旧桃源郷(現Lifeit)をティーライフが買収。やっぱりEC業界はめまぐるしく変わる……
ティーライフは8月1日付で、EC専業のLifeit(ライフイット、旧桃源郷)を買収する。Lifeitの大株主で現社長の中川勝博氏から全株式を買い取る。買収額は非公開。7月12日に株式譲渡契約を締結した。
ティーライフは健康茶、健康食品、化粧品などの通販・EC企業。中期経営計画で、M&Aによる企業規模の拡大や収益構造の多様化などを掲げている。ティーライフは株式取得の理由について次のように説明した。
両社の経営資源や強みを相互活用することにより、相互の顧客に向けたサービスの提供及び取扱い商品の補完拡充が可能となります。加えて、当社情報システムなどのプラットフォームを共有化することにより、さらに効率的な運営が可能となり、互いにシナジー効果を追求することにより事業の拡大が図られ、結果として収益のアップが得られるものと考えております。
オークションビジネスで名をはせた桃源郷
Lifeitの旧社名は桃源郷。「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」総合グランプリを獲得するなど、オークションビジネスで2000年代後半のEC業界をけん引したEC専業企業だ。
会社の設立は2001年(当時は有限会社恵門コーポレーション)。デジタル家電、アウトドア商品、アクセサリーなど幅広い商材を扱い、「楽天オークション」を中心に「BtoC」型のオークションサービスを展開した。
1円から入札できるオークションが人気を集め、2007年度の「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー」で総合1位も獲得。その時の総合2位は「Joshin web 家電とPCの大型専門店」。今ではモール系のアワードを総ナメしている上新電機を押さえての総合グランプリ獲得だった。
事業が軌道に乗っていた2008年(2008年6月期の売上高は27億円)、ショッピングモール事業なども手がけていたNECビッグローブ(当時、現ビッグローブ)の傘下に入る。NECビッグローブは、EC領域における新たな事業シナジー創出と双方の事業価値の拡大を図ることにより、5年間で新たに100億円の売り上げをめざすとしていた。
ネットオークション形式のネット通販でのし上がり、成功店舗としての地位を築いた桃源郷だが、潮目が変わったのは2011年の東日本大震災。主戦場だった「楽天市場」のメルマガ配信のレギュレーション変更がECサイト運営を直撃した。
従来は「無料・無制限」で配信できたメルマガ配信が、「週1回の配信のみ無料」に変更。それ以上のメルマガ配信は有料となったため、売上1億円を作るには5000万円の配信コストが必要になる状況に。主力のオークションビジネスの“終わりの始まり”だった。
その後、数年前からM&Aによる専門サイトの買収などを行っていた桃源郷は、専門サイトの立ち上げを加速。オークションビジネスからの脱却を急いだ。
創業者からバトンタッチした2代目社長の下、大手が参入しないマーケットをターゲットに、30以上のECサイトを立ち上げた。なお、楽天は2016年に「楽天オークション」を終了。桃源郷は現在、オークションに関するECサイトは運営していない。
経営面でも大きな変化が起きる。2014年にNECグループから独立したビッグローブは、2016年にオーネストへ桃源郷の株式を売却。その後、現社長の中川勝博氏が全株式を取得し、2018年4月に社名を桃源郷から現在のLifeitに変更した。
Lifeitの2018年3月期業績は、売上高は12億8000万円、営業利益2600万円、経常利益2700万円、当期純利益は2600万円。オークション事業から撤退し、専門サイトの運営に移行してから7年。見事、V字回復を果たしていた。
目まぐるしく変わるEC業界、大手によるEC企業の買収が続く
合従連衡――。利害に従って結びついたり離れたりすることを意味する言葉だが、最近のEC業界を表すキーワードでもある。
桃源郷がEC業界をけん引した2000年代。同様に名をはせたのが「アンジェ」を運営するセレクチュアーだった。
そのセレクチュアーは2014年、クックパッドに傘下入り。その後、クックパッドの事業方針の転換によって、2016年に京王百貨店に売却された。
フィッシング・アウトドア用品EC企業のナチュラム・イーコマースなどを傘下に持つミネルヴァ・ホールディングス(当時)は2018年、M&Aでスクロールの子会社に。スクロールは2009年にブランド化粧品の大手EC「コスメランド」を運営するイノベートを買収。その後、通販・EC企業のM&Aを加速している。
楽天はスタイライフ、爽快ドラッグ、ケンコーコムといった名だたる有力EC企業を買収。アスクルはチャームを子会社化。NTTドコモによるマガシーク買収など。オイシックスと大地を守る会は経営統合し、その後は競合のらでぃっしゅぼーやを買収した。
また、家電EC大手のMOAは2018年3月、投資ファンドの完全子会社に。老舗の下着ECサイトである白鳩は、筆頭株主である小田急電鉄が約4割の株式を保有している。
ここにあげた例はほんの一部。異業種や小売企業、通販企業によるEC企業のM&Aは増加している。本業との連動、EC強化、新規ビジネスの開発などを目的に、EC企業の買収、資本締結などの動きが今後も増えそていきそうだ。