アリババグループのBtoBプラットフォーム「1688.com」を使った製品輸入、OEM製造などが行える「いつも.」グループのサービスとは?
EC総合支援の「いつも.」は2023年、Alibaba(アリババ)グループが運営する中国のBtoBプラットフォーム「1688.com」の日本正規パートナーである杭州直行便供应链有限公司(SNIFF、スニフ)と包括的戦略パートナー契約を締結した。これにより、日本のEC事業者、個人クリエイター、インフルエンサーなどに対して、商品開発・生産からEC・物流・マーケティングまでを一気通貫でサポートするEC総合支援プラットフォームサービスの提供を始める。そのサービスの特徴などを取材した。
中国BtoBプラットフォーム「1688.com」とSNIFFとは?
「1688.com」はAlibaba(アリババ)グループが運営する中国のBtoBプラットフォーム。中国国内の企業同士のマッチングを行っており、利用企業数は約6000万社、提携しているサプライヤー数は100万社以上。モールの年間GMV(流通取引総額)は約16兆円で、取扱商品数は40億SKUにものぼるという。
「1688.com」の日本正規パートナーである杭州直行便供应链有限公司(SNIFF)は主に、日本のEC事業者に対して商品の調達から日本基準での検品体制、倉庫保管、日本国内への国際輸送など海外からの調達・仕入業務を一気通貫で提供する「THE CKB」サービスを提供している。
2015年からサービスを運営しており、2022年の年間実績では日本への取扱高ベースで約500億円の実績を誇る。
いつも.とSNIFFが提携。商品仕入れや工場の選定、納品までを一気通貫で行うサービスを展開
いつも.とSNIFFが契約を締結した背景には、アリババグループの戦略として、海外進出を強化していることがあげられる。
中国国内での売り上げは右肩上がりに伸びているものの、世界的には「Amazon」「拼多多(ピンドウドウ)」といった大規模プラットフォームの存在、「SHEIN(シーイン)」「Temu(ティームー)」の台頭により危機感を感じており、海外進出に注力して行く方針だという。
その戦略の1つが「1688.com」の日本進出で、その提携先に選ばれたのがSNIFFというわけだ。そして、SNIFFが提供する「THE CKB」を活用し、「1688.com」で販売している商品を日本企業に対して正式に販売できる代理店として、いつも.と伊藤忠商事が選定された。
いつも.SNIFFが提供するサービスとは?
SNIFFとの提携に伴い、いつも.は100%子会社の「いつも.SNIFFを設立した。
「1688.com」のサプライチェーンやビックデータを活用した小ロット多品種、サービス利用者の商品戦略にあわせたOEM・ODMによる商品製造・調達、検品、国際輸送までを一気通貫で行うサービスを提供する。
また、現在開発中のいつも.が保有するECデータや海外のAIテックを融合したトレンド予測やリサーチ、デザイン支援機能を持つ商品企画支援サービスも行う。
たとえば、「『1688.com』で扱っている家電などを一部日本用にカスタマイズして販売したい」といった要望が利用者から寄せられた場合、「1688.com」に出店している100万社の工場のなかから日本企業向けの品質基準に対応できる3万社のリストをもとに、いつも.SNIFF内で専任チームを組み、利用者のニーズに応えられる工場を数社厳選し、案内する。
「1688.com」で扱っている商品を輸入したい利用者に対しては、40億SKUのなかから日本向けに1億点を選定し、そのなかから品質や売れ筋商品、ニーズに合致する商品を絞り込み、提案する。
利用者からの要望があれば、中国での展示会や市場での買い付けの代行も行うという。
また、いつも.が提供しているEC・D2C戦略コンサルティング、サイト構築・運営、SNS・デジタルマーケティング、フルフィルメント、ライブコマース、人材教育などのノウハウやビッグデータを活用し、商品開発・生産・EC・物流・マーケティングまでを一気通貫で提供するEC総合支援プラットフォームの提供を開始する。
強みは「工場選定に要する日数の短さ」「条件交渉力」「商品リサーチ工数の削減」
サービスの強みは主に次の3つがあげられる。
1つ目は「工場選定に要する日数の短さ」だ。日本ユーザーが納得する品質基準を満たす製品を製造できる中国の工場をリサーチするのは難しく、1~2か月ほど要するケースが多いという。
サービスを利用すると、1688とSNIFFの購買担当スタッフが「1688.com」と提携する工場のデータベースにアクセスし、数多くの工場のなかからニーズに合う工場をすぐに選定。約2~3日でリストアップできる。
また、「1688.com」から工場に対する評価、日本輸出経験の有無、返品率などの評価を提供する。
2つ目が「工場との条件交渉力の高さ」。1688やSNIFFの買い付け担当スタッフが利用者に代わって価格やロット数の交渉を行う。そのため、従来では難しかった条件での交渉も期待できるという。
3つ目が「商品リサーチ工数の削減」だ。膨大なSKU数から専任チームが要望に合う商品をリサーチし、「1688.com」内で人気の商品や新商品などの情報も自動的に提供する。そのため、利用者はリサーチ工数の大幅削減につなげられるという。
トレンドの商品を従来よりもスピード感を持って製造・販売できる
サービスの利用例として、SNSなどで流行している商品の形態などをカスタマイズして販売したい場合、小ロット・短期間で発注できる工場を選定し、テスト販売を行う。テスト販売の結果が好調であれば、大量発注し販売するという短い流通サイクルを形成できる。
従来までは発注から販売まで約2か月かかっていた工程を、1か月まで短縮できる。在庫リスクを抱えて販売していたお客さまのリスクを軽減しながら、売り上げ拡大をサポートしていける。(いつも.SNIFF事業責任者 石橋周氏)
サービスの主な利用対象者は、中小企業が大半という。SNSなどで多くのフォロワーを抱えているインフルエンサーが副業として利用しているケースもある。
商品企画の段階からサービスを提供していきたい
いつも.SNIFFは、EC事業者などへのサービス提案を2023年11月から開始。複数の企業が利用し始めており、工場の選定や、早い企業ではノベルティの制作段階に突入している企業もいるという。
着実に利用企業数を伸ばしているなか、今後の展開について石橋氏は「商品企画の段階からサービスを提供していきたい」と話す。
現在は中国の工場の選定や商品の紹介などがメインになっているが、将来的にはデザインなど商品企画の段階からサポートして行くサービスを提供していきたい。
私たちがこれまで蓄積してきた日本での販売データ、売れ筋データなどを活用して、日本の事業者さまに「どういった商品が売れるのか」といった提案やリサーチも行って行きたいと考えている。(石橋氏)
また、利用者対象者の拡大も視野に入れており、ライブコマースを行っているライバーやインフルエンサーからの利用も強化して行きたいという。
現在はアパレルや雑貨、小物家電などが大半だが、「現在は薬機法関連で取り扱いできていないが、インフルエンサーさんと相性がよいコスメなどの製造にもチャレンジしていきたい」(石橋氏)