な5種類のサービス
第2ステージの購入中でも、一般的な5つの種類のサービスがあります。
- 「Apple」はオンライン上で、消費者に高揚感を提供しています。スタイリッシュなフォント、高級感のある色使い、洗練された商品写真(多くの場合、エレガントなモデルと一緒に撮影されています)、そして、消費者が簡単に買い物できるナビゲーションは、レジまで親切に同行してくれるベテラン販売員のようです。
- 世界最大のスーパーマーケットチェーン「Walmart」は、最大限のコストパフォーマンスが得られるよう、消費者に繰り返しおすすめをプッシュします。
- 住宅リフォーム・建築資材のチェーン「Home Depot」では、上手にデザインしたナビゲーション、商品や割引などのわかりやすいカテゴリ、整理された情報と明確な支払い方法のおかげで、消費者は常に、自分が今オンライン上のどこにいるのかを把握することができます。
- 大手ディスカウントストアチェーン「Target」のウェブサイトは、感動的なオンライン体験へと誘います。たとえば「Ideas」「Spotlight」「Fun Stuff」などのカテゴリーでは、ライフスタイルの文脈で商品を紹介することで、それらがどのように消費者の生活を盛り上げるかを想像させます。
- 「IKEA」では、商品ごとに環境へのメリットを説明しています。たとえば、竹のランプのデザイナーは、素材としての竹のメリットを強調しながら、商品を作る際に廃棄物を減らす方法を説明しています。
上記5つを第2ステージの「購入中」に反映させることで、すべてのEC事業者は、消費者のオンライン体験を1つ、または複数の方法で発展させることができます。
【購入後】アフターケアなどAmazon流でのメリット提供方法
買い物をした後の消費者は事実上、商品を受け取り、消費するエンドユーザーになります。Amazonは第3ステージのエンドユーザーに対して、アフターケアや商品への期待値形成の部分で、市場をリードする総合的なメリットを提供しています。
コールセンターは消費者からの問い合わせや苦情に最高水準の対応をしており、破損や故障した商品交換にも非常に寛大。また、商品情報とカスタマーレビューを介して、商品に対する期待値を形成しています。商品の詳細な情報を提供することに力を入れ、時には同じ商品を販売する別の事業者達の情報を組み合わせることもあります。
Amazonが特に優れているのは、消費者が小売事業者の商品情報よりもはるかに信頼しているカスタマレビューです。消費者の役に立つような有益なレビューを投稿してもらうためのテクニックを、Amazonは数多く持っています。
消費者が箱を開封して使い始めるときに、驚きがあってはいけないのです。買い物をした後、エンドユーザーとして得られる総合的なメリットによって、消費者のAmazonへの満足度が高まっていくのです。
第3ステージにあたる購入後のエンドユーザーの期待と実際の商品の使用感との乖離をなくすために、5種類の基本的なサービスがあります。
購入後に提供できる基本的な5種のサービス
- 英国のプレミアムブランド「John Lewis」は、教養溢れる生き方に合った文化的な商品を購入するためのショッピングガイドを提供しています。
- 「Walmart」は、商品を誰よりもよく理解しているサプライヤーに、商品がエンドユーザーの生活水準をどのように向上させるかを説明する場を提供しています。サプライヤーの情報は、お役立ち度でランク付けされたカスタマーレビューと共に商品情報に反映されます。
- アパレル販売の「Express」は、消費者との交流の中で様々な方法で情報を集め、日常生活の中で消費者がどのようにファッションの多様性を表現しているかを発信しています。「Express Together」や「Express Life」などが一例です。
- カスタマーレビューに加えて、「Target」は「#Target Style」というセクションを設けています。ここではエンドユーザーが「Target」の服を着ている写真や、「Target」の家具やその他のアイテムと一緒に家にいる写真をアップロードしています。「Target」がライフスタイルに合わせてキュレーションした商品を、消費者がそれぞれの嗜好に合わせて使っている様子を、豊富な写真で紹介しています。
- 「IKEA」では、よりサスティナブルな生活のために、数百種類の商品の詳細を掲載した商品ガイドをいくつか用意しています。それにより、環境に配慮した商品が家庭内でどのように使われ、どんなメリットがあるのかが明確になります。
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今回は、購入サイクルのステージごとに5つの基本的なサービスを紹介しました。これらを守ることで、購入サイクル全体をカバーしながら、各ステージで特徴的な商品やサービスを提供することが可能になるでしょう。