ネット宅配クリーニングの先駆者「ヨシハラシステムズ」のトップが明かす! 「せんたく便」の新規 顧客獲得や売上拡大の鍵となった施策とは?
クリーニング分野でいち早くIT化を進め、宅配クリーニング事業の先駆者的存在であるヨシハラシステムズ。ヤマト運輸との協業で全国の消費者に宅配クリーニング「せんたく便」を展開。自社開発した宅配クリーニングシステムを同業他社向けに外販するなど、“ネットを通じたクリーニング”の裾野拡大も進めている。宅配クリーニングで商圏を拡大し、新たな需要を創造する業界のパイオニアであるヨシハラシステムズの𠮷原保代表取締役にインタビューした。
滋賀県彦根市で「御用聞きスタイル」からクリーニング業を開始
ヨシハラシステムズが滋賀県彦根市でクリーニング業を始めたのは1959年。現社長である𠮷原保氏の父、𠮷原重雄氏が創業。現社長の𠮷原保氏は20代前半に一度は𠮷原重雄氏のもとで働くも、その後は起業。モバイル関連の事業を手がけた後、2008年に会社を継いだ当時の状況を𠮷原氏は次のように振り返る。
会社を継いだ直後の2008年9月にリーマンショックがありました。当時は、会社の資金繰りは健全とは言えず、社員が育っていないため会社が組織として成り立っていませんでした。会社の建て直しには、組織改革を進めると同時に、収益拡大のための出店店舗の拡大が必要な状況でした。(𠮷原氏)
「大きな資金をかけずに売り上げを伸ばす方法はないか?」。IT企業を経営した𠮷原氏の頭に浮かんだのが、Webによる集客だった。
全国でも先駆けとなる宅配クリーニングの「せんたく便」をローンチ
当時、クリーニング店がネットで集客する事例はなかったものの、「Amazon.co.jp」などのショッピングサイトが台頭し、「ネットでモノが売れる環境ができつつあった」(𠮷原氏)。「これは事業として成り立つ」と判断した𠮷原氏は2009年1月、宅配クリーニングの「せんたく便」をローンチする。
𠮷原氏が得意とするITの知見と経験、先代から引き継いだクリーニング業を掛け合わせた「せんたく便」。インターネットもしくは電話を通じて申し込みを受け付け、衣類を消費者から受け取って、自社の工場でクリーニング。そして、消費者にクリーニングした衣類を返送するという、消費者が店舗に赴く必要がなく完結する仕組みだ。
受注から出荷までの商品管理のシステムを自社で開発
「せんたく便」では現在、デリバリー部分をヤマト運輸が担っているが、開始当初は両社間でシステムが連携されていなかったため、手書きのFAXでヤマト運輸に集荷を依頼する必要があったことから事務スタッフの作業負荷が大きかった。
通常のECビジネスであれば受注データを基に、商品を倉庫から出荷して納品すれば終わりですが、クリーニングは受注が発生し、衣類を回収してからがスタートになります。一般的なECビジネスとは異なり、消費者とのやり取りがかなり複雑になるため、1アイテムごとの商品管理が重要になり、その分システムも複雑になります。(𠮷原氏)
ヤマト運輸が集荷した衣類は「せんたく便」の工場に入荷され、さらにクリーニング後に出荷してヤマト運輸が宅配。ヤマト運輸と「せんたく便」との間で「管理番号」をデータで連携、1つの荷物に共通番号を使っている。その結果、両社の間で荷物の受け取り・受け渡し、管理などをスムーズに行える仕組みを構築したという。
こうした複雑な業務フローをシステム化するために、𠮷原氏は自社でショッピングカート、受注管理、WMS(倉庫管理システム)を開発。受注から出荷までの商品管理のシステム化を実現した。
「クレジットカード番号を入力したくない」を解決するため「AmazonPay」を導入
順調に業容を拡大しているように見える「せんたく便」だが、消費者の利便性といった面で課題を抱えていた。
自社ブランドの知名度の低さもあり、クレジットカード決済よりも代金引換(コレクト)やあと払いを選択されることが多かった。「クレジットカード番号を入力したくない」といった顧客ニーズにも応えたかったのです。(𠮷原氏)
こうした課題に対して新たに加えた決済手段が、Amazon が提供するID決済サービス「Amazon Pay」だった。𠮷原氏によると、他の決済手段も検討したが、「『Amazon Pay』であれば、配送先住所情報も容易に取得できるのが利点だと考えた」と言う。2021年1月に「Amazon Pay」を導入。これにより、「オンライン決済の利用が進みました」(𠮷原氏)
現在、「Amazon Pay」の利用割合は全体の3割程度、新規顧客に絞ってみると「Amazon Pay」の利用率は4割程度に上るという。
新規のお客さまはAmazonアカウントを使って登録することが多いです。新規獲得や販促という面で一定程度、寄与しています。(𠮷原氏)
Amazonアカウントに登録されている情報の鮮度が大きなメリット
「Amazon Pay」が課題解決につながったという𠮷原氏は、導入メリットをこう感じている。「お客さまの住所情報の確かさです」
衣類を引き取り、クリーニング後に届けるというビジネスモデルのため、消費者の住所情報の正確さは必要不可欠だ。「Amazon Pay」は「Amazonアカウント」に登録されている情報を使用するため、「Amazon Pay」経由の決済は正確な住所情報が設定されていることが配送のトラブル削減につながっている。
また、消費者にとっては個人情報入力の手間を削減でき、店側にとっては情報入力の一手間という心理的ハードルを下げられることで、売り上げの拡大が期待できる点も魅力と説明。「『Amazon Pay』を導入してからは、代金引換の利用が減ってコスト削減にもつながりました」と𠮷原氏は言う。
2回目以降の消費者が使う紙の申込書でも「Amazon Pay」を活用
「せんたく便」では、初回利用時に紙の申込書を同封している。これは、2回目以降の利用時に、申込書をクリーニングした衣類に同封すれば注文が完結するという申込方法。注文時の手間を省いてリピートを促すための仕組みだ。
この紙の申込書では決済方法も選択できるのが大きな特徴。「Amazon Pay」を選択した場合、「せんたく便」から消費者にメールが届き、リンクをクリックすると「Amazon Pay」で決済できるという。
「せんたく便」に再びアクセスしてもらうというフローではなく、紙ベースで注文できるこの仕組みを採用したのは消費者の利便性を重視したため。紙ベースの申込書に、最短2クリックで決済を完了できる「Amazon Pay」を採用したことで、利便性がさらに向上したという。
「決済手段や決済金額を変更したい」に対応できる「Amazon Pay」の機能
物販のECビジネスでは、商品購入手続き時にオーソリを行いクレジットカードの利用枠を確保し、商品出荷時に指定売上処理を行うことが一般的。一方、「せんたく便」のようなビジネスモデルでは、クリーニングした後の出荷時に売上処理をするため、注文から決済までのリードタイムが長い。
加えて、たとえば「20点パック」を消費者が選んだものの、実際に送り届けてきた点数が「超過していた」「大きく下回っていた」というケースも多々発生する。点数オーバーであれば超過料金が発生、下回っていればお得なコースに変更した方が良い。通常の物販ECとは異なる買い物フローが存在するため、「決済手段や決済金額を後から変更したい」というニーズが発生する。
そんな顧客ニーズに対応しているのが、「Amazon Pay」の「今すぐ支払う」機能だ。「今すぐ支払う」機能は通常の「Amazon Pay」機能とは異なり、注文確認画面を挟まずに「Amazon Pay」が管理する専用画面からスムーズに支払い方法の変更を行うことができる機能であり、申込金額から最終的な請求金額が変更となった場合にも、柔軟に対応できる点が消費者に支持されている。
𠮷原氏は「従来は基本的に決済手段を変更できないようにしていました。現在は『今すぐ支払う』機能を使い、注文後の決済手段や金額の変更に対応できるようにしています」と言う。
「Amazon Pay」の還元プログラム活用で売上効果を実感
ヨシハラシステムズが売上アップの施策の一環で活用しているのが「Amazon Pay」のギフトカード還元プログラム。
「Amazon Pay」では、「Amazon Pay」の支払いに「Amazonギフトカード」を使った場合、ギフトカードでの支払い金額の「最大1.0%分」をギフトカードで還元するという消費者にとってお得なプログラムがある。このお得なプログラムを、ECサイト上で簡単に告知できる仕組みも用意されている。それが、「Amazon Pay バナープログラム」だ。
このバナープログラムでは、ECサイトに掲載する「Amazon Pay」の還元プログラム告知バナーについて、画像を貼り付けるのではなく、指定のURLでバナーを参照することにより、キャンペーンバナーの内容が適時自動的に切り替わるという仕組みを採用している。事業者は一度の導入対応だけで運用の手間なく、最新・最適なバナーを表示させることが可能となる。
事業者側には消費者に還元する費用の負担などは一切なく活用でき、最新のキャンペーンバナーを「Amazon Pay」側が切り替えるため都度バナーを切り替えるなどの運用面の負担もなく、消費者にお得なキャンペーンの機会をもれなく知らせることもできる。
このバナープログラムを活用して、さまざまな場所に「Amazon Pay」のバナーを設置しています。お得なキャンペーン情報が告知できるのはもちろん、「Amazon Pay」で決済ができるということをアピールし、Amazonの信頼感や安心安全な決済というイメージも訴求できると思います。売り上げへの効果を強く感じているため、バナーは継続して使っています。(𠮷原氏)