【オムニチャネル徹底調査】消費者の約2割が商品受取時に、15%が返品時に追加購入。店頭受け取りなどが高い満足度に直結
『Digital Commerce 360』は Bizrate Insights と共同で、オンライン通販利用者1132人を対象に、オムニチャネルによって購買行動がどのように変化したかを測定する調査を行いました。
消費者の半数以上が利用するオムニチャネル
オムニチャネルは、コロナ禍の間に大きく様変わりし、小売事業者や多くの消費者にとって、ショッピング用語の1つになりました。
オムニチャネルサービスは、在庫の確認から店舗での受け取り、当日配送まで、オンライン通販利用者に広く受け入れられています。
そこで、『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsは、オムニチャネルによる購買行動の変化、実店舗での買い物にどのような影響を与えているか、実店舗と消費者をつなぐバーチャルサービスをどのように受け入れているかについて調べました。
調査対象の半数以上が、オムニチャネルサービスを利用したと回答しているように、在庫状況の確認は今やオンラインショッピング体験に不可欠なものとなっています。
店舗での受け取り(37%)、カーブサイドピックアップまたはドライブアップ(25%)に加え、店舗指定の受け取り用駐車場を利用する消費者が20%に達するなど、コロナ禍後の購買行動の変容への対応がさらに強化されています。
コロナ禍のなかで生き残るために、地元の小売事業者はオムニチャネルサービスの導入を余儀なくされている一方、調査回答者の29%が地元の小売事業者で商品を注文し、店頭またはカーブサイドでピックアップしていると回答しています。
商品をより早く手に入れたいと考える消費者は、オンライン通販と店舗型通販の両方で、当日配送のオプションを利用。当日配送が利用されているのは、Amazonをはじめとするオンライン通販で36%、次いで店舗通販が27%でした。
新しいオムニチャネルサービス「カーブサイドリターン」
新しいオムニチャネルサービスとして注目されているのが、カーブサイドリターン(編注:路上での返品受け付け)です。調査回答者の4%が現在、カーブサイドリターンを利用しています。カーブサイドリターンを円滑に行うための機能はすでに多く存在しており、消費者の利便性を高めるためにカーブサイドリターンサービスを追加する小売事業者が増えると予想されます。
消費者は店舗に出向く手間を省くことができるため、カーブサイドリターンは非常に魅力的です。現在、NordstromとDick's Sporting Goodsがこのサービスを提供しています。
受け取り時に19%、返品時に15%が商品を追加購入
小売事業者は、受け取りと返品の両方の機会で追加購入による売り上げを得ており、消費者の19%が受け取り時に、15%が返品時に追加購入をしています。オムニチャネルサービスを提供することにより、店舗への来店が増えると考えられたものの、より頻繁に店舗を訪れたと回答したのは14%にとどまりました。
約3割がロイヤリティプログラムに参加
ロイヤリティプログラムへの参加は好調で29%の消費者が利用していると回答した一方、いくつかのオムニチャネルサービスは利用者が限定的であることがわかります。店舗での商品購入にファイナンスを利用、および、ストリーミング中に見た広告の影響で店舗受け取りの商品をオンラインで購入と答えたのは9%にとどまっているのです。
オンライン通販利用者はアプリを活用して購入し、効率よくオムニチャネルを利用
アプリは、商品の購入(44%)や店舗での商品検索(31%)など、消費者の購買行動を促進しています。調査対象者の25%が指摘するように、考え抜かれたUIであればアプリは店頭やカーブサイドで商品を受け取るのに最適です。
QRコードは、コロナ禍をきっかけに日常生活の一部となり利用が加速しました。消費者は商品情報を得るためにQRコードを使用し(22%)、14%は対面で購入するためにQRコードを使用したと報告しています。
店舗内では、14%がモバイルで購入を行い、13%が店舗内のデバイスによるチェックアウトを利用。店舗が混雑しているときは特に、店舗内デバイスが価値を発揮します。15%が商品画像を撮影し、その検索結果を小売店と共有することで、一致する商品を探すなど、モバイルデバイスは消費者と店舗とのつながりにも役立っています。
また、10%がモバイル端末で広告を見た後、購入に至っています。消費者の時間を節約するサービスが増えれば増えるほど、彼らが新しいサービスを受け入れる可能性が高くなると結論付けることができます。
消費者は、小売店の店員との連絡にもモバイルデバイスを使用しています。コロナ禍をきっかけに始まったサービスで、一定の人気を得ている事例です。カスタマーサービスを受けるために小売事業者にメールを送った人が10%、バーチャルアポイントメントを完了させた人が7%含まれています。
消費者は、店舗での返品オプションなど、便利なサービスを引き続き求めるでしょう。調査結果では、24%がAmazon以外の小売店で商品を返品しています。
店頭・カーブサイドでの受け取りが標準に
調査対象者の77%が過去6か月間に店頭またはカーブサイドでの受け取りを行っています。一度でもこのサービスを利用した消費者は、より多くのオムニチャネル受け取りオプションを利用し続けます。25%が11回以上の店舗・カーブサイド受け取りを利用しているという事実が、このサービスの高い価値を示唆しています。
利便性と時間短縮のためにオムニチャネルを活用する消費者
オンラインで購入し、店舗受け取りサービス(BOPIS)とカーブサイドピックアップサービスの両方を選択する理由については、長い間議論がなされてきました。調査回答者の44%が回答したように、最終的には利便性と時間の節約がサービスの利用を後押ししています。
利便性に関しては、14%が天候を理由にあげており、12%はオムニチャネルのオプションが唯一の注文方法であったと回答しています。
消費者は、迅速な配送に対する期待や関心も高めています。29%は当日中に商品を受け取りたいと考えており、26%は宅配便よりも早く商品を必要としています。
消費者にとって、お金を節約することは常に重要な要素で35%が配送料を避けたいと考えています。また、13%の人が店頭での衝動買いを控えていることから、こうしたサービスを利用することが家計の助けにもなっているようです。
もちろん、店舗を避け続ける人(33%)もいれば、オンラインの方が安全だと評価する人(21%)もいます。
在庫へのアクセスや入手可能性は、消費者の行動やチャネルの選択を左右します。オムニチャネルを利用すれば、必要なものを正確に入手できるという確信を持つ人が25%、サプライチェーンのあらゆる問題を考慮し、商品が入手可能であると感じている人が15%となっています。また、15%の消費者は、オンラインで商品がない場合でも、在庫を確保することができたと回答しています。
高い満足度のカーブサイドでの受け取り
店頭またはカーブサイドでの受け取りに対する消費者の満足度は高く、さらなる導入と投資の増加が見込まれます。オムニチャネルの経験が豊富な小売事業者も、新参の小売事業者も、店頭およびカーブサイドの取り組みを実行しています。
カーブサイドでの受け取りの満足度は、BOPISと比較して若干高くなっています。これは、カーブサイドピックアップが、オンラインショッピングの利用者が最初に選択するオムニチャネルであるためと推測されます。
商品の在庫状況、店舗での待ち時間、注文後の初期対応などが、消費者の満足度を左右
満足度は常に在庫に起因しています。33%が回答したように、当日受け取りが可能な在庫を保有していることが重要になります。また、全体的な商品受け取り体験の質も重要であり、調査で第2位にランクしています。
注文から受け取りが可能になるまでの時間や、店舗でのコミュニケーションも重要です。時間に関する調査の以下の結果は、いずれも満足度に対する重要度が同程度でした
- 店舗に到着してからの待ち時間:28%
- 希望する時間帯にスケジュールを組むことができる:27%
- 店舗での受け取りが可能になるまでの時間:26%
商品受け取りの利便性が顧客満足度に直結
駐車場から店舗内の受け取りカウンターまで、便利な受け取り場所がスムーズな体験には欠かせません。受け取りの質の高さ(29%)、駐車場での受け取り場所の見つけやすさ(22%)、店舗での受け取り可能時間(18%)、店舗での受け取り場所の見つけやすさ(16%)が上位にランクインしています。
受け取り場所をうまく配置することで、小売事業者はより良い体験を提供することができます。利便性でいえば、アプリは、今回の結果で示唆された18%よりもはるかに重要になるでしょう。アプリは確実に時間の節約に寄与しています。
人を介した購入体験に重きを置くのは15%。重要とは言え、消費者の満足度にはそれほど大きな役割を果たしていません。販売店とのコミュニケーションをあげているユーザーは18%で、若干数字が高くなっています。
店舗やカーブサイドでの受け取りに対する不満は少ない
3人に1人以上の消費者が、店頭やカーブサイドでの受け取りに不満を感じていないことがわかり、高い満足度を得ているという調査結果を裏付けています。
タイミング、コミュニケーション、ロジスティックスにおいては、一定の課題もあります。食料品でよくあることですが、間違った商品などを受け取った消費者は18%いました。タイミングの問題により、店舗に並ばなければならなかった人(18%)、注文した商品を車まで運んでもらうのに長い待ち時間を経験した人(17%)、小売事業者が注文を取り消して通知するのに時間がかかりすぎたと感じた人(12%)がいました。
また、利便性の問題も報告されています。14%が店内の場所や駐車スペースを見つけるのに苦労したと回答(13%)。ただ、受け取りボックスの利用が問題となったのは、わずか7%でした。
コミュニケーションの問題については、12%が小売店の指示やコミュニケーションがわかりにくい、10%が無礼な店員に直面した、9%は問題が発生したときに小売店に連絡できなかったと回答しています。
今後は、高い満足度を維持するために、サービス実行基準を維持することが重要です。
変化する店舗の役割
コロナ禍は、実店舗にどのような影響を与えたのでしょうか。サプライチェーンがダメージを受け、消費者は小売店の品切れが以前より多く(56%)、店頭の品ぞろえがより限られている(42%)と消費者は感じています。
コロナ禍と同時進行で、小売事業者はオムニチャネルへの取り組みとサービスを増やしてきました。
店舗のオムニチャネルへの取り組みが拡大し、消費者は小売事業者がオムニチャネルサービスを増やしていると感じています(31%)。また、調査対象者の28%が、店舗でのオンラインサービスに注目が集まっていると考えているようです。
オンライン通販利用者のなかには、店舗に行かなくて済む方法を探し続けている人もおり(23%)、消費者の22%はほんの一握りの店舗でのショッピングに的を絞っているようです。
当日配送のバーチャル・アポイントメント(21%)など、オムニチャネルサービスは拡大しています。
しばらくはオムニチャネルへの移行期間になるため、変化をモニタリングすることは有益でしょう。
バーチャルサービスの台頭
半数近くの消費者がバーチャルサービスを利用したことがあり、概ね良い経験をしています。消費者のバーチャルサービス使用回数は以下の通りです。好評を得られているのは、小売事業者にとってプラス材料と言えるでしょう。
- 5回以上: 27%
- 3~5回: 21%
- 1~2 回: 28%
小売事業者の努力は高く評価され、34%がバーチャルサービスに好意的、14%が適切と回答し、満足度は高い水準に達しています。
遍在するオムニチャネルサービス
大規模な小売企業から地元の小売店まで、オムニチャネルには多くの選択肢があります。
消費者は、在庫の確認から最も便利な受け取り方法の選択まで、効率的な買い物を楽しむことができます。また、モバイル端末は買い物に関するタスクを完了するための中心的存在になっています。
オムニチャネルにより多くのサービスが追加され、消費者に高い満足度をもたらすことで、顧客からの支持を拡大することができるでしょう。時間の節約は常に消費者に好まれるため、小売事業者は新しいサービスを提供し続ける必要があります。過去の事例を見ればわかるように、消費者は便利な新サービスを受け入れてくれるでしょう。