これからBtoB-ECに取り組む人のための、カート・受発注システム情報⑤ ecbeing BtoB / ecWorks(ecbeing)
これからBtoB-ECに取り組む事業者のために、『BtoB-EC市場の現状と将来展望2022』より、主要なカート・受発注システム事業者について7回に渡って各社の概要や特徴をまとめるシリーズ。第5回はecbeingが提供する2つのBtoB-EC向けソリューション「ecbeing BtoB」と「ecWorks」について解説する。
第1回 Bカート
第2回 ebisumart
第3回 アラジンEC
第4回 EC-CUBE
第5回 ecbeing BtoB / ecWorks(今回)
第6回 SI Web Shopping
第7回 まとめ
「ecbeing」の概要
「ecbeing」は、パソコンショップ「ソフトクリエイト」のオムニチャネル経験から生まれたECサイト構築パッケージソフトである。実際のECビジネス経験とサイト運営者の立場で作られているため、使いやすく、充実した機能を提供する。
パッケージ販売開始以来、BtoC向け、BtoB向けと分けることなく企業のリクエストによってカスタマイズ対応してきたが、BtoBニーズの高まりを受け、2006年に「ecbeing BtoB」をリリース。さらに2021年10月には、よりスモールかつスピーディーにBtoB-ECを立ち上げたいというニーズに応えた「ecWorks」もリリースし、BtoB支援を一層強化している。
サービス・ソリューション
パッケージの「ecbeing BtoB」は、BtoB-ECに特化した標準機能に加えて、顧客ごとに生じる様々なニーズに合わせたカスタマイズを提供。これまで、得意先画面、管理者画面、サプライヤー画面、営業支援システムなど、時代変化と顧客の要望に合わせた機能を順次拡張している。
また、日本ならではの商習慣に合わせた設計を心がけていることから、国産の基幹システムとのシームレスな連携や、取引先の高齢者利用を見越した「代理購入サービス」を実装するなど、誰でも使いやすい機能の開発に力を入れている。導入の対象は、カスタマイズ非対応のASPサービスでは不十分という中堅から大手企業となっている。
一方で、企業の業務効率改善やDX推進、コロナ禍によるリモートワークの促進などを背景に、手頃でスピーディーにBtoB-ECを構築したいというニーズも増加したことで、「ecbeing BtoB」をベースに、クラウド版の「ecWorks」を新たに開発した。一見の顧客でも購入できる「ゲスト購入」や、クレジットカード決済対応など、スモールスタートのBtoB-ECでニーズの高い機能を中心に、約20個のオプション機能を用意。今後も順次拡充していく計画だ。
このほか、BtoB-ECを「どう営業支援ツールとして活用してもらうか」という観点から開発した営業支援システム「WEBセールス・オフィス」も提供。コロナ禍を機にオンラインを活用した営業活動が不可欠となった中、オンラインとオフラインのハイブリッド型の営業が実現できる仕組みとして、各社の売上向上に貢献している。
料金体系や大まかな費用感
ecbeing BtoB
- 初期開発費用 :200万〜4000万円程度。1000万円~1500万円程度がボリュームゾーン
- 保守費用 :10万円〜(月額)。オプション機能の利用に応じて費用が変動する
ecWorks
- 初期費用 :50万円~。200万、300万円程度からがボリュームゾーン
- 月額費用 :8万9000円~。オプション機能の利用に応じて費用が変動する
外部サービス・事業者の提携
決済サービスなどBtoC-ECサイトで提供しているものは、顧客の要望に応じて連携することができる。ただし、EAI(Enterprise Application Integration:異なる複数のシステム間のデータ連携をスムーズにする仕組み)は、カスタマイズで構築できることから、あまり他社に頼らず顧客のニーズに合わせて自社内で開発している。
導入・開発期間
ecbeing BtoB
カスタマイズボリュームによって異なるが、導入検討から最短3か月~10か月程度でリリースするケースが多い。
ecWorks
基幹システムとの連携等のカスタマイズがない場合は、最短1か月でリリースが可能。
主な顧客層
●業種・業態
「ecbeing BtoB」「ecWorks」の双方とも特に偏りはなく、メーカーや卸売業をはじめ、様々な業種・業態で導入実績がある。
●年商規模、商品特性
・企業規模 :企業規模は様々だが、「ecbeing BtoB」は中堅~大手企業が多い。ニーズや予算に合わせて「ecbeing BtoB」と「ecWorks」から選べるようにしている。
・商品特性 :特に制限や偏りはない。
●顧客事例① 株式会社山櫻
1931年創業。名刺や封筒、挨拶状などの紙製品を扱う。20年ほど前に立ち上げた、法人向けWeb名刺発注サービス「corezo(コレッソ)」のサイトを、2016年8月、「ecbeing BtoB」でリニューアル。
リニューアル前から約600社が利用する人気サービスだったが、新入社員が入る時期や異動期に想定していたパフォーマンスが出ない、安定稼働しないなどの課題があり、リニューアルに踏み切った。導入の決め手は、ユーザビリティに力を注いでいることや、セキュリティを重視している点だという。
山櫻はリニューアルプロジェクト発足時から営業メンバーが関わるなど、全社で一丸となってBtoB-ECの運営に取り組んでいる。実際リニューアル後の成果はめざましく、利用企業数と売り上げが倍増。ユーザー数ベースでは、以前は20万~30万人ほどだったが、2020年には約100万人に達している。
●顧客事例② 株式会社ダルトン
“海外の香りと空気を持つ刺激と発見のある空間”をテーマとするインテリア雑貨メーカー。以前はBtoBの注文は7割がFAX、3割がメールで行われており、1件1件にスタッフが対応しながら倉庫に発注書を送付する必要があった。受発注処理をデジタル化して業務効率を図ることを目的に、BtoB-ECサイトを構築。同社はecbeingのパッケージで構築したBtoC-ECサイトをすでに運用しており、両サイトの統一化を図るために「ecbeing BtoB」を採用した。
BtoB-ECサイトからの注文は、顧客から直接倉庫に届くため、窓口業務は大幅に軽減。また、倉庫ではBtoB向けとBtoC向けの商品を分けていないため、システム連携によって共通で在庫管理をできるようにし、両サイトの在庫表示が自動で変動する仕組みとした。これにより、従来は電話等で対応していた卸先からの在庫確認にかかる工数まで削減された。
BtoB-ECサイトはジャンル分けにこだわっており、「シーン別」「マテリアル(素材)」などのほか、「クリスマスシーズン用に赤い商品だけをピックアップ」したいといった要望に応えられるよう、赤い商品だけを一括で提案できるような「カラー」の選択肢を用意。商材の特性上、「カラー」の需要は高く、営業担当者がカタログからカラーバリエーションをピックアップしなければならなかった作業も、顧客側でいつでもピックアップできるようになり、双方のメリットとなった。
売上傾向
2021年4-9月期の「ecbeing BtoB」の受注件数は、前年同期比の約1.5倍に拡大。同10月に「ecWorks」をリリースしたため、以降もBtoBの引き合いはさらに増加している。
強みや他社との差別化ポイント
ecbeingの強みは、これまでに1,400超のサイトを構築・支援してきた実績とノウハウにある。また、開発400名以上、マーケティング支援200名以上など、国内最大のリソースを有する。BtoBに関しても専門の部門を設け、豊富なリソースとノウハウ集約により、独自業務機能のカスタマイズや連携等もスピーディーかつ高品質に対応することができる。
BtoBパッケージでは、「キーワードで探す」など、BtoC-ECが得意とする機能を取り入れることで、旧来式のEDIでは不便だった部分を解消。トップページに多くの商品を並べた方が売れやすい傾向にあるが、一方で必要とされる商品は企業によって異なることから、得意先ごとに表示するカテゴリーを変更できるようにするなど、顧客企業にとってもより使いやすいBtoB-ECサイトの構築を心がけている。
よく購入する商品をグルーピングしておきワンクリックですぐに買える便利機能や、定期的に配送する取引先の住所登録、在庫、納期、送料の即時表示などにも対応。また、取引先から注文や問い合わせが入ると営業担当が確認できる機能を実装するなど、基幹システムを経由すると時間がかかりがちなポイントをフロントで処理できるようにしている。その他、BtoB-ECを新規導入した際に起こりがちな「使い方がわからない」という問い合わせに迅速に対応できる機能も実装した。
中堅~大手の利用が多い「ecbeing BtoB」をベースに開発した、より小規模な事業者向けの「ecWorks」を提供することにより、スピーディーかつ安価にBtoB-ECを始めたい事業者のニーズに応えられるほか、成長に合わせて一貫したサポートができる体制となっている。事業規模が成長するに伴い、個社ごとにより高度なカスタマイズニーズが発生してくるが、他社のシステムに切り替える場合、一般的にデータの移行などあらゆる作業負担が多く、時間やコストがかかりやすい。その点、「ecWorks」から「ecbeing BtoB」への切り替えは、少ないコストでスムーズに完結できる。
市場の現状と展望
2019年から「働き方改革関連法」が順次施行され、各社ともWebの活用を含めた業務効率の改善に動き始めていたが、そこにコロナ禍が追い打ちをかけたと言える。在宅ワークの増加やカスタマーサポート部隊の人員削減などで、以前のような受注ボリュームが処理しきれず、業務改善の課題が露呈した。
その中で、BtoB業界においても「Webの活用を増やしていきたい」といった声は2020年から多くなってきたが、今もなおFAXや電話をメインに利用する事業者は多い。その理由は、今後長期にわたって使っていくシステムを選定し、ある程度大きな金額を投資するという大事な決断となるため、企業にとっても簡単に動くことができず、熟考している段階なのではないかと推測する。2021年以降も引き続き「初めてWebを使う」という導入社は多かったため、今後もWebの活用に初めて乗り出すBtoB事業者は多いものと見ている。
一方で、すでにWebの活用によって業務効率化や売り上げへの好影響を経験したBtoB事業者からは、「よりサービスを拡充したい」というニーズが高まっているという。次のステップに向けた改良と投資に対する意欲はBtoC事業者をしのぐ勢いがあると実感しており、この傾向はますます活気を帯びると予測している。
今後の戦略と課題
BtoBの場合は「初めてWebを使う」という事業者が多い傾向にあるため、自社に適したサービスをしっかり選定することが難しい状況だと指摘する。BtoCに比べてECのプレイヤーが少ない上、クローズドで運営されるケースも多く、オープンで活発な情報交換がしづらいことも影響しているという。
ecbeingは導入社の事業成長を下支えする立場として、事業者間の横のつながりや、異業種間で情報交換ができる環境を創出し、BtoB業界全体の成長に寄与していくことが重要な役目の一つと捉え、システムの提供にとどまらない支援活動に取り組んでいくことを目指している。
昨今、ようやくBtoB-ECのようなWebサービスの活用が増えてきたものの、BtoBの商習慣上、Webに特化したサービスはまだまだ少ない状況だ。その中で「ecbeing BtoB」に次ぎ、「WEBセールス・オフィス」や「ecWorks」も提供するecbeingは、支援の対象企業や事業内容を拡大してきた実績とノウハウを生かし、今後もBtoB事業者向けのサポートサービスを拡充していきたいとしている。
『BtoB-EC市場の現状と将来展望2022』
- 監修:鵜飼 智史
- 著者:鵜飼 智史/森田 秀一/朝比 美帆/インプレス総合研究所
- 発行所:株式会社インプレス
- 発売日 :2022年1月25日(火)
- 価格 :CD(PDF)+冊子版 110,000円(本体100,000円+税10%)
CD(PDF)版・電子版 99,000円(本体 90,000円+税10%) - 判型 :A4判 カラー
- ページ数 :250ページ