ロシアのEC市場はどんな状況? 露向け越境ECサービス情報&最新の市場動向まとめ
いつも.は9月5日、ロシアのウラジオストクで開催された東方経済フォーラムにおいて、ロシアの国有企業 ロシア郵便と覚書を交わし、2019年11月にオープン予定のロシア郵便の越境ECサイト「kupi japan」において、日本商品の越境ECを始める。
2018年5月に日本郵便とロシア郵便が締結した「日本郵便株式会社とロシア郵便公社との間の郵便事業における協力に係る包括覚書」に関連する施策の一環。
この覚書に基づき、いつも.は「kupi japan」で販売される製品に関する情報や広告、マーケティングに関する情報をロシア郵便に提供し、「kupi japan」での受注とロシアへの発送手続きまでを担当する。
ロシア郵便は「kupi japan」の運営と、日本から国際郵便で届いた商品を購入者へ配達するまでを担う。両者は覚書に続いて契約書を締結する予定。
ロシアとはどんな市場なのか
大和総研 チーフコンサルタントの本谷知彦氏によると、ロシアのEC市場規模はおよそ2兆円。越境EC市場規模は推定6,550億円。
ロシアの特徴は越境ECの比率が高いことだが、アリババが運営する「AliExpress(アリエクスプレス)」がシェアの8割を占めると言われている。
「AliExpress」には低価格商品が多いため、「中国製品と相対的に、高価格で高品質なポジショニングをとることで消費者ニーズを獲得できるのではないか」と語った。
「チャイナプラスワン」という経済用語があるが、ECでも「チャイナプラスワン」があって良いと思う。これからは中国一辺倒ではなく、ASEANも魅力だし、中東、北アフリカもマーケットニーズがある。そしても何よりもロシア。日露経済協力という政府間の後押しがあり、民間が動きやすい状況がある。(本谷氏)
ロシア郵便が語るロシアEC市場
ロシア郵便のDmitriy Khorunzhiy氏によると、ロシアのインターネットユーザー数は約1億1,170万人(全人口の76%)。EC市場規模は約300億ドル。内訳は半数の158億ドル(2018年)が小売で。次いで旅行、金融、その他と続く。
2018年は注文数が3億件、平均単価は17.8ドル。越境ECの売上は58億5千万ドルだった。80%が中国からの商品。
92%の貨物が中国だが、売上高は54%にとどまっている。逆にEUからの荷物が高単価なのがわかる。
内訳は衣類・靴、電子機器・家電が多い。
現在ロシアには日本製品を扱うECサイトが40サイトあり、115万4千ユーザーが訪れる。その中で検索されているのは111万ワードくらい。化粧品、美容関連グッズ、健康関連、ベビー用品、つり用品、小さなガジェットなどが注目されている。
モニタリング調査によると、日本の製品に対して「高品質」「他にはないユニークな商品がある」「良い商品」と思っていることがわかった。(Dmitriy氏)
日本製品を扱っているサイトやSNSなどの調査をした結果、日本商品を購入するユーザー像が見えてきた。
ユーザーの80%は女性。中核になるのは23歳〜35歳の美容、健康、育児に興味がある女性。次が18歳〜45歳。自身の健康に興味がある、他人とちょっと違うライフスタイル送りたいと思っている女性。ペット用品にも興味がある。
スタート段階では男性のデータが少ないが、18歳〜45歳の男性もターゲット。ロシアでは日本の包丁が人気。他には釣り用品、電子機器、自動車、オートバイ、旅行、スポーツ用品などが人気。
・メイン商材として予定している商品
マタニティー・ベビー用品、パーソナルケア用品、健康、サプリメント、家庭用品(バス、キッチン)、ペット用品、釣り、包丁、スポーツ、アウトドア用品
・上記以外に需要がありそうな分野
小型家電、携帯電話・関連アクセラリー、アダルトグッズ、家電・ガジェット、ハイテクおもちゃ
ターゲットはモスクワ市およびモスクワ州。その後100万都市、50万都市に展開する。ロシアでもブロガーやインフルエンサーの影響力が強いため、プロモーションにおいてはブロガーやインフルエンサーを活用する。
越境ECの成否を分けるのはプラットフォームの本気度
いつも.グローバルEC事業部 グループマネージャーの加藤至繁氏は、下記のように語った。
越境EC支援をたくさんやっていますが、正直、すべてうまくいくわけではありません。例えば中国では、どんなに良い商品でどんなにプロモーションをがんばっても、プラットフォームのルールが突然変わったりする。プラットフォームが本気で売ろうとしようとしてくれないと、なかなかうまくいかないんです。
今回の場合は日露郵便協定の中で進んでいるプロジェクトですし、パートナーのロシア郵便が本気でやってくれるというのを感じています。
ロシア郵便さんと打ち合わせをする中で、「ロシアは越境比率が高いけど安いものが多い。ロシアの人でもベビー用品やコスメなどは良いものを使いたいというニーズはある。だから、ロシア郵便としても高品質なものをロシアで売りたい。良いものを国民に届けたい」という話をいただきました。
ロシアの方が日本の商品を本当に良いものだと思ってくれているんだなということがわかったし、本気でやろうとしているんだと感動しました。(加藤氏)
なぜロシア郵便がeコマース事業を行うのか
日本郵便 国際事業部担当部長によると、2016年5月の日露首脳会談において確認された、8項目の経済協力プランの中に「郵便」が含まれており、2016年12月と2018年5月、日本郵便とロシア郵便は郵便事業での協力を内容とする覚書を締結した。
協力分野は、①郵便輸送の高度化の推進、②物販およびEコマースでの協力、③郵便オペレーションおよび郵便サービスに関するベストプラクティスの共有。
①については、2018年8月からシベリア鉄道での輸送が実現。それまで2〜3か月かかっていたヨーロッパ向けの配達の所要日数がおよそ半分になった。②については、2018年5月からロシア国内の約2,500の郵便局において、日本商品の販売が開始されており、取扱い局は4,000超に拡大している。
ロシア郵便は2019年内の民営化に向けて準備を進めており、郵便以外の事業に積極的に取り組んでいる。今回の協業については2018年7月から具体的な検討を開始し、同年11月からはいつも.が参画した。