Digital Commerce 360[転載元] 8:00

Amazonは販売事業者向けの年次カンファレンス「Accelerate(アクセレレート)」で、新たなAIツール「Project Amelia(プロジェクト・アメリア)」を公表しました。そのほかにも、AmazonはさまざまなAIツールのリリースを計画しています。Amazonが計画している、AIを活用した販売事業者向け支援策をまとめます。

生産性向上と事業成長に寄与する「Project Amelia」

Amazonは9月に実施した「Accelerate」で、販売事業者向けの新たなAIツール「Project Amelia」を発表しました。

「Project Amelia」は、たとえば売り上げやWebサイトのトラフィックなどの指標に関するインサイトを提供するなど、販売事業者の生産性アップと事業成長を促進するためのAIツール。

Amazonが提供するAIツールの1つ「Project Amelia」(右下。画像はAmazonのニュースリリースから編集部がキャプチャ)
Amazonが提供するAIツールの1つ「Project Amelia」(右下。画像はAmazonのニュースリリースから編集部がキャプチャ)

Amazonのワールドワイド・セリングパートナー・エクスペリエンス担当副社長であるメアリー・ベス・ウエストモアランド氏は、ニュースリリースで次のように説明しています。

「Project Amelia」は、使い手となるそれぞれの販売事業者に合わせた生成型AIベースの知見を提供し、販売事業者が事業運営で成功するために必要なインサイト、アドバイス、手法をいつでも即座に提供します。(ウエストモアランド氏)

「Project Amelia」の活用イメージ(動画はAmazonのニュースリリースから)

「Project Amelia」についてウエストモアランド氏は、「販売事業者がいつでも頼りにできるパートナー」と説明します。「Project Amelia」は、Amazonのサードパーティ販売事業者向けプラットフォームであるセラーセントラルで提供しています。

現在は米国の一部の販売事業者向けにベータ版として提供。今後、数週間でより多くのユーザーに展開する予定で、2024年の後半には多言語対応でグローバルな展開も計画しています。

販売事業者ごとにカスタマイズしたアドバイスを提供

Amazonが提供するAIアプリケーションを開発するためのクラウドプラットフォーム「Amazon Bedrock」を搭載した「Project Amelia」は、AI機能とAmazon固有のマーケットプレイスに関するインサイトを組み合わせ、販売事業者によりカスタマイズした知見を提供します。

たとえば、販売事業者が「ホリデーシーズンに向けて準備すべき最も重要なことは何ですか?」と質問すると、販売事業者ごとにパーソナライズされたアドバイスを「Project Amelia」から得ることができるとウエストモアランド氏は説明しています。

また、売り上げ、販売個数、Webサイトのトラフィックなど、販売事業者の最新ステータスやビジネス上の指標を、前年比で示しながら提供します。販売事業者は「綿のTシャツの販売状況はどうですか?」といった、よりターゲットを絞った質問をすることで、商品固有のデータをより深く掘り下げることができるそうです。

将来的には、「Project Amelia」は「300枚の商品を配送中ですが、レポートに反映されていません。調べてもらえませんか?」といった物流面の解決など、より複雑なタスクを処理できるようになる見通しです。

ウエストモアランド氏は、「Project Amelia」が販売事業者に代わって行動を起こす可能性があると指摘しています。「Project Amelia」の機能の発展について、Amazonは具体的なスケジュールを明らかにしていませんが、AIがルールや権限を逸脱せず自律的に動作することが期待されます。

動画広告の作成や商品詳細ページを充実させる動画と画像のAIツール

「Accelerate」において、「Project Amelia」のほかにも、新たなAI搭載ツールを発表しました。Amazonの広告ソリューション「Amazon Ads」の新しいツールである「Video Generator」です。

「Video Generator」は、1枚の商品画像からカスタム動画を生成できるので、簡単に動画広告を作成できます。Amazonは、広告主からのフィードバックと業界のトレンドに基づいて「Video Generator」を開発しました。

Amazonはニュースリリースのなかで、米国の動画マーケティング会社Wyzowlの調査を参考に「2024年は消費者の89%がブランドからの動画をもっと見たいと望んでいる」としつつ、「企業は動画マーケティングを運用する上のハードルとして時間とコストがかかることをあげている」説明しています。

「Video Generator」の活用イメージ(動画はAmazonのニュースリリースから)

さらに、Amazonが提供する画像生成ツール「Image Generator」の機能の1つ「Live Image」を使用すると、販売事業者はキャンペーン用の短いアニメーションビジュアルを作成できます。

「Video Generator」と「Live Image」は現在、米国の一部の広告主向けにベータ版として提供しています。

さらに、販売事業者が商品詳細ページを充実させるのに役立つ、画像カルーセルなどのカスタムコンテンツ作成ツール「A+ Content(エープラスコンテンツ)」も発表しました。このツールを活用することにより、販売事業者は売り上げが最大20%アップすると説明しています。

「A+ Content」によって、ブランドは画像カルーセルや比較表を備えたカスタム商品ページを作成できるようになり、時間のかかっていたプロセスを効率化できます。現在、米国のブランドは無料で利用でき、年内までには国際的な展開が予定されています。

分析ツールを強化

新たな分析ツールは、販売者事業者のデータマーケティングをさらにサポートします。分析ツールの機能と、販売事業者にもたらすメリットは次の通りです。

  • 「Customer Journey Analytics」は、バイヤーが商品を選ぶ際の傾向と問題点を特定し、顧客の購買体験とコンバージョンの改善を支援
  • 従来よりも強化された「Tailored Audiences(テーラードオーディエンス)」は、興味・関心によって顧客をセグメント化し、クロスセルと新規顧客獲得を促進
  • 「Business Planner」はAIを活用し、売り上げと販売データを基に、販売事業者の事業成長のタイミングを特定
  • 近日中に試験運用が開始される「Custom Analytics」は、販売事業者に対して、売り上げから広告までの主要な指標を包括的な管理画面によって提供

分析ツールは、2023年にAmazonが提供を始めた「Brand Tailored Promotion」を基盤としており、特定の顧客層に販売事業者が割引を提供できるようにしています。Amazonによると、サービス開始以来、10万人以上の販売者が「Brand Tailored Promotion」を利用しており、約800万人の新規顧客にリーチして、1500万件以上のリピート購入を促進しています。

AI搭載ツールの拡大

Amazonは、自社が提供するサービス全体でAIを着実に拡大してきました。2024年の初頭、Amazonは販売事業者が商品リストを作成できるAI搭載ツール、AIショッピングアシスタントの「Rufus」、企業や開発者向けの「Chatbot Q」を導入しています。

商品リストを作成できるAI搭載ツールの利用イメージ(画像はAmazonのニュースリリースから編集部がキャプチャ)
商品リストを作成できるAI搭載ツールの利用イメージ(画像はAmazonのニュースリリースから編集部がキャプチャ)
開発者をサポートする「Chatbot Q」(動画はAmazonのニュースリリースから)

Amazonはクラウドベースの音声サービス「Alexa(アレクサ)」のAI搭載アップグレードにも取り組んでいると報じられており、これは新たな有料サブスクリプションサービスの一部となる予定です。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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