「北欧、暮らしの道具店」は何がスゴイ?東証グロースに新規上場するクラシコムのビジネスモデルや強みなどまとめ
8月5日に東証グロース市場へ株式を上場する、北欧雑貨のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム。現経営陣とその親族の個人出資による自己資金をもとに堅実な黒字運営を続ける。2021年7月期の売上高は45億3200万円で前期比30.5%増、経常利益は7億9700万円で同42.1%増。売上高経常利益率は17.6%にのぼる。「2021年経済産業省企業活動基本調査」によると、調査対象企業の売上高経常利益率は3.1%で、クラシコムは高い収益率を誇る。
2021年7月期における当期純利益は5億7099万円。3億7460万円の純利益だった2020年7月期比で52.4%増。堅実な黒字運営を続け、積み上げてきた利益の合計を指す繰越利益剰余金は2021年7月期で17億円を超える。
「北欧、暮らしの道具店」は2007年にヴィンテージの北欧食器などを扱うECサイトとしてスタート。現在はアパレル、キッチン、インテリア雑貨が主力商材で、自社企画のオリジナル商品「KURASHI&Trips PUBLISHING」が売上高の約50%を占める。
オリジナル商品、ブランド力などで2021年7月期の定価消化率は99.5%。ほぼすべての注文において送料を受領するビジネスモデルを築いており、こうした点も高い利益率の源泉となっている。
クラシコムでは、自社ECサイトを通じて直接商品を消費者に提供していることから、ECに関する事業ドメインを「D2C(Direct to Customer)」と表現している。
ユーザーとのダイレクトなつながりを大切にしてきたクラシコム。「北欧、暮らしの道具店」サイトを中心に、Web記事、オリジナルドラマ、ドキュメンタリー、ラジオ番組、音楽プレイリスト、全国劇場公開されたオリジナルの映画など、さまざまなコンテンツを発信し続けることで、ブランド力の向上、ファンを獲得してきた。
顧客とのエンゲージメントチャンネルは、SNS、アプリ、Webサイト、メールマガジンといった自社チャネル。新規顧客獲得のために広告媒体に支払う広告費、顧客育成のために支払う販促費を低く抑え、自社チャネルの「北欧、暮らしの道具店」、SNSなどで発信する各種コンテンツの提供を通じ、効率的に顧客を獲得している。
クラシコムはさまざまな媒体、エンゲージメントチャンネルでコミュニケーションを長期的な関係性を構築。たとえば、読み物や動画を楽しむためにWebサイトを訪問するといった動機の提供につながり、ユーザーが長期にわたって継続的に買い物をする環境を整えたという。
平均LTV(ある会計年度に初購入したユーザー全員について、特定期間の購入金額の平均値を算出した数値)は長期にわたって伸長。初購入年度が2017年7月期のユーザーについて、「3年LTV」は「1年LTV」の約2倍という。
マーチャンダイジング(MD)、バックヤードではEC運営を通じて獲得したデータを活用し、精度の高い商品企画、適正な発注、在庫コントロールを実現。1年間の商品回転率は14.1回と、効率性の高いECサイト運営を行っている。
従業員数は2022年5月31日現在で77人、平均年齢は34.2歳。平均年間給与は647万円。
企業理念は「フィットする暮らし、つくろう。」。経営方針は「自由・平和・希望」。
2022年7月期の業績予想は、売上高が51億4900万円(前期比13.6%増)、営業利益は8億2900万円(同6.4%増)、経常利益は8億3400万円(同4.7%増)、当期純利益は5億5000万円(同3.6%減)。