データドリブンで洋服を作るD2Cブランド「seven dot」。データを生かす重要性を学んだコロナ禍のクラファン活用
プロトタイプ開発支援サービス「protoTyper」を通じて企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するGood Thingsは、得意としている「データ分析」をファッション領域でも生かし、オリジナルD2Cファッションブランド「seven dot」を展開している。
2020年10月14日から2か月間、クラウドファンディングを利用した新商品のプロモーションを展開。コロナ禍での取り組みとあり、発売時期がずれ込むなどのトラブルに見舞われたが、支援金15万円を集め目標金額をクリアした。新興D2Cブランドの挑戦と、クラウドファンディングの実施で見えてきたこととは。
「数字」を生かした洋服作り
「seven dot」は、運営元のGood Thingsが企業のDX支援などで培ってきたデジタルマーケティングの知見を生かし、データに基づいた商品開発を行うファッションブランド。自社で所有するあらゆるマーケティングデータから、消費者が必要とするサイズ、機能性を分析している。
また、SNSから収集したデータやトレンドから、商品ごとにPRに適したインフルエンサーを選定。他にも、商品構成、試作、価格設定まで、ビジネスに関わるすべての部分においてデータドリブンで行っている。
商品作りにおいては、他社商品の分析やユーザーの意見を生かし、着丈や身幅など商品の主要部分のサイズを決める。その後、各商品のデザインに合わせて着丈など部分的に長さを変更。こうすることでサンプル作成の回数を減らし、コスト削減につなげられるのだという。
「サンプルはなくてはならない物だが、複数作ればそれだけ環境に負荷がかかる。可能な限り回数を減らすことで、サスティナブルにもつながる」と、Good Thingsの寶諸江理奈代表は話す。
顧客が返品を希望する際には必ず返品理由を確認、それらの“生の声”も商品開発に生かす。
以前販売したトップスで、「中にニットを着られる」というコーディネート提案を行った。しかしユーザーからは「商品単体では着られるが、中にニットを着ると腕周りがきつくなる」という声があった。(寶諸氏)
「洋服作りの際は、単品だけでなく、他の商品との組み合わせも意識することが必要だと学ぶ良い機会になった」と寶諸氏は振り返る。
インフルエンサーとのコラボ商品で認知拡大を狙う
ブランド認知を広げるため、「seven dot」はインフルエンサーとのコラボレーションに注力している。ここでもコラボを希望するインフルエンサーが、日頃自身のSNSで紹介している商品の価格帯やファンの傾向などを分析。インフルエンサーのファンに人気がありそうな商品、良い反応が得られそうな商品作りのヒントにしているという。
人気ブロガーのYOKO氏とコラボしオールインワンを作った際には、「seven dot」のInstagramでアンケートを実施。ストーリー機能を活用し、自身のファンに「コラボ商品で欲しい色」について質問した。その結果、当初はキャメルのみ販売予定だったが、ブラックの人気が高かったことを受け、2色とも商品化に至ったという。
インフルエンサーとコラボする強みは、自社の施策による認知拡大や商品購入だけではないと寶諸氏は言う。たとえば、SNS用の写真撮影や拡散。インフルエンサーとコラボすることで、インフルエンサー自身がモデルとなり撮影、それらの写真はすぐにSNSを通じてファンに提供される。またインフルエンサーの協力を得ることで、自社だけでは固定しがちなアイデア面でも、外部の新たな視点を取り入れることができるという。
クラウドファンディングで、「透けにくい」Tシャツを販売
D2Cブランドとして、顧客との直接的な接点作りを強化するために取り組んだ直近の施策は、クラウドファンディングだ。「下に着ている服が透けてしまう」という既製品の課題を解決するために開発した白いTシャツ「SHIRO」を2020年10月14日から2か月間、クラウドファンディングサービス「Makuake」で展開した。「SHIRO」は、厚手の生地を使用することで、黒インナーでも透けにくいという商品だ。
「商品が良ければ売れるわけじゃない」と痛感
2020年10月からクラウドファンディングをスタートしたが、新型コロナウイルス感染症拡大により、さまざまな課題とも向き合った。
たとえば掲載時期。掲載したTシャツは夏向け商材。そのため、クラウドファンディングのLPでは写真素材、テキスト素材とも夏向けで構成していた。だが、クラウドファンディングでのスタートは、10月にずれ込んだ。課題解決型の商品であることから顧客ニーズは高いと踏んだが、季節要因が影響し初動が伸び悩んだ。
「クラウドファンディングを実際する際は、事前準備が重要。掲載が遅れたことで、既存ユーザーを巻き込む準備が足りないままでのスタートとなってしまった」(寶諸氏)。
最終的に支援金額は15万円を超え、予定していた目標金額を上回ったが、「良い商品であれば時期に左右されず売れるわけではないと思った」と寶諸氏は話す。
その上で、「戦略的に広告やPRを展開することで新規ユーザーが付いてくる」ことも改めて感じたという。
また今回は韓国企業に製造を依頼したことから、「海外企業とのやりとりに関しても学んだ点がある」と寶諸氏。その1つがスケジュール感だ。今回は、コロナの影響により航空便が減ってしまい、サンプルのやりとりに非常に時間がかかった。得た気づきを次回以降の商品開発に生かしていく考えだ。
「共創協業」マインドを持つ企業とコラボしていきたい
今後の取り組みについて寶諸氏は、「他企業とのコラボを積極的に行っていきたい」と話す。その際、重視しているのが「ブランドの世界観が近いこと」と「共創協業」のマインドを持っていること。世界観が近い他社とタッグを組み、両社が保有するデータを共有できれば、商品開発はもちろん、共に成長を目指していけるのではという思いがある。
D2Cのビジネスモデルを取り入れる新興企業が増えているが、1つひとつの会社・ブランドの規模はまだそこまで大きくはない。小規模の企業では取り組める施策に限りがあるので、自社だけで取り組むのではなくできれば協業していきたい。協業することで、自社だけでは気づけなかったことに気づく良い機会になる。また、そこで得た経験やノウハウを積み重ねることで、企業のDX支援など、当社の他の事業にも生かせるはずだ。(寶諸氏)