世界を先読み!日本独占配信 米国でもっとも有名なEC専門メディア『Digital Commerce 360』からの最新記事
海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

ナイキの低迷は過度なDtoC推進が原因? 経営立て直しのNIKE、EC売上が好調なファナティクスで明暗が分かれている理由とは

米国のスポーツアパレルEC市場では、NIKEの競合であるFanaticsが著しく成長しています。米国EC専門誌は、FanaticsのEC売上高が2025年にNIKEを追い抜く可能性があると示唆しています

Digital Commerce 360[転載元]

3月21日 7:30

NIKEのEC売上高は2024年、Fanaticsを上回りましたが、成長の勢いは拮抗(きっこう)しており、2025年は重要な年となりそうです。アパレルカテゴリーの1位は現在NIKEですが、Fanaticsが今後は追い抜かす可能性があります。

FanaticsのECは成長、NIKEは低迷

NIKEはレイオフやCEO交代の事態に

NIKEのEC売上高は2024年に低迷、このことがレイオフ(従業員解雇)やCEOの交代につながりました。一方、競合であるスポーツ用品小売事業者のFanaticsはここ数年、ECの成長を続けています

多様なスポーツグッズを取り扱うFanaticsのECサイト(画像は同サイトから編集部が追加)
多様なスポーツグッズを取り扱うFanaticsのECサイト(画像は同サイトから編集部が追加)

NIKEは米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』が発行する「北米EC事業 トップ2000社」データベースにおいて、アパレル&アクセサリーカテゴリーで1位EC小売事業者全体では13位にランクインし、Fanaticsは15位です(2024年末時点)。

NIKEのEC規模に迫るFanatics

しかし、NIKEがEC低迷による軌道修正を進めるなか、Fanaticsはアパレル&アクセサリーカテゴリーの1位NIKEとの差を縮めています。このことは、『Digital Commerce 360』が2025年版の米国のECを注視するなかで、現状、最も興味深い展開の1つです。

 

アパレル&アクセサリーカテゴリーにおけるNIKEとFanaticsのEC売上高の変遷

マイナス成長に転じたNIKE

2024年9月に、エリオット・ヒル氏がNIKEの新たなCEOに就任しました。

2024年9月、NIKEのCEOに就任したエリオット・ヒル氏(画像はNIKEのコーポレートサイトから編集部が追加)
2024年9月、NIKEのCEOに就任したエリオット・ヒル氏(画像はNIKEのコーポレートサイトから編集部が追加)

NIKEは2020年、2021年、2022年にEC売上高の伸長率2ケタ成長を達成しましたが、その後2年間、マイナス成長に転じてしまいました。要因の1つは、既存の小売パートナーとの関係性よりも、過度にDtoCに突き進んだことです。この判断を下したNIKE自身の責任が大きいと言えるでしょう。

『Digital Commerce 360』は、NIKEのEC売上高は2025年に81億5000万ドルになると予測しています。これは2024年から14.2%減少しますが、2024年にNIKEが経験した前年比22.2%の減少ほど深刻なダメージではありません。

NIKEのEC売上高と成長率の推移(単位:10億ドル。曲線グラフは前年比成長率。2025年は『Digital Commerce 360』の推定値。出典:NIKEの公表資料と『Digital Commerce 360』)
NIKEのEC売上高と成長率の推移(単位:10億ドル。曲線グラフは前年比成長率。2025年は『Digital Commerce 360』の推定値。出典:NIKEの公表資料と『Digital Commerce 360』)

ヒル氏はNIKEの経営を立て直しについて、ECサイトやスニーカー専用アプリ「SNKRS(スニーカーズ)」といったデジタルチャネルの改善だけではなく、商品の開発やラインアップの見直しといった観点でもイノベーションによりブランドを再活性化し、ビジネスを改善する必要性も出てくるでしょう。

なお、NIKEが北米担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーに任命したトム・べディー氏が、ヒル氏のサポートをする予定です。

Fanaticsの著しいEC成長、今後はNIKEを追い抜く可能性も

一方のFanaticsのECは成長路線を突き進んでいます。『Digital Commerce 360』の推定では、FanaticsのEC売上高は2024年に前年比28.9%増の84億7000万ドルまで増加。成長率は2023年の前年比46%増に続き高い伸び率を記録しました。

FanaticsのEC売上高と成長率の推移(単位:10億ドル。曲線グラフは前年比成長率。2025年は『Digital Commerce 360』の推定値。出典:Fanaticsの公表資料と『Digital Commerce 360』)
FanaticsのEC売上高と成長率の推移(単位:10億ドル。曲線グラフは前年比成長率。2025年は『Digital Commerce 360』の推定値。出典:Fanaticsの公表資料と『Digital Commerce 360』)

注目すべき点は、Fanaticsは従前、EC売上高でNIKEに長らく遅れをとっていたということです。NIKEのEC売上高は2024年に合計95億ドルでしたが、『Digital Commerce 360』の分析によると、2025年にはEC売上高でFanaticsがNIKEを追い抜く可能性があります

Fanaticsは、スポーツアパレルとコレクターズアイテムの両軸で、2020年代にさまざまな手段でECの成長を遂げてきました。

まず、スポーツのリーグやファン層全体にリーチを拡大する契約を締結。これらには、プロの選手、チーム、リーグレベルの契約に加えて、スポーツウェアを展開するカナダの企業Lululemon、NIKEなどのアパレルブランドとの提携が含まれています。

さらに、2022年にはスポーツアパレルブランドを運営するMitchell & Nessを買収。2023年には、卸売業者のFexproを買収しました。また、「Fanatics Liveプラットフォーム」の運営を通じて、ライブコマースにも進出しています。

Fanaticsが2025年にアパレル&アクセサリーのEC売上高1位の座をNIKEから奪うことが確実であるとは言い切れません。しかし、NIKEがEC売上高をプラスの成長に回復できない場合、Fanaticsが1位の座を手に入れることは、十分にあり得ることでしょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

この記事のキーワード

この記事をシェアしてほしいタヌ!

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る

企画広告も役立つ情報バッチリ! Sponsored

「サムソナイト」「グレゴリー」のEC改善事例。CVR改善+購入完了率が最大45%増の成果をあげたアプローチとは 11月12日 7:00 スマホゲーム「モンスト」ファンがお得にアイテムを購入できる「モンストWebショップ」はなぜ「Amazon Pay」を選んだのか。導入効果+UI/UX向上に向けた取り組みを聞いた 10月30日 7:00 アンドエスティが「3Dセキュア2.0」の超効率的運用に成功したワケ。オーソリ承認率大幅改善、売上アップにつながった不正対策アプローチとは? 10月28日 7:00 EC業界で市場価値を最大化する――「全体を見渡せる人材」になるためのキャリア設計 10月27日 7:00 転売ヤーが引き起こすEC市場の混乱に立ち向かう! Shopifyパートナー・フラッグシップが提案する最新対策 9月29日 8:00 14か月で累計売上30億円超え。 韓国のネイルブランド「ohora」の急成長を支えたEC戦略とは 9月22日 8:00 生成AI検索が変える消費者の購買行動。UGC活用でサイト流入を最大化する 9月10日 8:00 ほしい商品が見つからないイライラを解消し、CVRを向上! 検索機能強化と顧客満足度アップを実現するBtoB-ECサイト改善のポイントとは? 9月9日 7:00 B向けEC担当者必見。BtoBビジネスを成功に導くサイト内検索の最適化戦略 9月3日 8:00 クリック率3倍、セッション数2.3倍を実現したECサイトの取り組みとは? リアル店舗のような“ワクワク感”を再現するPLAZAの事例 9月2日 7:00