ECの専門家が「SMSマーケティングに全力投球すべき」と提案する理由。3ケタ増のモバイルメッセージによる商品購入の今
ECサイトを運営する企業のマーケティング担当者は2021年、SMSメッセージは前年比75%増、プッシュ通知は396%増と、多くのメッセージを消費者に送信しました。これにより、モバイルメッセージをきっかけとした購入は、3桁の割合で増加しています。
SMSとプッシュ通知のモバイルマーケティング経由の商品購入が拡大
eコマースに特化したマーケティングオートメーション企業Omnisendは、2021年に7万社以上のクライアントが送信した120億通のマーケティングメール、6300万のSMSメッセージ、5400万のウェブプッシュメッセージの分析に基づいて、レポートを作成しました。
それによると、2021年は販促キャンペーンメールのコンバージョン率が向上。最も多くの注文を生み出したのは、自動配信メールでした。
また、SMSメッセージやプッシュ通知(消費者が受信を許可した場合にモバイル端末に「ポップアップ」されるメッセージ)の送信も大幅に増加しました。
SMSとプッシュ通知の結果は劇的に改善されました。SMSメッセージ経由の購入は前年比106%増、プッシュ通知経由の購入は前年比171%増であることが、Omnisendの調べで判明しています。
小売事業者やブランドは、カゴ落ちした商品を消費者に思い出させるフィードバック、商品レビューの依頼、消費者の誕生日に割引を提供するといった施策に関して、eメール、SMS、プッシュ通知で自動メッセージを活用しています。
一方、限定キャンペーンや割引、新商品のプロモーションといったキャンペーンメッセージは通常、1回限りのコミュニケーションとして手動で送信しています。
2021年のSMSとプッシュ通知
Omnisendのコンテンツ担当ディレクターであるグレッグ・ザコヴィッツ氏は「Omnisendのレポートのなかで最大の驚きは、SMSとプッシュの自動配信の増加だ」と言います。
Omnisendの調査では、2021年のマーケティング担当者は、2020年に比べて75%も多くのプロモーション用SMSメッセージを送信。2020年のメッセージ量が2019年と比較してすでに前年比376%増加した後に伸びた数字です。プロモーションSMSメッセージの全体的な増加で、自動配信メッセージは前年比258%増となりました。ザコヴィッツ氏はこう言います。
SMSマーケティングは数年前から増加傾向にあり、2021年も例外ではありませんでした。SMSは今や確立された恒久的なオプトインマーケティングチャネルであると言ってよいでしょう。SMSを活用していないブランドは、競争力を保つために始める必要があります。
また、2021年にマーケターが送信したプロモーション用プッシュメッセージは2020年比で396%増、自動配信プッシュメッセージは同699%増加しました。
自動配信メールと同様に、消費者はキャンペーンメッセージと比較して、「自動配信SMSや自動配信プッシュメッセージから購入する可能性が高い」とザコヴィッツ氏は話します。
キャンペーンSMSメッセージのコンバージョン率は、2020年の0.28%から2021年には0.25%にわずかに低下しました。しかし、2021年の自動配信SMSメッセージのコンバージョン率は0.62%に上昇し、2020年と比較して20%増加しています。
プロモーションSMSメッセージのクリック率は、2020年の10.6%から2021年には11.5%に上昇。自動配信SMSのクリック率は、2020年の11.8%から2021年には12%に上昇しました。
2021年のメールトレンド
Omnisendの調査によると、小売事業者のメッセージ施策で、自動配信メールが占める割合はわずか2.2%。しかし、マーケティングメールによる全購入の29.6%を生み出しています。
また、自動配信メールをクリックした消費者の34%が購入に至っているのに対し、メールマーケティングキャンペーンの配信メールをクリックした消費者の購入は7%であることも判明しています。ザコヴィッツ氏は言います。
自動配信されたメッセージは、行動ベースであるため、定期的に配信されるプロモーションメッセージよりもはるかに優れたパフォーマンスを発揮します。ユーザーがアクションを起こしたときにだけ、送信されるからです。
ザコヴィッツ氏は、自動配信メッセージは、オーディエンスのセグメンテーションを洗練させたものだと指摘します。
あるブランドは、「以前にセーターを購入したことがある」といった基準で、プロモーションメールの受信者をセグメントするかもしれません。しかし、これでは今すぐ購入したいというオーディエンスの興味について何もわかりません。
自動化すれば、最近ECサイトでセーターの商品ページを訪れた消費者にセーターに関するeメールを送信するよう、システムをプログラミングすることができます。消費者は、商品を積極的に閲覧しているときに購入する可能性が高いとザコヴィッツ氏は話します。
ただ、eメールキャンペーンが効果的でないとは言い切れません。キャンペーンのコンバージョンレートは現在、上昇しているとのデータもあります。2021年のキャンペーンメールのコンバージョン率は前年比14%上昇し、最終的に0.1%だったことがOmnisendの調べでわかりました。
一方、自動配信メッセージのコンバージョン率は、2020年と比較して2021年は2.8%減少。2021年のコンバージョン率は1.9%であったこともわかっています。
ウェルカムメッセージ(コンバージョン率2.8%)とカート破棄メッセージ(2.4%)は、2021年に送信されたすべての自動配信メールのなかで最も高いコンバージョン率を生み出しました。一方、Omnisendのデータによると、購入期限切れと商品レビューのメッセージは、前年比で最も大きな減少を示しています。ザコヴィッツ氏こう言います。
メールマーケティングが終わったわけではありません。それどころか、SMSや他のオプトインチャネルと補完することで、これまで以上に効果的になる可能性があります。
小売業が今すべきこと
2022年、小売事業者やブランドはSMSマーケティングに「全力投球」するべきだとザコヴィッツ氏は指摘。「消費者はこのチャネルをますます使うようになり、テキストメッセージが一般的なコミュニケーション形態となっています」と続けます。
SMSを採用するだけでなく、eメールと同じ自動化されたワークフローに組み込むことで、ブランドは適切な消費者に適切なメッセージを適切なタイミングで適切なチャネルから送信する能力を高めることができます。カゴ落ちが発生し、その後eメールとSMSメッセージを受信することを考えてみてください。消費者は、最も便利なチャネルで簡単にカートに戻ることができるのです。(ザコヴィッツ氏)
またザコヴィッツ氏は、ブランドが長年続けてきた大幅な値引き合戦から手を引くべきとの考えも示しています。
“今すぐ買う”という行動は、希少価値を強調するような、より伝統的なマーケティング戦術を試すきっかけになっています。
また、「消費者のプライバシーを侵害しない方法でデータを収集する必要性も強く意識されている」とザコヴィッツ氏は指摘。消費者はeメールやSMS、プッシュ型メッセージにオプトインしなければならないため、より効率的なデータ収集の重要性が増しているのです。
「有料ソーシャルメディアなどの有料チャネルの競争、コスト、データ所有権が複雑化するにつれ、ブランドは顧客データを横断的に、自社で管理できる可能性を認識しています」とザコヴィッチ氏は述べています。