Digital Commerce 360 2020/8/6 8:00

デジタルコマースの新しいパラダイムでは、オンラインショッピングでのカスタマーエクスペリエンス(CX)における5つのポイントを最適化している小売事業者が、群を抜いて際立っています。CXを最適化する5つのポイントを紹介します。

CXを最適化する5つの主要ポイント

自動化とスマートテクノロジーの併用がカギ

購入に至るまでの工程がデジタル優先になるなか、モバイルを含む小売事業者のeコマース機能は、購買体験のなかで中心的な役割を果たしています。

同時に、小売事業者に対する消費者の期待も、かつてないほど高まりを見せています。その結果、大手小売事業者やマーケットプレイスは、消費者のデジタル上でのカスタマージャーニーのあらゆるステップを最適化するために、テクノロジーを積極的に活用するようになりました。

オンラインで優れたカスタマーエクスペリエンスを幅広く提供するためには、自動化とスマートテクノロジーを併用し、eコマース業務の各所を最適化する必要があります。

デジタルコマースにおけるカスタマージャーニーを調べた新しい調査で、5つの主要なポイントと、最高のカスタマーエクスペリエンスを実現するために気をつけるべき重要なトレンド、テクノロジーの概要が説明されています。その5つのポイントをご紹介します。

1. 消費者マーケティングと商品への導線

消費者は、SNSやモバイルアプリ、ウェアラブル端末やホームテクノロジーに至るまで、日常のオンライン環境がショッピングの導線として機能することを期待しています。このような期待に応えるために、小売事業者はマーケティング戦略を再考。データを元に消費者を理解し、パーソナルな方法で効果的にターゲットを絞るようになっています。

小売事業者は、人工知能(AI)、拡張現実(AR)、文脈に応じたターゲティングツールなどのテクノロジーを導入して、消費者がどこにいようとも、その場に合わせたプロモーションを行い、エンゲージメントを高めようとしています。未来を予測するこれらの新しいデジタルアプローチは、常に検索と発見が行われる未来への基礎を築くものになるでしょう。

経験豊富なブランドは、購入に結びつくコンテンツを提供し、視覚的なリアルタイム検索サービスを活用して消費者がいる場所にリーチするなどして、マーケティングのアプローチ方法を刷新しています。

たとえば、アパレル小売業のadidas(アディダス)は、ソーシャルプラットフォームのSnapchatと協力し、ユーザーがプレイしながら商品を購入できるインタラクティブなゲームを、ソーシャルメディアプラットフォーム上に作りしました。

adidasがローンチした遊びながら購入も楽しめるオンラインゲーム
adidasがローンチした遊びながら購入も楽しめるオンラインゲーム(画像:engadget「Adidas made a Snapchat game to drop limited, 8-bit-themed baseball cleats」よりキャプチャ)

同様に、Facebookは最近、FacebookやInstagram上のアプリ内から直接商品を購入できる「Facebookショップ」を発表しました。顧客獲得方法の変化は、潜在顧客がショッピング以外の時間をどこで過ごしているのかを理解し、それらのチャネルを購買に至るカスタマージャーニーに統合しなければならないことを意味します。

2.「店舗」の体験とデザイン

消費者は、オンラインストアにアクセスした時、リアル店舗と同じような体験を期待しています。オンラインストアに対応するインタラクティブなテクノロジーを組み込み、事実上、リアル店舗でのショッピング体験と同じものを提供することが期待されているのです。そのために小売事業者は、オンラインでリアルな交流ができるテクノロジーを活用しなければなりません。

AR技術を駆使して、3Dを活用したバーチャルリアリティ体験を提供しているサイトでは、消費者はバーチャルに商品を試着したり、商品に触ったりすることができます。InstagramはARを活用して、ユーザーが自分の写真や動画を使って、化粧品やアクセサリーを試着できるようにしています。同様に、Sephoraでは「バーチャルアーティスト」アプリケーションを使って、さまざまなタイプのメイクアップをバーチャルで試せるようにしています。

Sephoraのバーチャルアーティストアプリ
Sephoraのバーチャルアーティストアプリ(画像:Sephoraのサイトよりキャプチャ)

他の小売事業者は、店頭をソーシャルメディアのライブ・ストリーミング・チャンネルとして活用し、リアルタイムで消費者と関わりを持っています。そうすることで、店頭で提供する購入体験を損なうことなく、オンラインでも買い物できるようにしているのです。

カスタマーエクスペリエンスを豊かにするために、チャネルやデバイスの枠を超えて、可能性を押し広げなければなりません。

3. 消費者教育とCX

店頭での接客と同様、消費者はオンラインで買い物をサポートしてくれるブランドに価値を見出しています。実際、消費者は自分の情報を喜んで共有し、小売事業者が購入までのプロセスを手助けしてくれることを望んでいます。

ある調査によると、ミレニアル世代の58%が個人データを共有して、自身のニーズに最も合う商品のレコメンデーションをしてくれることを望んでいるそうです。消費者の選択をガイドする予測技術やオンラインでのリアルタイムサポートにより、小売事業者はデジタル領域で消費者をサポートすると同時に、彼らを教育する方法を再考しています

今後、消費者は、自分の生活を楽にしてくれる小売事業者に傾倒していくでしょう。消費者へのサポートは、もはや受動的なサービスではなく、彼らがオンラインで買い物をする際に、正しい情報に基き意思決定できるようにするための必要な方法と考えられています。

小売事業者は、ショッピングの間ずっと消費者の好みを予測し、彼らをサポートし、彼らの情報を保護できるテクノロジーを活用し、カスタマーサポートを優先させていく必要があるでしょう。

4. 取引・決済・税金

商品を決定した後、消費者はチェックアウトでも、シームレスなオンライン体験が継続されることを期待しています。チェックアウトプロセスでは、消費者に十分な支払いオプションを提供し、支払い情報を自動的に入力し、税金や送料を正確に計算するなど、これらすべてを安全に実行する必要があります

オンラインショッピング利用者の87%以上がカゴ落ちしている状況を考えると、チェックアウトは複雑な課題であり、小売業者にとっては重要度が高いものとなっています。

ワンクリック購入システムやデジタル版取り置きのような、シームレスで柔軟な支払いプロセスを提供することで、チェックアウトにおけるCXを大幅に向上させることができます。

また、世界中の人々にサービスを提供できるデジタルエクスペリエンスを創造することも重要です。IT専門調査会社「IDC」のレポートは、2022年までに越境eコマースが、世界のオンライン小売市場の15%以上を占めるようになると予測しています。

消費者はチャネルや地理的な場所に関係なく、シームレスなチェックアウトプロセスを期待しているため、通貨両替などのグローバルなバックエンド機能が不可欠になるでしょう。

5. フルフィルメントと購入後のサポート

消費者にとって、購入後のサポートはもはや、おまけではなくCXの重要な要素となっています。消費者は、自分のライフスタイルに合った配送オプションとシンプルな返品プロセスを備えた、“ほぼ瞬時”のフルフィルメントを期待しています。

企業は、消費者の集積密度に合わせてフルフィルメント業務を最適化し、複数のオプションで物流を合理化し、税関や仲介手数料に関連するコストを削減し、あらゆる場所(物理的な店舗またはデジタル上)での返品問題に対処しています。チェックアウト後、大切なお客様のために、ハウツー講座や専門家のアドバイス、便利な補充サービスを提供することで、顧客との関係を深めようとしている小売事業者もいます。

消費者は、自分が選んだチャネルで買い物ができるだけでなく、購入した商品を同じように受け取ることを期待しています。ストレスのない物流を提供すれば、消費者は、いつ、どこで、どのように購入品を受け取り、返品処理をするのか、よりコントロールできるようになります。

たとえば、スーパーマーケットチェーンの「Kroger」は、薬局チェーンの「Walgreens」との実験的なプログラムでサプライチェーンを再構築。消費者がオンラインで食料品を注文し、近くのWalgreens店舗で受け取ることができるようにしました。小売事業者は、配達と返品をデジタルコマースの延長線上で対応できるよう、複雑なサプライチェーンと配送システムの課題を克服しなければなりません。

Krogerで購入した商品をWalgreenで受け取れることを示したイメージ画像
Krogerで購入した商品をWalgreenで受け取れることを示したイメージ画像(画像:Krogerサイトよりキャプチャ)

デジタルコマースの新しいパラダイムに関して、小売事業者にとって重要なことは、消費者が実権を握っていて、彼らの好みに合ったオプションを提供することは、小売事業者の責任であると理解することです。

◇   ◇   ◇

現実の生活とオンラインショッピングの間にはもはや壁は存在しないため、最も効果的なオンライン販売は、日常生活に即して行われることになります。

最終的に小売事業者は、消費者の期待に応えつつ、規制や責任に対するコミットメントのバランスが取れるようなツールやインフラに投資することで不必要なリスクを回避し、可能な限り最善の方法で消費者にサービスを提供することに専念しなければなりません。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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