GMOペパボは3月9日、ECサイト構築サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ(カラーミーショップ)」において、AI連携用のリモートMCP(Model Context Protocol)サーバーの提供を開始した。同機能の提供は国内ECカート構築サービスとして初という(国内提供の総合・汎用ASPカート7社比較、2026年3月5日時点、GMOペパボ調べ)。「EC事業者が安心してAIを活用できる環境整備」の取り組み第一弾として位置付ける機能の実装について、GMOペパボの寺井秀明氏(執行役員 兼 EC事業部長)に聞いた。
AIと外部サービスを接続する仕組み「MCP」とは?
――「MCP(Model Context Protocol)」とECサイト構築サービスが接続するメリットなどについて教えて下さい。
GMOペパボ 寺井秀明氏(以下、寺井氏):「MCP」は、AIと外部サービスを「安全に・正しく・共通のルール」で接続するための標準的な仕組みです。
AIがどの情報にアクセスできるのか、どこまで操作して良いのか、どの手順で業務を実行するのかといったルールをあらかじめ定義したうえでAIとサービスを接続することで、AIは「なんとなく操作する存在」ではなく、「決められた範囲内で業務を実行できる存在」になります。
「MCP」をたとえるなら、AIに渡す業務マニュアルと操作権限をセットにした仕組みだと言えるでしょう。「どの仕事を・どの順番で・どうやるのか」という業務マニュアルと、「AIが触れて良い範囲はここ」という操作権限をあらかじめ定めておく。そうすることで、AIはECシステムにおいて、人の代わりに決められた範囲で正確に業務をこなすアシスタントとして機能するようになるのです。
「MCP」を活用することで、AIはECシステムと安全に連携でき、人の言葉を実行可能な操作に変換して、実際の業務を担う存在へと進化します。これは、“AIに聞く”段階から“AIに任せる”段階への大きな転換だと言えるでしょう。EC運営においては商品管理や受注確認といった日常業務を、AIと対話しながら進められるようになります。
――提供の背景を教えて下さい。
寺井氏:近年、生成AIの進化に伴い、AIエージェントが複数のサービスを横断して業務を実行する「エージェント型インターネット」への移行が進んでいます。「MCP」の標準化も進み、AIと外部サービスを安全に接続するための環境整備が進んでいます。
こうしたなかで、EC運営の現場においても、商品登録、在庫管理、受注確認などの業務をAIとの対話を通じて効率化するニーズが広がりつつあります。
「カラーミーショップ」は、EC事業者が安心してAIを活用できる環境の整備を進めており、その取り組みの第一弾として今回の取り組みをスタートしました。
自然言語の対話だけで商品情報登録、売上データの確認などが行えるように
――リモートMCPサーバーの提供で、「カラーミーショップ」利用ショップ(以下、ショップ)にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
寺井氏:ショップさんの最大のメリットは、EC運営における日常的な管理業務を「画面操作」から「AIとの対話」に置き換えられる点です。
これまで商品登録、受注確認、データ取得といった作業は、管理画面を行き来しながら人が1つひとつ操作する必要がありました。しかし「MCP」を通じてAIと安全に接続することで、「この商品の情報を確認して」「今日の未処理の受注を教えて」「在庫が少ない商品を一覧で出して」といった自然言語の指示だけで、必要な情報の取得や更新ができるようになります。
具体的な活用シーンとしては、商品情報の登録・修正時の作業負荷軽減、日次・週次で行う受注状況や売上データの確認、CSVダウンロードや集計を伴う定型業務の省力化などがあげられます。これらはEC運営において頻度が高く、時間を取られやすい業務ですが、AIとの対話を通じて実行できるようになることで、作業時間を大幅に短縮できます。
その結果、ショップの担当者は管理業務に追われる時間を削減し、商品企画や販促施策の検討、顧客対応といった、売り上げに直結する業務により多くの時間を割けるようになると考えています。業務効率化によって運営体制に余裕が生まれ、意思決定のスピードが上がることで、ショップ単位での売上向上が期待できるのではないでしょうか。
また、こうしたAI活用が多くのショップに広がることで、個々のショップの成長が積み重なり、「カラーミーショップ」全体としての流通額拡大にもつながっていくと考えています。リモートMCPサーバーは、そのための土台となる仕組みであり、AIを“相談相手”として使う段階から、“実務を任せられる存在”へと進化させる第一歩だと位置づけています。
ショップ側のシステム変更など大きな対応は不要で使える
――リモートMCPサーバーを使うために、ショップ側が対応することはありますか。
寺井氏:ショップさんは、大きな開発対応やシステム改修を行う必要はありません。すでに「Claude Desktop」などのAIを使っている人であれば、「カラーミーショップ アプリストア」から MCP接続用アプリを導入するだけで、AIとショップを連携できます。
まずは普段から利用している、これから使ってみようと思っている生成AIのアプリケーションから、AI活用への最初の一歩を安心して踏み出していただける環境を提供していきます。
AI活用においては「便利さより安全性」を重視
――昨今、大手企業におけるセキュリティ関連インシデントが相次いでおり、ECにおけるセキュリティ意識が企業・ユーザー共に高まっているかと思います。今回の取り組みにおいて、セキュリティ面での課題はないのでしょうか。
寺井氏:今回の取り組みにおける最も重要な前提条件の1つとして、セキュリティを位置付けています。ECは受注情報や顧客情報など、取り扱うデータの性質上、わずかなリスクも許容されない領域であり、AI活用においても「便利さより安全性を優先する」設計を徹底しています。
「MCP」は、AIが自由にシステムを操作する仕組みではなく、あらかじめ定義された権限と手順の範囲内でのみ操作を許可するプロトコルです。どの情報にアクセスできるのか、どの操作が可能なのかを明示的に制御できるため、AIが意図しないデータに触れたり、勝手に処理を実行したりすることはありません。
今回の取り組みは「AIだから不安」という状態を前提にするのではなく、ECという基幹業務で安心してAIを使うために、制御と透明性を組み込んだ仕組みとして設計しています。今後もセキュリティ面での検証と改善を継続しながら、ショップとユーザーの双方が安心して利用できるAI活用環境を整備していきます。
EC事業者におけるAIの役割、ユーザーの購買行動も大きく変化していく
――近年、ECにおけるAIの存在がより大きくなってきています。今後、EコマースにおけるAI活用はどのように広がっていくと考えていますか。
寺井氏:AIの役割は今後大きく変わっていくと考えています。これまでAIは、売上分析やレコメンドなど、あくまで判断材料を提示する存在にとどまっていましたが、今後は実際に一緒にEC運営をしてくれる仲間のような存在へと進化していくと思っています。
受注処理、在庫管理、商品情報の更新といった日々の運営業務を担いながら、ユーザーの相談内容や購買傾向を理解し、「どの商品を、どのように見せるべきか」「どのタイミングでおすすめすべきか」といった判断までサポートすることで、EC運営そのものをより高度に、かつ継続的に最適化していく役割を担うようになるでしょう。
一方で、ユーザー(消費者)側の購買行動も大きく変化していくと考えています。これまでのように検索キーワードを工夫して商品を探すのではなく、「こんな用途で使いたい」「こんな雰囲気が好き」「予算はこのくらい」「失敗したくない」といった曖昧な要望をAIに伝え、AIがおすすめ商品を提示する体験が当たり前になっていくでしょう。
AIは過去の購入履歴や閲覧傾向、評価データなどを踏まえながら、ユーザー1人ひとりに適した選択肢を提示し、場合によっては購入や決済までをサポートするようになっていくのではないでしょうか。消費者にとっては、探す手間や迷う時間が減り、「AIに相談すれば最適な商品にたどり着ける」買い物体験へと進化していくと考えています。

EC事業者におけるAIの役割、ユーザーの購買行動も大きく変化していく
――今回の施策は「EC事業者が安心してAIを活用できる環境の整備を進めており、その取り組みの第一弾」となっていますが、今後どのような取り組みを進めていく予定でしょうか。
寺井氏:今回の取り組みで、まずはAIとECシステムを安全につなぐための基盤を整備することで、AIが業務に関与できる土台を作りました。今後はこの基盤を生かしながら、段階的に取り組みを広げていく予定です。
具体的には、次のステップとして「カラーミーショップ」の管理画面にAI機能の統合を進めていきます。これにより、外部のAIツールを別途準備することなく、管理画面上でAIが商品管理、受注確認、データ取得といった業務を直接サポートできるようにし、よりシームレスな操作でEC運営が行えるようになることをめざします。将来的には「この商品の売れ行きはどうか」「今対応すべき受注はどれか」「次、打つべき施策はどのようなものがあるか」といった問いかけに対して、AIが管理画面内で即座に応答し、必要に応じて操作まで支援する世界観を想定しています。
さらにその先では、商品管理、受注対応、在庫管理といった日常業務を一貫して支援する仕組みを整え、EC運営のワンストップ自動化を段階的に推進していきます。ただし、すべてを一気に自動化するのではなく、ショップが安心して任せられる領域から少しずつ広げていくことを重視しています。
私たちがめざしているのは、AIを「一部の先進的な事業者だけが使う特別な技術」にすることではなく、規模や運営体制に関わらず、どのEC事業者でも無理なく活用できる存在にすることです。今回の取り組みを起点に、EC運営の現場に寄り添いながら、安心・安全を前提としたAI活用環境の整備を継続して進めていきたいと考えています。
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