Digital Commerce 360[転載元] 9/19 8:30

米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』と調査会社のBizrate Insightsが消費者1013人を対象に実施したECの最新調査によると、2024年調査も配送に関して「無料」「迅速な配送」が上位にあがりました。10人中8人以上が配送の最優先事項に「送料無料」(81.34%)をあげ、2位の「迅速な配送」(68.41%)を引き離しました。配送スピードとそのコストは、調査結果の上位にあがる重要なテーマ。回答者の55.68%は、小売事業者が商品在庫を保管し、すぐに出荷できる状態にしておくことが重要だと答えています。

2024年もEC顧客が求める配送は「無料」「迅速」

2024年に実施したアンケート調査の結果によると、消費者が好むのは送料無料だけではありません。回答者の半数以上(53.11%)が、返品する際の送料も事業者負担とし、無料にしてほしいと答えています。さらに、小売事業者の返品ポリシーが柔軟であること(26.26%)、返品を受け付ける実店舗があること(17.87%)を好んでいます。

配送料金に関しては、回答者のうち3分の1以上にあたる35.83%が「送料が無料でない場合、リーズナブルな金額で設定されていることが最も重要」だと回答しました。

配送に求めるスピードは「当日配送」「翌日配送」

配送スピードに関する質問の回答結果を見ると、消費者の約4分の1(24.38%)は、注文当日の配送が最も重要であると回答しています。これに類似し、4分の1以上の消費者(28.43%)は、翌日配送に対応することが最も重要だと答えました。

少数派ですが、ECで注文した荷物を自分で受け取ることを好む人も見られました。具体的には、9.97%の消費者が、小売事業者にロッカーでの受け取りを配送サービスの1つとして提供することを望んでいると答えました。ロッカーでの荷物受け取りを提供している配送会社は、UPS社、FedEx社、Walgreens社などです。

6.02%の消費者は、オムニチャネルで受け取りできることを望んでいると回答しました。これには、ECで購入した商品の店舗受け取り(BOPIS)と、車中で商品を受け取れるカーブサイドピックアップが含まれています。

最も回答者が少なかった配送方法は、「小売事業者が持続可能な配送方法を採用していることを重視する」(4.94%)というものでした。

ECで購入先の小売事業者を選ぶ際、送料や配送に関して最も重視する点(上位5つを選択/出典:『Digital Commerce 360』と調査会社Bizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)
ECで購入先の小売事業者を選ぶ際、送料や配送に関して最も重視する点(上位5つを選択/出典:『Digital Commerce 360』と調査会社Bizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)

7割超の回答者が送料無料サービスを利用

アンケートに回答した消費者の4分の3近く(72.85%)が、過去6か月の間、EC利用時に送料無料サービスを受けました。配送料を支払ってECを利用した人は44.03%となっています。また、通常よりも配達が速いスピード配送を利用したと回答した人は12.64%でした。

42.35%の人がAmazonの注文で当日配送を希望しています。

回答者の約4分の1(25.07%)は、米最大のディスカウントストアチェーンTarget、世界最大の家電量販店Best Buy、米に本社を置くホームセンターチェーンThe Home Depotなど、実店舗を持つ小売事業者からの当日配送を望んでいます。

回答者のうち15.99%の人は、EC専業の家具販売事業者Wayfairや、過剰在庫や処分品を集めて格安でオンライン販売するOverstock(現在はBeyond Inc.傘下)など、実店舗を持たないAmazon以外の小売事業者に当日配送を注文しています。

約4分の1(25.17%)の人は、注文した商品の販売者が他の注文とまとめたり、配送時のサステナビリティを向上させたりできるように「配送が遅くなっても待つことに同意した」と回答しました。

過去6か月の間に、EC利用時に使ったサービス(該当するものを全て選択/出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)
過去6か月の間に、EC利用時に使ったサービス(該当するものを全て選択/出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)

実店舗で受け取る人は2割超

消費者はECで何を注文し、それらの商品をどのように受け取ることを選んでいるのでしょうか? 調査結果から見られた傾向は次の通りです。

  • 食料品以外の商品をECで注文し、実店舗で受け取る(24.28%)
  • 食料品の宅配(23.49%)
  • 食料品をECで購入し、実店舗で受け取る (22.61%)
  • 食料品、食料品の即日配達サービスを展開しているInstacart社、フードデリバリーを展開しているDoorDash社、ギグワーカーによる宅配サービス事業を展開しているRoadie社などが運営するアプリの配達サービスを利用して食料品を注文(12.83%)
  • Instacart社、DoorDash社、Roadie社などが運営するアプリの配達サービスを利用して、食品以外の商品を注文(8.98%)

カゴ落ちにつながる理由

ECで注文する商品の決済時に、アンケートに回答した消費者のうち44.62%が配送料を安く抑えるために時間のかかる配送オプションを選択しています。

また、4分の1近くの人が「在庫や配送の問題で遅延した」(24.09%)と回答。さらに、「在庫や配送の問題で注文をキャンセルされた」(17.18%)と答えた人も見られました。

過去6か月の間に、ECでの注文時に経験したこと(該当するものを全て選択/出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)
過去6か月の間に、ECでの注文時に経験したこと(該当するものを全て選択/出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)

消費者にとって不便を感じるいくつかの理由は、消費者がECでカートを放棄するのに十分なものでした。調査結果によると、カートを放棄する理由として次の7つが挙げられました。

消費者がカゴ落ちする主な理由

  1. 商品が在庫切れだった(34.16%)
  2. 送料が高すぎる(32.48%)
  3. 注文が時間通りに届かない(27.44%)
  4. 配送に時間がかかりすぎる(18.66%)
  5. 配達日が不明確(12.44%)
  6. 消費税が高すぎた(6.81%)
  7. 当日配送ができなかった(6.42%)

ECで注文した商品の多様な返品方法

ECで注文した商品の受け取りや返品には、さまざまな方法があります。小売事業者やブランドは、実店舗の有無、配送業者との提携、消費者が利用できる場所などに応じて、さまざまな方法を提供しているからです。

過去6か月の間、ECを利用した際に経験した配送や返品を聞いたところ、3分の1以上の人が「ECで注文した商品を小売店の店舗で受け取った」(35.44%)と回答しています。ECで購入し店舗で商品を受け取る「BOPIS」は、店舗を持つ小売業者にとって一般的な配送サービスの1つであり、その姉妹オプションであるカーブサイドピックアップも30.4%が利用したと回答しています。

回答者が挙げた最も多い返品方法は「小売事業者の小売店の店内で返品する」(16.98%)というものでした。また、16.88%の消費者は、ECで注文した商品を小売店に返品するのではなく、そのまま手元で持っていてよいと指示されました。それでも返品に対する返金を受け取っています。

過去6か月の間、ECを利用した際に経験した配送や返品(該当するものを全て選択/出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)
過去6か月の間、ECを利用した際に経験した配送や返品(該当するものを全て選択/出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)

他の消費者はオンラインで注文し、配送先を以下のような場所に指定しました。

  • 小売事業者の店舗以外の受け取り場所(15.6%)
  • Amazonが運営する、集荷と返品を取り扱う店舗(15.0%)
  • ショッピングモールやコンビニなど、Amazon以外の場所に設置されたAmazonのロッカー(13.23%)
  • UPS社やFedEx社が運営するロッカーなど、荷物の宅配ロッカー(9.18%)

少数ですが、次のような方法で返品している消費者もいます。

  • ショッピングモール内での受け取り・返品センターで返品(7.5%)
  • Amazon以外で購入した商品を、米薬局グループ大手であるWalgreensのような小売店の返品コーナーで返品(7.4%)
  • Amazon以外で購入した商品を、返品事業を担うHappy Returnsのような実店舗で返品(7.11%)
  • 車中から返品(4.34%)

サステナビリティ、関心はあるが追加料金は支払いたくない人が多数

回答した消費者の5分の1以上(23%)が、環境について懸念しているものの、環境に配慮した取り組みのために高いお金を払うつもりはなく、環境への配慮はあくまで小売事業者にのみ対応を求めています

ECが環境に与える影響について関心がなく、追加の料金も支払いたくないと回答した人は17.18%。その一方で、環境問題に関心があり、小売事業者が環境に配慮した考えを持っていたり取り組みを行っていたりするなら、そのために追加でお金を払う意思があると回答したのは14.02%でした。

この他、ポイント還元や次回注文からの割引などのメリットがあれば、環境に配慮した選択肢を選ぶと回答した人も18.07%います。

小売事業者の取り組みや環境への配慮に関して、自分の考えに最も近いもの(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)
小売事業者の取り組みや環境への配慮に関して、自分の考えに最も近いもの(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)

最も満足度が高い配送方法は宅配ボックス

アンケートに回答した消費者のほぼ半数近くは、自動運転車によるオンライン注文の配送に不安を感じています(45.01%)。また、同じく半数近くが、ドローン配送にも不安を感じています(44.72%)。

約3分の1の人は、自宅ガレージ内の配達(35.64%)にも、自宅のなかまで届ける配達(30.5%)にも抵抗があります。

この一方で、ガレージ配達を「非常に快適」だと感じている人は10.07%です。また、自宅のなかまで届ける配達に全く抵抗がなく「非常に快適」と回答している人は19.55%となっています。

さまざまな配送方法に対して、快適さを感じる度合い(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)
さまざまな配送方法に対して、快適さを感じる度合い(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)

消費者が従来とは異なる配送に安心できる条件

回答した消費者の半数以上(51.83%)は、小売事業者が盗難や破損に対して責任を負うという保証をする場合は、従来とは異なる配送方法に応じます。盗難や破損への保証を、小売事業者ではなく配送会社に求める人は49.46%となっています。

その他の消費者は、「自宅やガレージの堅固なセキュリティシステム」(28.04%)「自分の居住エリアに適した配送方法」(22.8%)「近隣での犯罪件数の減少」(22.51%)などの個人的な事情を、別の配送方法に応じる理由として挙げています。

別の配送方法を選んでも良いと思う条件(該当するものを全て選択/出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)
別の配送方法を選んでも良いと思う条件(該当するものを全て選択/出典:『Digital Commerce 360』とBizrate InsightsがEC利用者1013人を対象に行った調査)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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