朝比美帆[執筆] 2022/9/21 7:00

これからBtoB-ECに取り組む事業者のために、主要なカート・受発注システム事業者について各社の概要や特徴をまとめるシリーズ。第6回はシステムインテグレータが提供する「SI Web Shopping」を解説する。

 第1回 Bカート
 第2回 ebisumart
 第3回 アラジンEC
 第4回 EC-CUBE
 第5回 ecbeing BtoB / ecWorks
 第6回 SI Web Shopping(今回)
 第7回 まとめ

『BtoB-EC市場の現状と将来展望 2022』についての詳細はこちらへ

「SI Web Shopping」の概要

株式会社システムインテグレータ
会社名:株式会社システムインテグレータ
URL:https://www.sint.co.jp/
所在地:埼玉県さいたま市中央区新都心11番地2 ランド・アクシス・タワー(明治安田生命さいたま新都心ビル)32階
設立:1995年3月
資本金:3億6771万2000円(資本準備金 3億5771万2000円)
代表者:引屋敷 智(代表取締役社長 CEO)
事業内容:パッケージ・ソフトウエアおよびクラウドサービス(SaaS)の企画開発・販売、コンサルティング(ECソフト、ERP、開発支援ツール、プロジェクト管理ツール、プログラミングスキル判定サービスなど)、AIを使った製品・サービスの企画開発および販売、AI関連のソリューションの提供・支援およびコンサルティング
社員数:253名(役員含む)※2022年9月1日現在

「SI Web Shopping」はシステムインテグレータが開発・提供を手掛けるECサイト構築パッケージ。同社は、日本で最初にERPパッケージの企画・開発に携わった梅田氏が創業。ERPなど企業向けソフトウエア・サービスのほか、BtoB-ECやBtoC-EC、AIの開発などに取り組んでいる。

これまでの実績をもとに、企業ごとの利用目的に即した複雑なカスタマイズ提案などを得意とする。BtoB-ECでは、主に東証一部上場企業のメーカーや商社など、大手企業を中心に採用されている。

「SI Web Shopping」のサービス・ソリューション

同社は1999年からBtoB-EC事業として「SI Web Shopping」を開始。当初から、企業間取引に必要な機能をすべて実装したオールイン型のパッケージとして提供している。BtoB-ECは、業種・業態や企業規模などに応じて利用目的が異なり、必要とされる要件も大幅に異なってくる上、サイトの利用企業(導入先の取引先)が増加するほどにより複雑な要件が求められてくる。

同社はERPソリューションも主力事業としているほか、20年以上にわたってECサイト構築を支援してきた強みを持つことから、大規模なカスタマイズ要求にも柔軟に対応する。このため、大手メーカーなど、主にエンタープライズでの導入実績が豊富だ。

また「SI Web Shopping」は、プログラムソースとデータベース構造を公開しているため、拡張性やメンテナンス性が高く、システム開発の内製化にも移行しやすい仕組みとなっている。内製化のニーズはBtoC事業者に多い傾向だが、BtoB事業者の場合も、特定の業務に精通したほかベンダーが当該箇所をカスタマイズしやすくなるなど、「SI Web Shopping」をベースに自社に最適な機能拡張が自由にできると評価を得ている。

「SI Web Shopping BtoB版」の概要
「SI Web Shopping BtoB版」の概要
出典:株式会社システムインテグレータ

料金体系や大まかな費用感

  • 初期開発費用:数百万円〜数億円
  • 保守費用:1ライセンス200万円~(初期費用)+年間保守40万円~

外部サービス・事業者の提携

導入社が利用する各種システム、サービスとの連携が可能。外部連携インターフェイスを標準実装しており、高いカスタマイズが要求される場合にも柔軟に対応できる。

導入・開発期間

開発規模により大きく異なるが、1年程度のケースが多い。

主な顧客層

●業種・業態

様々な業種・業態の企業で実績がある。特に製造業からの引き合いが多い。

●年商規模、商品特性

  • 企業規模 :主に大手企業

●顧客事例 株式会社サンワカンパニー

住宅設備・建築資材を工務店向けに販売。オムニチャネルに対応する新たなEC基盤を作るため、「SI Web Shopping」を利用してECサイトを構築した。

取扱商品点数が多く、かつ組み合わせのバリエーションが複雑化しているため、工期に合わせた納期調整など「業務の属人化」が課題になっていたが、見積依頼をFAXではなくすべてECで受け付けるようにしたことで、属人化の脱却と効率化ができたと実感している。

2017年時点で、ECサイトからの流入が前年度の6倍になるなど、顧客対象である工務店のEC利用比率は確実に上がっているという。また、以前はコンテンツやクリエイティブをHTMLでつどコーディングしていたが、「SI Web Shopping」のCMS機能によって誰でも効率的にデザイン変更ができるようになったほか、キャンペーンセールなどで各ページを個別に修正していた作業も、マスターを変更するだけですべてのページに反映できるようになった。

価格はオープンにつき、企業ごとの専用ログインページなどは設けていない。在庫がない商品については見積依頼画面に遷移させることで、顧客の囲い込みにも成功している。工務店からの受注だけではなく、施主が工事業者に住宅設備を提供する「施主支給」にも対応できるよう、BtoC-ECの導線も強化しているという。

サンワカンパニーのECサイト
サンワカンパニーのECサイト
https://www.sanwacompany.co.jp/shop/

売上傾向

BtoB-ECの相談件数、導入数とも、年々増加。BtoCはリプレイス案件が多い一方、BtoBはECサイトを新規構築する案件が多い。

強みや他社との差別化ポイント

ECサイト構築だけでなく、ERPソリューションも主力事業とする同社は、バックエンド業務における知見が豊富だ。ECサイトを構築する際は、フロントエンド業務に意識がいきがちだが、特にBtoB-ECはバックエンド業務を重視する必要がある。このため、フロントエンドとバックエンドの双方を深く理解して設計・開発できることが強みとなっている。

機能面ではBtoB事業者の複雑なカスタマイズに応えながらも、利用者に対してはBtoC-ECサイトのような使い勝手の良い購入体験を提供しなければならない。探しやすく使いやすい画面にすることにより、取引先の快適な操作性も実現。BtoCとBtoBのECサイトを20年以上にわたって構築してきたノウハウが生かされている。

エンタープライズ向けにサービス提供をしてきた同社は、中長期的かつ広い視野を持って、社会や企業・業界の抱える課題を解決するための事業活動に率先して取り組んでいることも特徴だ。2021年8月から開始した「SDGs支援プログラム」では、SDGs達成を目的としたEC事業者に対して「SI Web Shopping」のライセンスを特別価格で提供。

このほか、製造業のDX化を推進するためのサービス開発にも着手している。例えば、機械の部品メーカー場合、取引先の部品の買い替え時期が予測できれば、不測の事態を防止できるとともに、業務効率を図りながら安定した受注と供給が可能になる。このように、単なる受発注の仕組みにとどまらず、ECベンダーとして考え得るDXのシステム開発にも乗り出している。

市場の現状と展望

昨今、BtoB事業者から寄せられる相談は、取引先から「Webの受発注にしてほしい」という要望が多くなったため急遽ECの導入を検討しているといった内容が増えているようだ。日本では今もなおアナログな受注業務に依存する企業は多いが、取引先からのWeb化のニーズが後押しとなり、BtoB-ECを始める動きは今後さらに加速していくと見ている。

また、現在のBtoB-ECのニーズは、電話やFAXによる受注業務を省力化する面に注目が集まっているが、「自社の業務効率が実現できた」という企業の中では、次なる問題が徐々に浮き彫りになってきているという。

BtoB-ECの運営は事務局が担当することになりやすく、Webの受注になると営業担当者が蚊帳の外になってしまいやすいという問題だ。取引先の特性を最も把握しているはずの営業担当者が取引先とのWebの注文取引に介入できなければ、これまでのようなきめ細かな顧客フォローがしづらくなる。

このため、BtoB-ECを現在のような「受注の省力化」「業務効率化」というキーワードで終わらせるのではなく、今後は取引先の特性や購買情報など様々な情報を集約し、営業担当者がECシステムを通じて取引先に有効なアプローチができるような、能動的なツールとしての役割が求められていくと考えている。これからのBtoB-ECは、営業担当者の持つノウハウやスキルが生かせられる、マーケティングの仕組みも包含されていくと予測する。

今後の戦略と課題

BtoB事業者の中では、これから新規でECを立ち上げるという企業がまだまだ多く、自社の弱点となっている部分をどうWeb化するかという交通整理ができていない状態のまま、EC構築を急ごうとするケースがよく見受けられるという。

しかし、BtoB-ECの構築は、今のリアル業務をWebに反映することが第一歩となるため、まずは自社の業務の棚卸しをしっかりと行わなければ、クローズド型とオープン型のどちらにするのか、商品をいかに値付けしてどのような形で取引先に価格を開示するのかなどの設計も進められなくなってしまう。システムさえ導入すればECが始められるものではなく、前段階の業務の整理が非常に重要であることを啓発していく必要があると考えている。

このほか、2024年初頭にISDN回線が終了することに伴い、ISDN回線でEDIを利用している企業が大規模なカスタマイズに対応できるBtoB-ECに移行を検討する動きが始まっているという。特に、同社がターゲットとするエンタープライズはこの余波を大きく受ける企業が多いと考えられるため、ERPソリューションも手掛ける知識と知見を生かし、各社にフィットする形でEDIからECへと移行できるよう、支援を強化していく計画だ。

『BtoB-EC市場の現状と将来展望 2022』についての詳細はこちらへ
BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引き2020[今後デジタル化が進むBtoBとECがもたらす変革]

『BtoB-EC市場の現状と将来展望2022』

  • 監修:鵜飼 智史
  • 著者:鵜飼 智史/森田 秀一/朝比 美帆/インプレス総合研究所
  • 発行所:株式会社インプレス
  • 発売日 :2022年1月25日(火)
  • 価格 :CD(PDF)+冊子版 110,000円(本体100,000円+税10%)
    CD(PDF)版・電子版 99,000円(本体 90,000円+税10%)
  • 判型 :A4判 カラー
  • ページ数 :250ページ
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