イケアが自社製品専用の中古品マーケットECに参入、リユースEC事業の成長戦略とは
家具販売大手Ikeaはスペインとノルウェーで、「Ikea Preowned(イケア・プレオウンド)」という中古品再販マーケットプレイスの試験運用を始めました。顧客同士が中古のIkea家具を直接売買できるように設計。現在、スペインの首都マドリードと、ノルウェーの首都オスロでテスト運用しており、テストが成功すればグローバルで展開する可能性があります。
Ikea、自社製品専用の再販プラットフォームをテスト展開
Ikeaグループの親会社で世界中のIkea店舗の大半を運営するIngka(インカ)グループは、消費者同士が自分の所有するIkea製品を出品したり購入したりできるP2P(ピアツーピア)型の中古品再販マーケットプレイスを試験運用しています。試験運用は12月末までです。
Ingkaグループのジェスパー・ブローディンCEOは「まずはオスロとマドリードから始めますが、Ingkaグループが抱いているビジョンはもっと大きな規模です」と、米LinkedIn(リンクトイン)社が運用するビジネス特化型のSNS「LinkedIn」に投稿しました。
試験運用により、中古品の売買というサステナビリティな取り組みの一環で、お客さまがIkea製品をより低価格で入手しやすくなります。家庭生活における人々のニーズを満たす手法として、今までよりも深いインサイトが得られるでしょう。(ブローティン氏)
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』は、2024年のIkeaのEC売上高は107億6000万ドルに達すると予測しています。
中古品プラットフォームの展望
ブローディン氏は「Ikea Preowned」の試験運用の発表で、Ingkaグループは「デジタル中古品市場に対する顧客の行動や関心、そしてそれがビジネスの観点でIngkaグループにとってどのようなメリットをもたらすのかを理解するため」に、「Ikea Preowned」の試験運用を開始すると説明しました。
現在、「Ikea Preowned」は無料で利用できますが、「将来的にはIngkaグループが『控えめな料金』と表現する利用料金を導入するかもしれない」と、ブローディン氏は国際経済紙『Financial Times』のインタビューに説明しています。
これまでのところ、「Ikea Preowned」に出品されている製品のほとんどは、リビングルーム、子供用家具、収納などのカテゴリーに分類されています。
購入者は、「Ikea Preowned」で気に入った中古のIkea製品を予約し、出品者と会う約束をし、製品の状態を直接確かめてから購入を確定することができます。気に入らない場合は、購入をキャンセルして払い戻しを受けることができます。
製品の出品者は、自分が撮影した写真と設定した価格でIkeaの製品を「Ikea Preowned」に出品することができ、それについてIkeaのアルゴリズムがプロモーション画像、サイズ、製品の詳細情報を追加。各出品物には、組み立てガイドや手入れ方法の情報も加えられます。
出品後、出品者は製品が購入された場合の金額の受け取りを、銀行振込、今後の購入時に15%割引の適用を受けられるIkeaのギフトカードのどちらかを選ぶことができます。
中古家具市場で存在感を増し続けるIkea製品
Ikeaの家具はすでに、越境ECプラットフォームの「eBay」、不要品の売買、求人などを個人ができるコミュニティーサイト「Craigslist(クレイグスリスト)」、個人間で製品を売買できる掲示板「Gumtree(ガムツリー)」、Facebookでコミュニティのメンバーからアイテムを購入したり、アイテムを販売したりできる「Facebook Marketplace」などのオンライン転売プラットフォームにおいて、個人間で売買される製品の定番となっています。「Ikea製品は現在、中古家具市場の10%を占めています」(ブローディン氏)
このことに加えて、Ikeaは一部の店舗で、顧客から使用済みの家具を買い取り、中古品として再販売する買い戻しプログラムを実施しています。
売上の基盤を実店舗からECにシフト
Ikeaは、Ikea製品の売買専用オンラインプラットフォームである「Ikea Preowned」を提供することで、他社とは一線を画そうとしています。中古品市場でより大きなシェアを獲得し、売り上げの軸を実店舗から、成長中のオンライン販売部門に移すことが目標です。
世界の中古家具市場は2024年以降、毎年6.4%成長すると予測されており、ブローディン氏はこれを受けて「消費者は高額な品物をリーズナブルに購入するために中古品を選ぶという大きなトレンドを反映している」と強調しています。
中古品の流通でサステナビリティに貢献
Ingkaグループは、中古製品の売買を後押しする「Ikea Preowned」は、製品の寿命を伸ばすための取り組みの一環であると説明。Ikeaグループは、店舗での買い戻し、部品交換、古いマットレスを再利用しているオランダの子会社RetourMatrasのようなリサイクルプログラムなど、製品の寿命が伸びることにつながるさまざまなサービスをすでに提供しています。
こうした取り組みは、Ikeaが掲げるサステナビリティの目標に沿ったものであり、まだ使える製品が処分されてしまうのを防ぐことで循環型経済に貢献しています。
英コンサルティング事業者Deloitteと、循環型の経済システムを推進するCircle Economy財団が共同で作成した「グローバル・サーキュラリティ・ギャップ・レポート2024」によると、循環型経済はメガトレンドの域に達したことが明らかになっています。循環型経済に関する議論、討論、記事の量は、過去5年間で約3倍に増加しました。
しかし、世界経済における再生資源のシェアは依然として低下傾向にあり、2018年の9.1%から2023年には7.2%に低下し、5年間で21%減少しています。
レポートは、循環型経済を推進し、循環型経済に反する有害な行為にはペナルティーを科す政策を導入するために、政府、金融関係者、市民が協力して改革に取り組むことが必要だと説明しています。また、適正な価格を設定して、循環型経済への解決策に向けた資金提供ができるように調整することを求めています。