Digital Commerce 360[転載元] 2023/8/31 7:00

自社の成長スピードに、ロジスティクスが追いつかない――。こんな悩みを抱える小売事業者も少なくないでしょう。今回は、在庫・物流の効率化とコストダウンを一挙に実現した事例を紹介します。米国の家族経営農場で、豆科の植物や穀物を顧客にD2Cで販売しているPalouse Brand(パルース ブランド)は、グローバル配送事業者UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)で4PL(フォース・パーティ・ロジスティクス)ロジスティクスを手がける物流子会社と協業して発送を効率化、フルフィルメントコストを20%削減しました。

記事のポイント
  • 4PLは、フルフィルメントの過程における小売事業者と3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)との関係を管理する役割を果たす
  • Palouse Brandは、UPSの4PL子会社を活用し、出荷にかかる時間とフルフィルメントコストを削減
  • UPS子会社の4PLは主に、年間商品総売上高が500万ドルから2億5000万ドルの小売事業者にサービスを提供している

コロナ禍で大きく成長したPalouse Brandの悩み

Palouse Brandは2020年以後、業績が好調に推移しました。「売上高はAmazonの1日の注文上限となる7000個を突破するほどでした」とPalouseのサラ・メイダー創業者兼CEOは言います。

この理由は、新型コロナウイルス感染症の影響です。ただ、小規模なビジネスを展開していたPalouse Brandにとって、需要拡大による急激な成長には対応できませんでした。成長幅に対応していくためには、一部の販売チャネルを閉鎖せざるを得ませんでした。


在庫確保に難航、FBA利用も追いつかず

Palouseは、Fulfillment by Amazon(FBA)と一部注文を自社で対応するハイブリッド型の配送モデルを採用していました。しかし、FBAを利用した配送システムは、注文ニーズを満たすためのに十分な拡張はできませんでした

荷物の一部を配送センターに出荷し、その配送センターから直送できるソリューションが必要でした。注文の需要に追い付くことができず、十分な速さで在庫を確保することができなかったのです。(Palouse Brand メイダー氏)

Palouse BrandのAmazonでの販売ページ(画像はAmazonでの販売ページから編集部がキャプチャ)
Palouse BrandのAmazonでの販売ページ(画像はAmazonでの販売ページから編集部がキャプチャ)

その後、Palouse Brandは物流業務について、長年依頼していた米国郵政公社(USPS)との取引を解消しました。USPSが取り扱う荷物のサイズを変更したためです。このため、メイダー氏は別のソリューションが必要だと考えました。

3PLと4PLの違いとは?

3PLは、小売業者がフルフィルメントをアウトソーシングするために利用するロジスティクス・プロバイダーです。4PLはさらに一歩進み、小売業者と3PLとの関係を管理したりコンサルティーションする役割を担います。

UPSの4PL子会社であるWare2Goのスティーブ・デントンCEOは、「これまでの歴史を踏まえると、米国のフォーチュン誌が年1回発表する企業の総収益ランキング『フォーチュン500』に名を連ねるような企業や大手ブランドでない限り、多くの中小企業は自社商品の配送会社を断片的に組み合わせる必要があるでしょう」と指摘します。

クライアント企業がWare2Goのサービスを通じて倉庫とつながり、フルフィルメントとロジスティクスの両面の関係を簡潔にすることです。私たちのネットワークには現在、36の倉庫があり、プラットフォームを介して倉庫をつないでいます。(Ware2Go デントン氏)

Ware2Goは2022年、Palouse Brandと提携しました。

リーズナブルなロジスティクスコストを提案

Ware2Goの提供するソリューションは、顧客が1年間の出荷履歴と倉庫の所在地をアップロードすると、分析結果に基づいて配送料金などを提案します。

分析結果では、平均コストや輸送時間などの情報を表示。Ware2Goは平均的な注文に基づいて、小売事業者が輸送時間とコストを削減するために別の倉庫を設置すべき場所を推奨します。Ware2GoはUPS傘下のグループ企業として、クライアント企業に、よりローコストなロジスティクスコストを提案することが可能です。(Ware2Go デントン氏)

デントンCEOはこれに加えて、「UPSのグループ企業として、パートナーである3PL企業からは、かなり条件の良い物流代行費用を提示されています。Ware2Goが提携しているどの倉庫パートナーにとっても、UPSグループは最大の顧客だからです。クライアント企業は何百数にものぼっています」と説明します。

デントンCEOによれば、Ware2Goのソリューションを利用する企業は、フルフィルメントにかかる費用が平均20%から30%ダウンするそうです。このコストダウンの一部は、デントンCEOが「Uber モデル」と呼ぶ仕組み(小売事業者は自社で倉庫を所有するのではなく、倉庫や作業員を利用した際に料金を支払う仕組み)による効果です。

商品の回転率を速め、在庫維持費を削減

Palouse Brandは、準備を開始してわずか2週間で新しい4PLを稼働させました。Palouse BrandはFBAの利用を中止し、Ware2Goが提供する「Seller Fulfilled by Prime」に切り替えました。

「AmazonのPrime会員バッジの表示を維持し続けるのは重要なことです」とメイダー氏は話します。Prime会員には1日または2日で無料配送されることを示すサインが、Amazonの該当商品に表示されています。Prime会員バッジの有無は、顧客の購買意欲や満足度に影響します。

Palouse BrandはWare2Goと組むことでPrimeバッジの権利を維持し、自社ECサイト「PalouseBrand.com」からの注文では、送料無料で2日以内の配送を始めました。

ECサイト「PalouseBrand.com」(画像は編集部がサイトからキャプチャ)
ECサイト「PalouseBrand.com」(画像は編集部がサイトからキャプチャ)

Ware2GoとPalouseは48時間のサービスレベル契約(SLA)を締結。Ware2Goは、Palouse Brandのニーズに応えるために、販売エリア全体に5つの倉庫を用意しました。

このおかげで、倉庫に商品が到着してから48時間以内にオンラインで販売できるようになりました。過去に利用した他の倉庫と比べると、オンラインで販売できるようになるまでの期間が最大90日早まりました。(Palouse Brand メイダー氏)

従来は、「商品の輸送、出荷時間の締め切りまでには大きなタイムラグがあります」とメイダー氏。輸送時間と処理時間が1日増えるごとに、それを加味して出荷時間の締め切りに間に合わせなくてはならないため、Palouse Brandのコストは増加します。

Ware2Goとの提携で、在庫をより早く回転させることができるようになったため、従来のように莫大な在庫維持費がかからなくなり、Palouse Brandのビジネス全体に良い影響を与えました。

Ware2Goとのシステム導入後、Palouse Brandのフルフィルメントコストは20%削減できたということです。輸送にかかる時間は40%短縮され、注文があった顧客の98%に対して、受注から2日以内に出荷できています。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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