Digital Commerce 360[転載元] 2023/8/10 8:00

消費者の買い物に対するニーズや方法は変化し続けています。オンラインで注文した商品の店舗受け取り、店舗で購入した商品を自宅に届けてもらうサービスなどがその一例です。米国の薬局チェーンWalgreens(ウォルグリーン)は、オンラインで商品を注文したユーザーのうち半分以上が当日受け取りを選択しています。Walgreensは2022年、3500万件の店舗受け取り注文、注文後1時間以内の配達に対応しました。

記事のポイント
  • Walgreensは2022年、3500万件の店舗受け取り注文と注文後1時間以内の配達に対応
  • 配送戦略は、フードデリバリーサービスを手がけるDoorDash(ドアダッシュ)やUber(ウーバー)といったサードパーティ宅配業者と提携
  • 米国の消費者の80%近くが、Walgreensの店舗から5マイル以内に住んでいる

オンライン注文の半分以上が当日受け取りを希望

Walgreensのリテールオムニチャネル担当シニアディレクターであるリンジー・ミコス氏は米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』の取材に対し、「オンラインで商品を購入する顧客は半分以上が当日受け取りを希望している」と説明します。

ミコス氏によると、当日受け取りを希望する顧客のうち3分の1が店舗での受け取りを指定するそうです。なお、写真の現像を注文する顧客は含んでいません。

WalgreensのEコマースサイトの商品配送に関するページ(画像は編集部がWalgreensのEコマースサイトか編集部がキャプチャ)
WalgreensのEコマースサイトの商品配送に関するページ(画像は編集部がWalgreensのEコマースサイトか編集部がキャプチャ)

Walgreensのこうしたオムニチャネルサービスは、コロナ禍で需要と引き合いが高まりました。しかし、コロナが鎮静化しつつある現在もなお、Walgreensの顧客はオンラインでの購入、オンラインで注文した商品の店舗での受け取り、店舗で購入した商品の自宅への配送――といったサービスを活用し続けています。

コロナ禍の間、消費者がWalgreensの実店舗に足を運ばなくなったため、安全で安心に買い物できる手段の必要性が高まりました。

Walgreens リテールオムニチャネル担当シニアディレクター リンジー・ミコス氏
Walgreens リテールオムニチャネル担当シニアディレクター リンジー・ミコス氏

現在、その緊急性は落ち着いたものの、消費者は「実店舗に行かなくてもオンラインで注文できる機能、オンラインで必要なものを注文しすぐに受け取りに行ける機能、あるいはすぐに配達してくれる注文が可能な機能を求めている」(ミコス氏)と指摘しています。

Walgreensは2022年、3500万件の店舗受け取り注文と、注文から1時間以内の配達に応えました。

顧客の80%近くがWalgreens実店舗の5マイル以内に居住

ミコス氏は小売事業者が集まる展示会「Retail Innovation Conference & Expo」で『Digital Commerce 360』と対談。そのなかで、コロナ禍からの消費者行動の変化、さまざまな方法で消費者にサービスを提供し続けるWalgreensの挑戦について詳細に聞きました。

Walgreensによると、米国の消費者の80%近くが、Walgreensの各店舗から5マイル以内に住んでいるそうです。

注文から30分以内の集荷、ドライブスルー、オンライン注文した商品を店舗の駐車場で受け取るカーブサイドピックアップによる車中受け取りオプションも提供しています。また、2023年5月には会員向けに「1時間以内の商品配達保証達」(編注:1時間以内に届けることができなかった場合、1時間以内に商品が届かない場合、会員は最大50ドルの返金を受けることができます)も開始しています。

店舗受け取りを望む消費者は68%に増加

Eコマースを利用する多くの消費者が、自宅近くの店舗にほしい商品の在庫があるかどうかをオンラインで確認したり、オンラインで購入し店舗で受け取る機能を望んでいます。こうしたユーザーの割合は年々大きくなっています。

『Digital Commerce 360』と調査会社Bizrate Insightsが2023年2月に実施したオムニチャネル調査(オンライン通販利用者1069人を対象)によると、そのような機能を望んでいるユーザーの割合は、2021年の58%、2022年の51%から2023年は68%に増加しています。

最新調査では回答者の半数が2023年にオンラインで注文し、店舗で商品を受け取っています。その割合は2022年は37%、2021年は43%でした。

注文はオンラインで行っても、Walgreensの実店舗で商品の受け取りを希望する人が増えている(画像はWalgreensのニュースルームから編集部がキャプチャ)
注文はオンラインで行っても、Walgreensの実店舗で商品の受け取りを希望する人が増えている(画像はWalgreensのニュースルームから編集部がキャプチャ)

利便性の追求の傾向で、顧客が使う金額は増える?

顧客が利便性をより追求する傾向は今もなお高まっています。Walgreensの集荷戦略についてミコス氏は、「顧客の利用シーンに応じて、さまざまな選択肢を用意することが大切です」と説明します。

Walgreensの売り上げは2ケタ成長を続けています。利便性を追求することが、デジタル分野で成長するための重要な原動力となっています。(ミコス氏)

ミコス氏によると、WalgreensはECが店舗と顧客を奪い合う競争関係になってしまうのではないかと危惧していたそうです。

しかし、そうではありません。利便性を追求することで、消費者はより多くのお金を使うようになるのです。私たちは、より頻繁に顧客と関わり、より適切なサービスを提供することができるようになります。(ミコス氏)

Walgreensの顧客が会員プログラムに登録し、店舗またはオンラインで、会員特典を利用して商品を注文した場合、注文履歴を分析します。後日、顧客の購入履歴に関連した商品の提案や割引のお知らせを送っています。

こうしたサービスがあるからこそ、「30分以内にお渡しできるように準備します」と言うことができるのです。消費者からの商品補充の需要に応えることが可能です。(ミコス氏)

在庫をリアルタイムで追跡

メディアやアプリが提供する広告枠在庫に対する広告の埋まり具合を指す「フィルレート」は、ミコス氏によるとWalgreensは90%以上だそうです。フィルレートは、100%であれば、最大限に収益を得ている状態と言えます。

まだ100%には到達していないので、需要に見合った在庫をどのように持つかを検討しています。(ミコス氏)

Walgreensは需要へのスピード対応にも取り組んでいます。その事例の1つが、コロナ検査キットの高い需要に対する対応だったそうです。「在庫を正確に把握するためには、そのための適切なシステムが不可欠でした。私たちは、在庫をほぼリアルタイムで把握できる在庫システムを持つために、2022年から技術面での投資を行ってきました」(ミコス氏)と説明します。

店内の従業員が店から商品をピッキングしてオンライン注文に対応するため、「この作業は厄介」だったとミコス氏。そのため、従業員が棚に並べるべき商品を表示するためのソフトウエアを搭載した携帯端末(通信ソフトウエア開発事業者が提供するシステム、「Theatro」を使用)を導入しました。

ある商品は、メインの棚にはないかもしれませんが、店内の別の場所にあるかもしれませんし、奥の部屋にあるかもしれません。このソフトウエアシステムは、探している人が「あの商品がない」と言う前に、他の場所をチェックするように指示する機能を搭載しています。(ミコス氏)

Walgreensの配送戦略とは

Walgreensは、DoorDash(編注:米国のオンデマンドフードデリバリー会社)やUberといったサードパーティの宅配業者と提携し、リアルタイムの追跡とSMSによる配送状況の通知を提供しています。

たとえば、「DoorDash」で注文した商品の配送状況が把握できたり、「Domino Pizza」のオーダー状況追跡システム「pizza tracker」で、注文したピザがどの配達フローにあるのかを確認するような仕組みです。注文した商品のなかにアイスクリームのような冷たい商品があれば、玄関先で溶けてしまわないようにリアルタイムで確認できます。(ミコス氏)

顧客は注文履歴を確認したり、注文した商品の注文番号、自身の氏名、電話番号を専用フォームに入力したりすると、配送状況を確認できる(画像は編集部がWalgreensのEコマースサイトか編集部がキャプチャ)
顧客は注文履歴を確認したり、注文した商品の注文番号、自身の氏名、電話番号を専用フォームに入力したりすると、配送状況を確認できる(画像は編集部がWalgreensのEコマースサイトか編集部がキャプチャ)

Walgreensでの注文は、米国のスーパーマーケットチェーンWhole Foods Market, Inc.(ホールフーズ・マーケット)、Kroger(クローガー)などと同様に、配達日時を指定することもできます。現在、配達日時指定サービスの利用料は請求していませんが、最低10ドルの注文金額が必要となります。

「最低注文金額を設定する理由は、収益性を維持するためです。スタッフは、その注文に対応するため、他の仕事を中断する必要があります」とミコス氏は言います。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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