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ジェフ・ベゾス氏、ジャック・マー氏、ビル・ゲイツ氏が注目する物流テクノロジー業界の今

ネット通販企業が事業で成功するには、テクノロジーの活用によって物流の細部までを管理できるかが重要になる

Digital Commerce 360

2017年11月30日 6:30

ネット通販業界の成長によって、急増している貨物の移動をより効率化するため、物流関連へ多額の投資が行われている業界があります。それは、物流テクノロジー業界です。

ネット通販企業が成長するには、テクノロジーを活用して物流の細部まで管理できるようにすることが必要となります。つまり、物流テクノロジーの活用が重要となるのです。

アリババは約160億ドルを投資予定、Amazonは「空飛ぶ倉庫」の特許も

ビットコインが大きな盛り上がりを見せているようですが、時価総額はまだ660億ドル程度。ビッドコインほど魅力的には見えないものの、ビットコインの規模を大きくしのぐ業界があります。物流テクノロジー業界です。

私たちが着用、消費したりするモノの大半は、運送業界に依存しています。国際物流は実際、世界経済を動かし、雇用を創出し、効率化を促進し、グローバル経済を活性化しています。

しかし、過去20年間、物流業界は先端技術の採用に無関心で無頓着だったため、膨れあがる物量を前に混乱を避けることが難しい状況に陥っています。テクノロジーを活用し、より効率的なオペレーションを追求する動きが加速している昨今。「Uber」や「Airbnb」といったオンデマンドのようなスピードなどが求められるため、物流テクノロジー業界は急速に勢いを増しているのです。

サプライチェーンに投じる技術資金は毎年増え続けています。アリババは今後5~8年間で約160億ドルを物流に投資する方針を掲げており、ジャック・マー氏(アリババグループ創業者で現会長)の本気度が伺えます。

アリババのジャック・マー氏
ジャック・マー氏(画像はアリババの公式サイトから

Amazon(アマゾン)のジェフ・ベゾス氏(Amazon創業者でCEO)も同様です。過去数年間、アマゾンは物流に力を注ぎ、国際貨物運送会社として正式に登録しました。数十機の航空機を抱え、倉庫のグローバルネットワークを構築空飛ぶ倉庫、家庭向けドーロン用ランディングパッドなど、最新のラストワンマイル用配送オプションの特許も取得しています。

Amazonは航空機による配送を行う「Prime Air」も展開
航空機による配送を手がける「Prime Air」

また、ベゾス氏は個人的に物流運送会社Convoy Inc.へ投資しました。マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏もConvoy Inc.に投資をしているのです。

ジェフ・ベゾス氏(画像はAmazonの公式サイトから

物流分野で注目されるテクノロジー(および資本)

ここ数年、物流テクノロジーのベンチャー企業への投資が急速に伸びています。ベンチャーキャピタルのデータベースを提供するCB Insights社のレポートによると、2016年は物流テクノロジーに50億ドル以上が投資され、取引数は315件に上ります。

これらの取引は、物流テクノロジーという大きな括りの中のさまざまな分野で行われましたが、最も注目されているのは、EC物流(たとえば、アリババが支援するほぼ無名の物流会社で、ロジスティクスとサプライチェーン管理ソリューションを提供するBest Inc.はアメリカでIPOの予定がある)、貨物とサプライチェーン(国際貨物の発送見積もりをオンラインでワンストップ提供するFreightos社、中小企業向けにフルフィルメントサービスを提供するShipBob社<※編注:リクルートホールディングスも出資している>など、アマゾンのフルフィルメントの競合他社)、ラストワンマイル配送(トラックドライバーと貨物運送業者をマッチングさせる「Uber Freight」など)の3分野です。

テクノロジーを活用して自宅のドアまで荷物を運ぶ物流サービスの実現はもう一歩のところまで来ていますが、貨物運送は少し遅れをとっています。トラック輸送は、1990年代半ばの道路交通の改善によって発展。最大の物流会社の1つであったFreightquote社は、トラック会社と顧客を仲介するサービスを提供していましたが、2014年に3億6500万ドルで売却されました。

現在は、「Uber」のようにリアルタイムでトラックと顧客を結び、オンデマンド予約と出荷管理が可能なサービスが登場しているのです。

「Uber Freight」は物流テクノロジーの代表例
トラックドライバーに届いた「Uber Freight」から報酬のお知らせ(画像は「Uber Freight」の動画からキャプチャ)

貨物とサプライチェーンの分野では、輸入業者と貨物会社が直接やり取りする場を提供する企業が出てきています。トラック運送市場のスタートアップ企業のように、オープンで競争力のある市場を作り、運送を合理化しているのです。テクノロジーによって物流コストを最適化し、物流コストの鍵となる要素を理解、透明性を高めることによってより良い意思決定ができる環境を作っているのです。

ECとテクノロジーの融合

アリババ、アマゾン、中国の大手オンライン小売事業者JD.comといった大規模サプライチェーンと豊富な資本を持つ企業は、マーケットプレイスのオペレーション上、物流の重要性を理解しています。

消費者が物流サービスの改善を実感できるのはラストワンマイルに関する配送でしょう。消費者の50%は、遅延や価格など配送に関する要因が購入に影響すると回答。その結果、2日以内の配送、当日配送、そして2時間配送が広がっていきました。最初は大きなメリットとして考えられていたスピード配送は、もはや必要最低限なサービスになってきています。

モバイルプラットフォーム、スマートテクノロジー、強化されたパフォーマンス、アルゴリズムマッチングなど、革新を必要とする物流分野に世界中が注目している現在の状況は、ハイテク企業にとっても大きな追い風です。

今の状況は、グローバルな小売の仕組みの根幹が大きく変わる可能性を秘めているのです。自分の部屋に閉じこもっていても、アリババやSourcify(世界中の工場と顧客をつなぐプラットフォーム)といったプラットフォームを通じて中国から物を取り寄せ、オンライン貨物プラットフォームを使って自国に輸入。アマゾンやWooCommerceといったECプラットフォームを通じて販売し、ShipBobのような配送企業から出荷することができるのです。

物流の可能性

都市化、人口増加、インフラの老朽化は、「今までのビジネス」の有効性を低下させてしまいます。一方、規模の大きいグローバル市場は、より効率的でコストパフォーマンスが高く、持続可能なビジネスモデルを求めています。ネット通販企業などの成功または失敗は、どのように物流の細部までを管理できるかにかかっているのです。テクノロジー活用は、消費者のサービス需要を満たし、支払うマージンを維持しながら、競合との差別化を図るための最良の方法です。

小売業とテクノロジー側が、物流テクノロジーの可能性を最大限に引き出すにはさらなる革新が必要です。まだ道半ばなのです。

しかしながら、ベゾス氏、マー氏、ゲイツ氏がこぞって物流テクノロジーに注目していることを考えると、そこには企業が成長するための大きな可能性を秘めていることは間違いないでしょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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