通販からECへ、10兆円の成長市場に。売上データとランキングで振り返る通販・EC市場の変遷
通販新聞社が実施している「通販・通教売上高ランキング調査」の結果によると、「通販新聞」創刊時の1983年度に5743億円だった調査対象企業の合計売上高は22年度に10兆4535億円と10兆円台へと拡大している。40年間で18倍の規模まで伸びたことになる。
マス媒体やカタログでの販売を中心に成長を続けていた通販市場だが、2000年代に入りECが市場をけん引し始めると急成長し、さらに20年からはコロナ禍という特殊事情により一層の伸長を見せた。市場の成長を40年間におけるランキング調査からたどる。
1984年からスタート「通販売上高ランキング」
通販売上高ランキングは、84年1月発行の「通販新聞」新年特集号で上位60社を対象に初めて掲載。その後、参入企業の増加などからランキング企業数を増やし、11年以降の調査は上位300社まで拡大している。さらに生協の宅配、旅行や保険といった役務の通販を除くなど通販事業による実績だけを算出するようにし、回数を重ねるごとにより実態に即した通販の市場規模を捉えられるように調査を行っている。
【1983年度~】DINOSを筆頭に千趣会、ムトウ(現スクロール)、高島屋、ニッセンなどが初期の市場をけん引
83年度の第1回調査は、フジサンケイリビングサービス(現DINOS CORPORATION)が1位で、売上高は547億円。同社以外に千趣会やムトウ(現スクロール)、高島屋、ニッセン、三越、セシール、日本通信教育連盟、ハイセンス(現フェリシモ)なども上位30位入りし、以降、しばらく通販市場をけん引するプレイヤーが勢ぞろいした。
【1986年度~】セシール、ベネッセが次々とトップに躍進
86年度以降はセシールがトップを占めるようになる。同社の86年度の売上高は1038億円と、調査開始4年目で1000億円プレイヤーが誕生した。セシールは決算月を変更した89年度を除いて97年度まで1位の座を守った。
セシールが1位を続けた時期は、同社と共に千趣会、ベネッセコーポレーション、ニッセンでベスト4を形成する年度が多い。そして88年度以降しばらく1位を維持したのがベネッセで、同社は05年度に初の2000億円突破企業となった。
【2009年度~】ミレニアム・イヤーに参入、アマゾンジャパンが頭角を現す
08年度までの11年にわたり1位だったベネッセを追い抜き、09年度に1位となったのがアマゾンジャパン。ミレニアム・イヤーの00年に日本市場へ参入してから9年目でトップの座を獲得。以降、22年度まで1位を維持するアマゾンだが、07年度から22年度までの調査では増収率が1桁となったことがなく、2桁増収を続けている。売上高は17年度に1兆円を超え、21年度には2兆円を超えた。
コロナ禍で成長した企業は? リアル回帰、鍵は“顧客体験向上”
10年代はアマゾン一強という様相が強まったが、一方で20年、21年のコロナ禍にあった2年で同社以外に躍進した企業も見られる。ビックカメラは20年度に37.0%の増収、ヨドバシカメラが21年度に60.3%の増収など大幅に伸長した。
コロナに関しては5月8日に5類感染症に移行し、リアル回帰の動きが顕著になりつつある。22年度以降、コロナ特需の反動も見られようになっている。
一方で、コロナ禍を通じ通販・ECの利便性を享受した利用者は増え、利用層の裾野は確実に広がっているだけに、顧客体験を向上することなどが今後の市場成長には欠かせない。