東南アジアで「アマゾンvsアリババ」6.2億人のECマーケット巡る熾烈な戦いが始まる
東南アジア地域で、アリババとアマゾンの熾烈な戦いが始まろうとしています。アリババが2016年に10億ドルで買収した「LAZADA(ラザダ)」が、対立の焦点になるようです。
アマゾンが2017年に東南アジアへ進出する見込みが高いとされるなか、東南アジア最大のECサイトであるラザダが先制攻撃を仕掛けています。
ラザダは中国や韓国の企業と提携し、東南アジア地域のみならず、その他地域でも配送ネットワークを拡大。また、サプライチェーンを強化するために、投資先や買収先を探しています。シンガポールで食品のネット通販を手がける大手レッドマートを買収。2017年に、成功が難しいとされている食品のオンライン販売マーケットに参入する予定です。
このような状況が続いている背景には、ラザダのホームグラウンドである東南アジアが、アリババのジャック・マー氏とアマゾンのジェフ・ベゾス氏の新たな戦場になっていることがあげられます。ECの拡大に必要な物流と支払いのインフラがまだ十分に整っていないもの、6億2000万人もの消費者がオンラインショッピングを楽しむ東南アジアは、インターネット分野で世界一の成長を遂げています。
世界最大のオンライン小売業者、アマゾンの東南アジア進出に関してコメントを求められたラザダのCEOマキシラン・ビットナー氏は、次のように回答しています。
ここは弱肉強食の世界です。アマゾンがどのように差別化を図ってくるのか、楽しみにしています。
中国で優勢を保つアリババ、アメリカで圧倒的な優位に立つアマゾン(インターネットリテイラー社発行「全米EC事業 トップ500社」第1位)。両社は海外でも地位を確立したいと考えています。アマゾンはインドで特に大きな成功を収めています。
アリババが運営するマーケットプレイスは、中国オンライン売上の半分以上を占めていますが、自社では商品を販売せず、プラットフォームのみを提供しています。そのため、「中国EC事業 トップ500社」にはランクインしていません。
アリババはRocket Internet(ロケットインターネット、編集部追記:ドイツを拠点とするベンチャーキャピタル)からラザダを買収。アリババの海外における動きの中で、最も大きな出来事でした。
2012年にビットナー氏が立ち上げたラザダは現在、中国の巨大EC企業アリババの海外進出において、また、アリババを真のグローバルビジネスにするというジャック・マー氏の野望を叶える上で重要な役割を担っています。
アマゾンは今のところ、東南アジアへの進出に関して言及はしていません。しかし、業界関係者たちは常に成長を追求するアマゾンは、2017年には東南アジアに上陸すると予想しています。
11月にTechcrunchが報じたところによると、アマゾンはプライムとアマゾンフレッシュの2つのサービスを、2107年第1四半期中にシンガポールで展開する予定。裕福でネットリテラシーの高いシンガポールでスタートし、東南アジア進出に弾みをつけたいと考えているようです。
東南アジアのマーケットは困難で細分化されていますが、アマゾンは同地域でプレゼンスを高め、事業を拡大していく意思を示しています。実際、アマゾンはレッドマートの買収に名乗りを上げていました。ただ、レッドマートの共同創設者でCEOを務めるロジャー・イーガン氏もアマゾンの担当者も詳細は明らかにしていません。NUSビジネススクール(編集部追記:シンガポール国立大学のビジネススクール)の准教授トンプソン・テオ氏はこう話します。
アリババもアマゾンも、東南アジアで優位に立ちたいと考えています。アリババはラーニングカーブ(編集部追記:「経験曲線」「学習曲線」の意)を短くし、成長を加速させるために数社を買収。アマゾンの好敵手になることでしょう。
アリババがアマゾン中国を制して成功したかどうかは、まだわかりません。ラザダの今後の課題は外国からの商品を東南アジアで配達するシステムを確立することです。しかし、そのような越境ECモデルの構築はアリババの得意とするところ。現在、東南アジアではインドネシアのMatahariMall(編集部追記:消費者向けECプラットフォームを運営)とTokopedia(編集部追記:個人や企業が無料で出品できるマーケットプレイスを運営、ソフトバンクも出資している)、ユニコーンスタートアップのGarena(CtoCプラットフォームなどを運営するプラットフォームプロバイダ)を含む数社の競合しかありません。
ラザダは現在、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6か国で事業を展開。12の倉庫を保有し、購入者に直接商品を届けることができる92の配送センターを運営しています。
物流パートナーとして、タイのKerry Logistics NetworkやDHL、インドネシアのJNE Expressなど100社以上と提携。最近では、中国の国有郵便サービスやCJ Korea Express(編集部追記韓国CJグループの物流企業)とも提携をスタート。ラザダCEOのビットナー氏によると、インドネシアでのラザダの物量は9月、2015年同月比で2.5倍になったそうです。ビットナー氏はこう語ります。
私たちは、東南アジアでの物流コントロールセンターになります。より効率の高い、洗練された物流を確立していきます。世界は国境を越えたECの時代に入りましたが、それはアリババと私たちのビジョンそのものです。
レッドマートが蓄積したシンガポールでの経験をもとに、ラザダはマレーシア、インドネシア、タイの首都で2017年の第2四半期からオンラインで食品を販売する予定です。
レッドマートは150台以上のトラックを所有し、チョコレートから冷凍餃子まで、1度のオーダーで平均22のアイテムを消費者の手元に届けています。レッドマートは2017年上半期までに、翌日配送だった配送時間を4~6時間に短縮する予定です。また、2017年後半には、1~2時間で配送できるエクスプレスサービスも開始するそうです。イーガン氏はこう話します。
オンラインでの食品販売は大変難しいとされています。しかし、東南アジアの小売全体の60%は食品が占めています。私たちの顧客のサイト訪問頻度は週2回と高いため、顧客とより深い関係を築くことができるのです。