4割が配送料を抑えるために「長めの配送オプションを選択する」。消費者1000人に聞いた満足度の高い配送方法【2023年調査】
ECビジネスにおいて、質の高い配送・配達サービスは、顧客に満足度の高い購入体験を提供するために不可欠です。小売事業者はこの観点で満足度を高めるため、懸命に努力しています。消費者は昨今、配送・配達サービスにどのような所感を持っているのでしょうか。また、小売事業者はどのような点を改善、強化すれば顧客満足度の向上に直結するのでしょうか。調査結果からこれらを解説します。
- 消費者がオンライン通販事業者を選択する場合、送料無料が店舗選定の最大要素
- オンライン通販利用者の77%が、過去6か月間の配送状況について10点中8点以上と評価
- オンライン通販利用者の39%が、注文商品の在庫切れで注文を断念。23%が同様の事情で注文をキャンセル
配送は商品の質、価格に次ぐ重要トピックス
事業者が販売する商品とその値付けは顧客満足のスタートラインですが、同時に、配送と配達が担う役割も大きくなっています。商品がどんなに良くても、配送や配達に不備があった場合、消費者はそのことを忘れないからです。
米国のEC専門誌『Digital Commerce360』と調査会社のBizrate Insigtsは2023年、オンライン通販利用者1017人を対象に、配送体験、期待値、配送対応、環境への配慮が、消費者の選択にどのように関わっているのかについて調査しました。
調査実施年 | オンライン通販利用者調査の調査人数 |
---|---|
2023 | 1017人 |
2022 | 1116人 |
2021 | 1032人 |
2020 | 1000人 |
オンライン通販利用者は配送サービスに“おおむね満足”
オンライン通販を利用した消費者の77%が、過去6か月間の配達に対して10点満点中8点以上と評価しています。平均を上回る6点から7点だったのは15%で、5点以下は8%にとどまりました。オンライン配送に対する消費者の満足度はほぼピークに達しています。8点以上の評価を4年間で見ると、2023年の数値は過去の高水準と同等となっています。
調査実施年 | 過去6か月間の配達に対して8点以上のスコアが占める割合 |
---|---|
2023 | 77% |
2022 | 67% |
2021 | 77% |
2020 | 79% |
多くの小売事業者が2023年の業績を維持、もしくはそれを上回ろうと、自社のサービス面の欠点を理解して配送を強化しています。それは、オンライン通販利用者から信頼を得て、今後も利用者から支持を集めることに直結するからです。
大多数の消費者が「送料無料」に引かれる
買い物をする小売事業者を選ぶとき、オンライン通販利用者の多くが重要視するのは、支払い料金の節約につながる要素です。その最たるものが、アンケート回答者の82%が1位に選んだ、送料を事業者が負担する「送料無料」です。
このほか、「返品送料無料」も小売事業者を選ぶトップ5に入っており、リスクの少ない買い物ができる点から消費者の間で人気となっています。
小売事業者が送料無料を提供できない、あるいは提供しない場合でも、「リーズナブルな配送料金の設定が購入の決め手になる」と38%が回答しています。
配送の重要な要素、2位は「スピード」
オンライン通販利用者は、Amazonの利用経験によって注文商品を早く受け取ることに慣れています。そのため、配送サービスで重要視する要素の第2位には配送スピードがランクしました。各小売事業者は、消費者の期待が高まるなか、最も望ましいロジスティクスソリューションと関連コストを精査する必要があります。アンケートで評価されているのは、「翌日配送」が23%、「当日配送」は17%とわずかな差でした。
一方、「サステナブルな配送方法」はまだ8%にとどまっており、消費者の注目を集め始めたばかりです。商品の「ロッカーでの受け取り」は興味深いサービスですが、調査対象者の7%しか評価していませんでした。
59%が商品在庫の有無を意識
商品在庫の確保は3番目に重要な要素で、アンケート調査では59%が商品の在庫と出荷準備が整っていることが重要だと回答しています。商品在庫は不可欠なため、小売事業者は常に在庫が十分かどうかを気を付ける必要があります。
「質の高いカスターサービス」もオンライン通販利用者が重要視する要素のトップ5に入り、回答者のうち52%が評価しています。また、30%の回答者が、配送経験に関するカスタマーレビューを評価。このほか、27%が、小売事業者の返品ポリシーが柔軟で、買い物をする際に選択肢があることを高く評価していると回答しました。
回答者のうち17%が「店舗での返品対応」をあげており、これはオムニチャネル集荷機能(8%)を支持する人の約2倍でした。実店舗でのカーブサイド返品(車中からの商品返品)は8%と低い結果となりました。
12%が配送のスピードアップの料金を追加
ほとんどの消費者が送料無料サービスを享受していますが、状況に応じて送料を支払う場合もあります。送料無料は消費者からの人気が高いですが、多くの消費者は日常的に送料を支払っています。オンライン通販利用者の4人に3人が送料無料を利用しているものの、半数の利用者は送料を支払うことがあり、12%は通常の配送よりも早く商品を受け取ることができる「スピード配送」の料金を支払っています。
当日配送サービスは、Amazonが広く提供していることを考えると、オンライン通販利用者にとってより重要な要素になりつつあります。オンライン通販利用者の経験では、39%がAmazonの当日配送で購入。さらに、25%が実店舗を持つECサイトから購入し、15%がAmazon以外のEC専業サイトから購入しています。
多くのユーザーが支払いを抑えられる配送オプションを支持
消費者の多くは支払いを抑えるために、「長めの配送オプションを選択する」(46%)、「送料が高すぎるため商品の注文を断念する」(36%)という行動を選択。また、「消費税が高すぎるため注文を断念する」(7%)という回答もありました。
商品在庫の欠品による、注文した商品の到着の遅れは依然として懸念事項であり、小売事業者と消費者の双方にとって在庫切れと配送の両方が頭痛の種となっています。調査によると、39%が在庫切れで注文を断念し、31%が在庫や配送の問題で注文が遅れ、23%が同様の事情で注文をキャンセルしています。
到着のタイミングも重要
配送のタイミングも重要となります。オンライン通販利用者の29%が注文を断念した理由として、「時間内に届かない、配達に時間がかかりすぎる」(20%)、「納期(=配達日)が不明確」(12%)と回答。一方、「当日配送が不可能な場合に注文を断念した」と答えたのはわずかに7%でした。さらに8%は、置き配で配達された商品を泥棒されたり、荷物の盗難の被害に遭ったと答えています。
店舗での配送対応はアピールポイント
オムニチャネルは今や定着したサービスで、調査回答者の38%が注文を受け取るためにBOPIS(オンラインで購入した商品の店頭受け取り)を利用し、31%がカーブサイド(商品の車中受け取り)オプションを利用していることから、BOPISやカーブサイドオプションは店舗型の小売事業者が整えておくべきサービスといえます。
従来のタッチポイント以外で荷物を受け取ることができる場所については、14%が指定した受け取り場所を利用したと回答し、同数がAmazonが運営する店舗、またはAmazon以外の場所にあるAmazonのロッカーで注文を受け取ったと回答しました。受け取りロッカーで注文を受け取った人は7%でした。
23%がAmazonの商品を実店舗に返品
最も注目すべき傾向としては、オンライン通販利用者の23%がAmazonの商品を実店舗に返品していることです。これは、「オンラインで注文した商品を小売店の店舗で返品した」と回答した20%を上回る結果です。興味深いのは、21%の商品は返品せず消費者の手元にとどめておくように言われ、返金処理のみが行われたことです。
その他の返品方法は、実店舗に返品(5%)、商品などの物を預けるドロップオフポイントに返品(5%)、カーブサイド返品(5%)となっています。
環境には「関心あるが、お金を余分に支払うほどではない」
消費者は環境保全への関心を示すようになってきていますが、2023年の調査データによると、必ずしもそのためにお金を払うことを望んでいるわけではなく、「関心がある」(53%)、「関心がない」(27%)、「意見がない」(20%)という結果になっています。
環境に配慮した取り組みを支持するにはコストがかかるため、消費者は自分の選択とそれが環境に与える影響について理解する必要があるでしょう。年々、より多くのオンライン通販利用者が、配送方法に関して意見を述べ、環境保護の立場を採るようになっています。環境に関する意見の変化は以下の通りです。
2023 | 2022 | 2021 | |
---|---|---|---|
関心がある | 53% | 50% | 44% |
関心がない | 27% | 21% | 23% |
意見なし | 20% | 29% | 33% |
最も快適な配送は自宅前の荷物受け
従来の配達方法とは異なる配達に対する消費者からの評価は分かれますが、自宅の前での荷物受け取りが最も快適であることに変わりはありません。
2023年から2021年までの3年間における、自宅での配達と、商品を注文した消費者の在宅/留守にかかわらず、指定されたガレージや冷蔵庫まで生鮮品を届ける配送サービス「インホーム・デリバリー」の快適性を表す数値は以下の通りとなっています。
2023年 | 2022年 | 2021年 | |
---|---|---|---|
家の前にある荷物の受け取り場所 | 71% | 80% | 76% |
インホーム・デリバリー | 52% | 60% | 54% |
ガレージ内配達/荷物受け | 40% | 57% | 44% |
自動運転車による配達 | 34% | 53% | 36% |
ドローンによる配達 | 31% | 52% | 39% |
オンライン通販利用者の多くは、配送で問題が発生した場合の保証を求めています。回答者の54%が小売事業者からの保証を望んでおり、配送業者からの保証も53%と僅差で続いています。また、以下のような情報は消費者にさらなる安心感を与えます。
- 他のオンライン通販利用者からのフィードバック(33%)
- 評判の良い情報源の情報(28%)
- 配送会社からの情報(27%)
- 小売店からの情報(24%)
消費者がオンライン通販の利便性をより感じるためには、ロケーションとセキュリティの設定が重要となります。自宅のセキュリティシステムとガレージセキュリティシステム(信頼できる情報源からの代替デリバリーオプションに関する情報)は、オンライン通販利用者の28%が最も信頼しています。さらに26%のオンライン通販利用者が、「ロケーションによってはより安全だと感じる」という回答をしています。
注文した商品の配送と配達に関する消費者の満足度は、年々高くなっています。小売事業者によって、送料無料サービス、迅速な配送、商品の在庫が十分に用意されていることは、これまでに続き、消費者が小売事業者を選ぶ際の決め手になり得ます。
小売事業者は、送料無料が消費者にどのように利用されているかを再評価し、定期的に検証する必要があります。また、注文された商品の即日配送がどれくらい選択されているかをチェックすることは、市場における競争の状況や、日々変化し続ける消費者のニーズを理解することにつながります。
支払い料金の節約につながるサービスと、注文した商品が早く配達されることは、消費者から常に需要があります。このほか、小売事業者と消費者の双方が環境保護のための選択肢を視野に入れることで、地球環境に配慮したソリューションがこれまで以上に提供されることを期待したいものです。同じ地球に生きる私たちは皆、運命共同体なのですから。